老舗パブリッシャーのコンデナスト(Condé Nast)がインスタグラム(Instagram)での稼ぎ方を変えようとしている。そこで打ち出したのがインスタグラムTVの収益化計画第2弾だ。

再編集したYouTube動画でIGTVの様子見をはじめてから1年、コンデナストがインスタグラムの長尺動画を少なくとも5本の新シリーズで再実験するつもりのようだ。この5本には、GQが配信するファッションシリーズ「ノー・ロング・ウェイ・トゥ・ウェア(No Wrong Way to Wear)」、ボナペティート(Bon Appetit)の旅グルメ番組「ビッグ・ファット・ウィークエンド(Big Fat Weekend)」、ヴォーグ(Vogue)が提供するソーシャルメディア時代の恋愛模様「ラブ・ストリーズ(Love Stories)」が含まれている。

「これら5本の番組にはすでにゴーサインが出ている」と、コンデナストでグローバルの最高収益責任者(CRO)を務めるパメラ・ドラッカー・マン氏は言う。コンデナストトラベラー(Condé Nast Traveler)が制作・配信する別のIGTVシリーズ「セイ・アイ・セント・ユー(Say I Sent You)」で、(コンデナストが言うところの)スポンサーインテグレーション(一種のタイアップ企画)を成功させた経験があるからだ。動画に広告を統合するという企画は、コンデナストがインスタグラムで導入したいと考えている新しい広告戦略の一環だ。インフィード広告やストーリーズをはじめ、増えつづけるFacebookの個々の広告商品を通じてリーチを売るよりも、これらをまたぐようなキャンペーンを広告主に提案したいとコンデナストは考えている。見返りに、クライアントには事業目標の達成を保証するという。

ひとつのタイトルのストーリーズのみを使って縦割りのキャンペーンを展開するのではなく、あるいは、ひとつのタイトルがそのフォロワーのみを対象に配信するフィード広告ではなく、新しい方法で販売するキャンペーンは、クライアントが達成したい事業目標にもよるが、ストーリーズ、フィード、インスタントエクスペリエンス(以前のカルーセル広告)など、複数の広告商品を横断して配信することができる。

10億ドル規模の収入源に

戦略の転換が起きている背景はこうだ。コンデナストは動画にエネルギーとリソースを投入し続けている。ゆくゆくはこれが10億ドル(約1000億円)規模の収入源になると期待しているからだ。同時に、大型の広告主に対しては、動画コンテンツが具体的な結果を出せるものであることを証明しようと試みている。

「単なる動画ではない」と、企業戦略担当シニアバイスプレジデントのイーデン・ゴーシー氏は言う。「動画を作ったので皆さん見てくださいというのと、動画を軸にエクスペリエンス全体を構築し、それを売るのとではまったく違う」。

いまのところ、この戦略の実験に参加しているスポンサーは1社のみだ。コンデナストトラベラー(Condé Nast Traveler)のIGTVシリーズ「セイ・アイ・セント・ユー」に、アメリカンエキスプレスが参加している。このシリーズで現行のスポンサーシップを販売するよりも、コンデナストとしては、特定シリーズのエピソードレベルでのスポンサーインテグレーションをブランドに提案し、それをクリエイティブ的にリンクされた、インスタグラムのほかの広告商品で拡張させる仕組みを考えている。

まだ実験段階にすぎない

多くのパブリッシャーにとって、特に親会社のFacebookが動画へと舵を切り、そのことで傷を負ったパブリッシャーにとってはなおさら、IGTVはいまだ大きな成功とは言いがたい。それでも、ほかのプラットフォーム用に制作したコンテンツを再配信する場としては有益だと見るものは増えている。なかにはViceやグループナイン(Group Nine)のように、ブランデッドコンテンツを配信するためのチャネルとしてIGTVを活用するパブリッシャーも出てきた。

コンデナストがIGTVでいろいろな種類のコンテンツをテストしはじめたのは昨夏のことだ。ワイアード(Wired)は「インクレディブリィ・サティスファイング・ストック・フッテージ(Incredibly Satisfying Stock Footage)」で観測気球を上げ、ヴォーグはショッピング中のモデル、ウィニー・ハーロウを追いかける映像を配信した。GQは複数のYouTubeシリーズで撮影した映像を再利用したり、IGTVを活用して「ベスト・スタッフ・ボックス(Best Stuff Box)」の箱の中身を紹介したりした。

しかし、ウィアーソーシャル(We Are Social)でマネジングディレクターを務めるベンジャミン・アーノルド氏によると、「ブランドのインテグレーションに関しては、いまもいくばくかの先行者利益」はあるものの、すべてのブランドがリーチを享受できる状況ではまだないという。

「インスタはうまくやった」

IGTVでのマネタイズとなると、リーチを獲得するのに創造的な思考が必要となる。一方で、より多くのパブリッシャーが、インスタグラムの多様な広告商品をキャンペーンに織り交ぜて、ブランドに提案する機会を有効に活用しつつある。

「インスタグラムはプラットフォームとして非常にうまくやったと思う。広告主の戦略において、購買意欲を高めるプラットフォームとしての位置づけを見い出した」と評価するのは、ゼニス(Zenith)のメディアストラテジー&インベストメント担当シニアバイスプレジデントのレイチェル・ビアン氏だ。

ビアン氏はさらに、ブランドが結果を買えると期待しはじめたという理由だけで、パブリッシャーたちはこぞって保証を提供しはじめた、とも指摘する。「ソーシャルプラットフォームは、これらをネイティブに提供する」と、氏は言う。「パブリッシャーたちはプラットフォームが提供するツールを有効に活用するだけだ」。

Max Willens(原文 / 訳:英じゅんこ)