片づけられない人にはどんな原因があるのでしょうか?(写真:node/PIXTA)

「やらなきゃ」と思っていても、ずるずる後回しにしてしまう大掃除。結局やらずに年を越した、なんてことを毎年繰り返している人も多いのではないでしょうか? 

今回は、自身も片づけられない人だったという経験を生かし、『片づけられない自分がいますぐ変わる本』を上梓した、心理カウンセラーの大嶋信頼氏が、やろうと思っても、どうしてもできない人へ、ラクラクできて部屋も心もスッキリする片づけの秘策をお教えします。

「片づけが苦手」なのは脳のバランスの問題?

私には子どもの頃から、「片づけられない」という悩みがずっとありました。部屋の中はグチャグチャでホコリだらけ。カバンの中はしわくちゃに丸まったテストの答案用紙とか学校からのお知らせが入っている。自分でも「どうして捨てないの?」と思っているのになぜか捨てられずにいました。

大人になっても、汚い部屋だと何もできないから、「今日こそは」と気合を入れて片づけようとしていても、急に捨てるべきかどうするか悩んでいたゲーム機をテレビにつなげて遊んでしまい、「あーあ! 今日も片づけられなかった」という感じになってしまう始末。

なぜそんなことになってしまうのでしょうか? 

その原因の1つは脳のバランスにあります。

人には「言語性知能」と「動作性知能」というものがあります。

「言語性知能」は一般的には計算や記憶、物事を理解する力。いわゆる「頭のいい人」はこの能力が高い傾向になります。一方、「動作性知能」はパズルを組み合わせるとか、優先順位をつけて仕事をこなす力になります。こちらは言うなれば「優秀な人」となります。

このうち言語性知能だけが高いと「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」という感じで、やるべきことをたくさん考えられますが、その一方で「やるべきこと」が頭の中にたくさんたまってしまい、それに優先順位がつけられなくなってしまいます。

つまり、動作性知能が言語性知能について行けないと「何から優先していいのかわからない」という感じで固まってしまって、動けなくなり、片づけができなくなるわけです。

イメージとしては、言語性知能が高ければ高いほど「ジグソーパズルのピースが細かくてたくさんある」という状態。かたや動作性知能は高ければ高いほど「視力がよくてよく見える」という状態、となります。

ですので、言語性知能が高くて、動作性知能がそれほどでもないと「細かすぎてよく見えず、ピースのどれとどれをくっつけたらいいのかわからない!」となってしまうのです。

このような「片づけようといろいろ考えても片づけられない!」という時には「片づけなければをやめる」と思ってみることが大事です。

「片づけなければをやめる」というのは片づけることを考えることも、実際に片づけようとする努力もしない、ということ。

言語性知能が高い人は「考えなければ片づけられないでしょ」と思ってしまいがちですが、それを考え始めてしまったら、その細かさに動作性知能がついてこられず、実際に片づけられなくなってしまいます。

ですから、家に帰ってきて、散らかっている部屋を前にした時などに「片づけなければをやめる」と頭の中で思ってみるのです。

すると、一時的にでも片づけのことを考えるのが止まるので、「パズルのピースが細かくならない」という感じになります。

すると「あれ? いつもだったら部屋の中にゴミが落ちていても拾わないのに自然と拾っている自分がいる」などということが不思議と起こります。

つまり、「片づけなければをやめる」と自分の中で唱えてみると「捨てられなかったゴミを考えないで捨てている」と自動運転のように動き出すのです。

「逆説」の暗示で片づける

この「片づけなければをやめる」という方法は、実は「逆説」という暗示のテクニックを使っています。つまり、自分ができないと思っていることに対して「やろう」ではなく、「やらない」という逆の暗示を入れるわけです。

汚い部屋を見て「片づけなきゃ」と思ったら「片づけなければをやめる」と自分の中で言葉かけをしてみる。すると逆説が働いてあれこれ考えることをしなくなり、そのうち「考えないで(意識しないで)片づける」とばかりに、体が自然と動くようになります。

さらに、これを繰り返し唱えていると、どんどん逆説が働いて、自然と片づけていくような面白いことになっていきます。

そもそも片づけられない大きな理由の1つに、自分で「片づけられない」という暗示をかけてしまっているということがあります。

人は「目の前に見えないものを見る」ということで簡単に催眠状態に入ってしまいます。

たとえば、「片づけられない!」という相談にくる人を見ていると「それって自分で催眠をかけてしまっていますけど!」となっていることが多くて、その人たちは「さあ、片づけよう!」と思った瞬間に「また、私はだらだらしてやらないんだろうな」と、だらだら過ごしている自分の姿を思い浮かべているのです。

その「だらだら過ごしてやらない」という言葉がまさに“暗示”となっているわけです。

催眠は他人によってもかけられますが、このように自分自身が「目の前に見えないものを見る」ことで簡単に自分で催眠状態を作り出し、「片づけができなくなる暗示」や「状況を変えられない暗示」を自ら入れて、「ちっとも自分は変わることができない」という現実を作り出してしまいます。

なので、この「片づけられない」という人が知らずに使っている「催眠」を逆に利用すれば、簡単に片づけられるようになったりします。

やり方はいたって簡単。

暗示を入れるタイミングは、「片づけよう」と思って、「それができない」という自分を想像し催眠状態を作り出したその時。つまり、目の前に見えないものを見たその時が「暗示」がいちばん効くチャンスになります。

なので、いつもだったら「片づけたいと思っているけどできないダメな私」という暗示を入れてしまう時に、「催眠状態で片づけをする自分」と頭の中でつぶやいてみて暗示を入れてしまいます。すると、その暗示が催眠状態で見事に効果を発揮して「あれ? 何も考えないでものを捨てているかも!」という感じになります。先ほどの逆説もこれと近いものがあります。 

暗示を解いて本来に戻る!

ある女性が「部屋の掃除が苦手なんです」とおっしゃっていたので、この暗示の話をしたら「そんな自分で催眠にかけるような暗示なんか使えるわけがないでしょ!」と笑われてしまいました。

確かに催眠療法を実際にやったことがない人にこの方法は難しいかもしれません。私も「今回は難しいかな」と半分あきらめていましたが、その女性は次にきた時に「あれ、もしかしたら使えるかも!」と言ってくれたのです。

女性は、それまで床の拭き掃除をする時、「もしゴキブリがいたら」と想像してしまい、冷蔵庫の下などは拭き掃除が「できない」と思っていました。

しかし、そんな想像をした時に、「催眠状態で片づける自分」という暗示を唱えてみると「あれ?」という感じでいらない雑巾を絞って、何も考えずにゴム手袋をはめて冷蔵庫の下を拭いていたと言うのです。

すると次は、大量のホコリが拭き取れて、ゴキブリなんか気にならず、逆に「気持ちがいい!」となって、さらに拭き掃除がしたくなり、掃除が止まらなくなってしまった、と笑顔で話してくれました。

でも、女性は「この催眠って悪用したら危ないんじゃないの?」と心配した顔で聞いてきます。

そこで私は、「いや、普段の自分が自分に対してかけている『できない』という暗示のほうが強烈な催眠状態を作り出していて、この暗示は、その自分の暗示を解く役目をしているだけなんです」と説明をしました。

普段自分を縛っている暗示を解く

そう、この暗示は、「自分で催眠状態を作り出し、暗示をかけて自由に動けなくしている」、その暗示を解くためのものなのです。


すると女性は「今まで暗示にかかっていたから汚い部屋に住んでいたの?」とちょっと驚いた表情。そこで、私が「その暗示からとかれてみてどうでしたか?」と逆に質問をしてみると、「あの片づけや掃除ができなかった私って、本当の私じゃないんだ!」と目を丸くされて「綺麗好きな私が本来の私」とうれしそうに帰っていきました。

「催眠状態で片づける自分」という暗示で、普段自分を縛っている暗示を解く。すると本来の自分の姿を見ることができるのです。ポイントは「目の前にないものを見る」です。どうしても片づけられないという人はぜひ試してみてください。