横綱白鵬。写真は今年8月、東京で開かれた大相撲「KITTE場所」に出場した際のもの(写真:ZUMA Press/アフロ)


 ついに本音をさらけ出した。横綱白鵬が、立ち合いのかち上げや張り手が問題視されていることについて、大勢の記者やテレビカメラの前で「自分は自分の相撲を取るだけなのでね。禁じ手っていうかね、そういうものでもないわけですからね」などと言い切った。

 24日に発表された大相撲初場所(来年1月12日初日、両国国技館)の番付発表で会見に応じた時のことだ。

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批判も「柳に風」の白鵬

 先場所で43度目の優勝を飾り、来場所は4場所ぶりに東の正横綱に復帰することになった。それもあって会見では当初、和やかなムードで自身が目標に掲げる「優勝50回」と「来年は優勝3回」について力説していたものの冒頭の話題に質問が及ぶと途端に表情を曇らせた。

 世間から白鵬のかち上げや張り手に批判が集中しているのは、近年の相撲界で猊物詩瓩里茲Δ砲覆辰討い襦先場所千秋楽の翌日に開かれた横綱審議委員会でも終了後、メディアの取材に応じた矢野弘典委員長が「『横綱の振る舞いとして見苦しいのでは』と(委員の)ほとんど全員から意見が出た」と明かしていた。

 横審では先場所2日目の小結遠藤戦がやり玉に挙げられた。立ち合いで右からかちあげた際、サポーターで巻いた右ひじが相手の鼻っ柱をかすめると、さらに左右から大ぶりの張り手をお見舞い。敗れた遠藤は支度部屋で右目付近に青タンを作り、鼻血も止まらないような有様だった。「さすがにあれは、やり過ぎだ」。そう怒りに打ち震えながら顔をしかめる委員もいたという。

 それでも白鵬は柳に風だ。「そんなのが(横審で)出たんですかね。全く知らなかったですけど」と口にし、ぶ然としながらも取り口をあらためるつもりがないことを強調した。要は猗紳У擦任呂覆い里世ら文句を言うこと自体が的外れ瓩箸いΔ錣韻任△襦

ルール違反していないのに作り上げられた「悪党横綱」のイメージ

 きっと反白鵬の人たちは今ごろ腸が煮えくり返っているだろうが、この横綱の言葉は残念ながら間違ってはいない。事実、ルール上でかち上げも張り手も禁止されていないのだ。

 横綱には品格が求められる。確かにそうだ。白鵬が敢行するかち上げや張り差しに対しては過去にも横審で何度か話題に挙げられ、苦言を呈された。過去、取材した際に「横綱らしからぬ見苦しい、汚い手口」などと口角泡を飛ばし、血相を変えていた委員も見たことがある。そういう流れにメディアも煽られ「卑劣」とか「酷い」といった白鵬=悪党横綱のイメージは日を追うごとに作り上げられていった。

 右手に巻くサポーターは「反則行為ではない張り差し」を状況に応じて敢行することも視野に入れ、あくまでも故障防止のために身につけているものだ。

 しかし、これに関しても横審、そして世間の多くからも納得を得られていない。特にネット上には「爛┘襯棔辞瓩琉厠呂鯒楞させるために相手の顔面にこすらせ、負傷させることを目的としている」「あのサポーターの中には凶器が入っているらしい」などと滅茶苦茶なフェイクを書き込む人も散見された。

 こう書いていると、おそらく筆者は「白鵬の回し者」として牋党横綱瓩汎瑛佑鉾稟修砲気蕕気譴襪里任△蹐Α

 だが、別にそれでも一向に構わない。白鵬をかばっているのではなく、それよりも禁じ手でない取り口やサポーター装着にイチャモンをつけているだけで同じことを延々と繰り返している外野の声がとても虚しく映る。ハッキリと言うが、こんなことをただワーワーと言っているだけでは間違いなく何も変わらない。

 今の相撲界は時代に見合ったシステムになっていないところも、白鵬問題をエスカレートさせているのだろう。個人としてはそう考えている。

 ひと昔前の先人の横綱たちは取り口や立ち居振る舞いから品格を漂わせ、忠実に守っていた。日本の文化について義務教育を受けてきた日本出身の日本人横綱が圧倒的に多かったことも、当然その大きな理由の一つとしてある。

 しかし近年は外国人横綱で占められるようになり、白鵬も帰化したとはいえモンゴル出身だ。記録上では歴史に残る大横綱となったことで自ら幅を利かせられる存在になったと思い込んでいるフシは昨今、確かに元外国人力士・白鵬から感じ取れる。

 それが証拠に、これだけ取り口や言動に物議を醸すような事態に発展すれば少しは自重しようと考えても不思議はないはずだ。ところが白鵬は、まったく受け入れようとしない。むしろ逆風を楽しんでいるかのように犇愡澆気譴討い覆い里世ら瓩罰き直っているようにも見える。

 こういうドラスティックな考えや姿勢は純粋な日本人には理解し難く、大きな反発を招く要因につながっているのだろう。

「やり返せず怯んでしまう対戦力士が情けない」の声

 どうしても白鵬を許せないと言うのであれば、横審が日本相撲協会の諮問機関としてルール変更を要求するなり、あるいは横綱の品格について厳格な禁止事項を制定するなりの具体的改革に動くしかないのではないか。先にも触れたが、外国人横綱が隆盛を誇る時代に対応するためには、日本の文化や美徳からかけ離れた行為が見られた際に「厳重注意」や「苦言」といった中途半端な爛哀銑瓩任茶を濁すのではなく、禁止事項を明文化させて玉虫色に終わらせないことが大事だと思う。

 ただ、日本相撲協会の周辺には「白鵬の取り口に対する批判は、他の若手力士のだらしなさから目をそらすための逃げ道」と断罪し、次のように厳しく指摘する有識者もいる。

「かち上げや張り差しをやっている力士はひと昔前ならば多くいた。何かと言動が鼻につく白鵬だから、やり玉にあげられているのでしょう。

 でも私から言わせれば禁じ手ではないのだから、横綱にやられてもやり返せず怯んでしまう対戦力士が情けない。牴燭何でも横綱に勝ってやるんだ瓩箸いΦこ気鮖った力士が現われ、かち上げや張り手でお返しして勝つシーンが見られることを皆、期待している。

 一方で背中が伸びる可能性もあるかち上げや、どうしても脇があいてしまう張り手にはやる側にも、そのスキを一気に相手に攻め込まれるリスクがある。本来ならば、そこを突破口にしなければいけないはずなのに白鵬に飲み込まれて対戦する力士は何もできない。

 若手たちの不甲斐なさを直視せず、ただ闇雲に白鵬の揚げ足を取ることに躍起になっている流れは実を言えばこれこそが相撲界にとって大きな問題なのです」

 いずれにせよ、来年も批判などどこ吹く風で倏鯔欧諒畢瓩脆弱な若手力士たちの前に立ちはだかりそうだ。

筆者:臼北 信行