インクイジター(Inquisitr)のCEOを務めるドミニク・ミセランディーノ氏は2019年11月、ニュースアグリゲーションアプリのトップバズニュース(TopBuzz News)が参照トラフィックのトップに躍り出たことに気づいた。大人気ショートビデオアプリのTikTok(ティックトック)と同じバイトダンス(ByteDance)が運営するこのアプリが、FacebookとGoogleを抑え、トラフィックの23%を占めたのだ。昨年の同時期、トップバズニュースのトラフィックのシェアはわずか0.14%だった。

インクイジターは決して例外ではない。トップバズニュース、ニュースブレイク(News Break)、フリップボード(Flipboard)、スマートニュース(SmartNews)などのニュースアグリゲーションアプリは、一部のパブリッシャーにとって、じわじわと重要なトラフィック供給源になりつつある。GoogleとFacebookだけを頼った時代はもはや過去のもの。賢明なパブリッシャーは、積極的にトラフィック源の多様化を推進している。

「プラットフォームは常に新勢力が誕生している」と、ミセランディーノ氏はいう。「Googleの世界には毎月天文学的な数の人々が訪れ、パイの100%を得られることは決してない。もっと大きなピースを手に入れられる場所はどこなのか、という話だ」。

ここ1年で増した存在感

ドゥー・ユー・リメンバー(DoYouRemenber.com)で執行担当責任者を務めるニール・パーカー氏も、ここ1年でパーティクル(Particle)が運営するニュースブレイクと、トップバズニュースからのトラフィックが増加したと認める。過去45日間でみると、ニュースブレイクからのトラフィックは121%も増加し、トップバズニュースからのトラフィックも5.4%伸びている。2019年の8月から12月までの期間を前年同時期と比較すると、ニュースブレイクからのトラフィックの増加率は6000%にのぼる。

インク(Inc.)やファストカンパニー(Fast Company)を運営するパブリッシャーであるマンスエト・ベンチャーズ(Mansueto Ventures)にとって、フリップボードとスマートニュースは、両メディアの重要な参照トラフィック供給源であると、デジタル成長担当バイスプレジデントを務めるアリソン・ファス氏はいう。「フリップボードは今年これまでの11カ月のうち7カ月で、インクへの単独の参照元として1位または2位につけていた」。ファス氏によれば、1年前はファストカンパニーへのトラフィックの過半数が検索経由だった。だが今年11月のデータでは、3つのソースからの米国内ビジターの合計が100万を突破。今年はどの月をみても、7つの異なるサイトが米国内からの20万以上のビジターを供給していた。

トラステッドメディアブランズ(Trusted Media Brands)傘下のテイストオブホーム(Taste of Home)の場合、今年6月から11月の期間で、フリップボードからのトラフィックが793%増加。また9月から11月のあいだにスマートニュースからのトラフィックは80%増加した。

流入が増加している理由

アグリゲーションメディアからのトラフィックが増加している理由のひとつに、利用者の増加がある。センサータワー(Sensor Tower)によれば、昨年だけでトップバズニュースは世界で490万回(うち米国で210万回)ダウンロードされた。スマートニュースのダウンロード回数は1320万回(米国で420万回)、フリップボードは510万回(米国で54万回)だ。

メディアアナリティクス企業のパースリー(Parse.ly)やチャートビート(Chartbeat)によれば、トップバズニュース、ニュースブレイク、スマートニュースなどのアグリゲーションメディアは、それぞれのネットワークのなかでトップクラスの参照トラフィック供給源になっているという。

「新興アグリゲーションメディア経由のトラフィックは、全体のなかでもっとも急速に成長している」と、チャートビートで顧客教育担当シニアディレクターを務めるジル・ニコルソン氏はいう。「新しいタイプのトラフィックと言ってもいいだろう。検索とソーシャルを抑えて、こうしたモバイルアグリゲーション経由のトラフィックがニュースサイトへの訪問数を押し上げているのだ」。

パースリーのシニアマーケットアナリスト、ケルシー・アレント氏は、いくつかのアグリゲーションメディア(たとえばトップバズニュースや、その中国語版である今日頭条[Toutiao]、スマートニュース)に驚異的な成長が見られることについて、部分的には単に「成長の余地が大きい」ためで、より成熟したプラットフォームは「発展が予測可能なプラットフォーム」であると話す。同氏はさらに、「話題をさらうこれらのプラットフォームのデータは、新たな市場の成長と、これらの企業の投資やマーケティングやPRの成功を意味している」と述べる。

エンゲージの高さも特徴

こうしたアグリゲーションメディアのオーディエンスが、リンクされたサイトに高いエンゲージメントを示していることは、パブリッシャーにとって朗報だ。

ファス氏によれば、フリップボードの読者は非常にエンゲージメント率が高く、月に5回以上インクを再訪する読者がかなりの割合を占めている。

パーカー氏によれば、ニュースブレイク読者の直帰率は74%で、セッションの平均持続時間は約1分。「モバイル・AMPトラフィックにしては悪くない」と、彼はいう。

スマートニュースの功績

スマートニュースなど一部のアグリゲーションメディアはパブリッシャーとの提携を推進している。コンテンツの質で妥協することなく、トラフィック供給源を多様化できるというのが、彼らの売り文句だ。

スマートニュースのコンテンツ担当バイスプレジデント、リッチ・ジャロスロフスキー氏は、「パブリッシャーには我々やそのほかのプラットフォームに合わせて、自身の形を歪めてほしくない。彼らの制作する最高のコンテンツを見つけだし、より多くのオーディエンスに届けるのが、我々アグリゲーションメディアの仕事だ」という。スマートニュースは、「SmartView First(スマートビュー・ファースト)」に参加する一部のパブリッシャーに対し、コンテンツのライセンス料を払ってさえいる。

ミセランディーノ氏もファス氏も、自社は多数のアグリゲーションメディアと提携関係にあり、特に取り上げてほしい記事に関して意向を伝えていると述べる。もっとも優れた記事とは、多様なオーディエンスに訴えかけ、かつ「クリックしたくなるが、決してクリックベイトではない見出し」を有するものだと、ファス氏はいう。

「彼らの成長は無視できない」

パーカー氏によれば、ニュースブレイクとの提携はうまくいったが、トップバズニュースとの仕事は難航した。親会社のバイトダンスが、トップバズニュースのアプリへの投資を大幅に削減したのが原因かもしれない。同社に近い情報筋によれば、バイトダンスがトップバズニュースを切りたがっているという噂は事実で、売却される可能性は大きい。バイトダンスはTikTokのようなエンタメ志向のアプリへの投資を強化する意向で、インドとインドネシアで先行リリースされた最新音楽アプリのレッソ(Resso)はその一例だという。

パブリッシャーにとって、多様化するトラフィック源に目を配ることは、新たな業務のひとつとなっているのだ。

「彼らの成長は無視できない」と、ニコルソン氏はいう。「一部のアグリゲーションメディアの急成長は衝撃的で、真剣に考慮すべきなのは間違いない。ただし問題は、現在のトップバズニュースが、親会社が変わればまったく別物になるかもしれないことだ」。

パーカー氏は、「多様性を優先課題にすべきだ。たくさんの十分に信頼できるトラフィック源を確保しておく必要がある。ひとつが消えてもパニックに陥って人員削減をしなくてすむように。我々は主要トラフィック源がたったひとつしかないFacebookパブリッシャーだったが、現在はたくさんの供給元を手に入れた。いわば安心のための保険だ」と述べた。

※記事公開後、スマートニュースからの指摘により、リッチ・ジャロスロフスキー氏の姓を修正しました。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)