韓国に敗れてE-1選手権優勝を逃した日本。表彰式では歓喜に沸く韓国代表の姿を目に焼き付けるほかなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 E-1選手権の日韓戦。韓国は立ち上がりからフルパワーで襲いかかって来た。右のキム・インソン、左のナ・サンホをワイドに張らせ、ロングボールを使って日本のウイングバックの背後のスペースを狙ってきたのだ。スリーバックで戦う以上、ここを狙われることは予想できるはずだが、日本に対策らしきものはなく、DF、ボランチ、ウイングバックが混乱に陥り、後手に回った日本の選手たちは韓国の激しいプレッシャーに腰が引けた戦いに終始した。また、攻撃陣も孤立して韓国DFの厳しいマークにあってボールを収めることができなくなってしまった。

 1点差で終わったのが幸運とも思える「完敗」だった。

 しかし、大会を通じて考えれば、大きな収穫を得たのはむしろ日本の方だったのではないだろうか。

 ヨーロッパのクラブに所属している選手を招集できないのは日韓ともに同じ条件ながら、ヨーロッパ組の割合が多いのは日本。しかも、国内組にしても天皇杯やJ1参入プレーオフに参加するクラブの選手は招集できない。森保一監督はそうした悪条件を逆手にとって「この大会はテスト」と割り切って、A代表のバックアップ的な存在の選手とU-22代表候補の混成チームを編成した。

 一方、韓国のパウロ・ベント監督は常に最強メンバーを組んで戦うことを信条としている。

 2018年アジア大会ではオーバーエイジとして招集したソン・フンミンを、大会直後の親善試合にも強行出場させたし、2019年1月のアジアカップでもプレミアリーグの合間を縫って参戦したソン・フンミンを酷使。親善試合でも常に最強メンバーで戦ってきた。そして、E-1選手権でもヨーロッパ組を除く最強メンバーを組んできたのだ。

「日本よりも休養日が少ないのは不公平」とグチをこぼしながらもターンオーバーはせず、日本戦先発のフィールドプレーヤーのうち8人が3日前の中国戦と同じだった(ちなみに、日本戦の11人のうち6人がアジアカップ準々決勝と同じ顔ぶれ)。

 アジアカップ以降、A代表とU-22代表兼任であるメリットを生かして多くの選手を招集して「ラージグループ」を作ってきた森保監督と、対照的に常に最強メンバーで戦ってきたパウロ・ベント監督。「どちらのアプローチが正しい」と言えるものではないが、レギュラー格で固めた韓国が釜山の地で勝利したのは必然の結果だった。
 
 テストに徹した森保監督にとっての最大の収穫は、香港戦で見せたU-22代表候補選手たちのプレーだった。

 一昨年の大怪我から苦しみ続けていた小川航基がシュート技術の高さを示したミドルシュートを決め、勢いに乗ってA代表デビュー戦でのハットトリックという快挙を達成。また、この試合でセンターバックの中心として堅実な守備を見せていた田中駿太は、後半の途中でボランチにポジションを上げると、チャレンジングなパスワークで攻撃を組み立ててそのポリバレント性を発揮した。

 田中碧は、橋本拳人の離脱によって韓国戦でもチャンスを得てフル出場。韓国の激しいプレッシャーに苦しみながらも相手の圧力をかわしながらゲームメークをこなしてみせた。Jリーグで「ベストヤングプレーヤー賞」を受賞した伸び盛りの21歳は、2019年最後の国際試合でしっかりとその存在感を示した。

 ワールドカップ2次予選は格下の相手ばかり。また、親善試合では本当の厳しさは経験できない。そんな中で、韓国との真剣勝負は貴重な経験となった。E-1選手権をテストの場(トルシエ監督はそれを「ラボ」と呼んでいた)として活用した森保監督にとって韓国戦での最大の収穫は、実は「厳しい国際試合では通用しない選手」を見極められたことだったのではないだろうか。

取材・文●後藤健生(サッカージャーナリスト)