初めての日韓戦に臨んだボランチの田中。チームを勝利に導くことはできなかった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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「日韓戦は小さい頃から見てきたものだし、負けちゃいけない相手。すごい厳しい試合になるのは分かってますし、なかなか簡単に勝てる相手ではないけど、自分の力を最大限出せれば叶わない相手ではないと思います」

 E-1選手権(釜山)のタイトルが懸かった18日の人生初の日韓戦を前に、21歳の若きボランチ・田中碧(川崎)は力強く前を見据えていた。ところが、本番で彼が目の当たりにしたものは、想像をはるかに上回る強度とスピード、パワーを前面に押し出してくる宿敵の猛攻だった。

 開始15分間に勝負をかけてきた相手は、前線からのハイプレスでボールを奪い、巧みなサイドチェンジとロングボールを多用。外からの鋭い攻めで日本ゴールに迫ってきた。決死のディフェンスで凌いで攻撃に転じても、ビルドアップの段階で再びミスが出てボールを失ってしまう。悪循環が続く中、田中碧もパスコースを探しているうちに相手に囲まれ、引っかけられるシーンが続発。カウンター対応でも後手を踏み、ペナルティエリア付近の危険な位置でファウルを与える場面を繰り返した。

「トゥーロンのブラジル戦もそうだったけど、立ち上がりからプレスをかけられて、その強度に慣れることができなかった。個人としてもチームとしてもプレスを剥がすことができなかったのは自分の力のなさ。相手に慣れる時間を短くしなきゃいけないし、解決策を早く見つけ出さなきゃいけないのを感じました」と彼は自らの経験不足を悔いた。

 ただ、こういったリスクを承知のうえで、森保一監督はあえて彼をスタメンに抜擢した。勝利にこだわるならA代表経験豊富な大島僚太(川崎)と井手口陽介(G大阪)のボランチコンビの方がベターだったはずだが、半年後に迫った東京五輪本番、その後の日本代表を考えて田中碧に日韓戦を経験させたかったのだろう。香港戦翌日の練習で、わざわざ21歳の若武者を手元に呼んでコミュニケーションを取ったのも親心の表われ。期待に応えようという本人の意欲も強かった。だからこそ、序盤の入りの悪さが悔やまれた。

「強度を持って人に勢いで来る相手はアジアには特に多い。それに対して自分がどれだけ早くいい立ち位置を取ってボールを動かせるかがすごく大事。全てが全てボールを敵陣まで運べるとは思わないですけど、その回数を増やさなきゃいけない。日本は『蹴って拾って』ってサッカーでは世界では戦えない。自分たちの勝つ確率、点を取る確率を上げるためにも、自分が中心となってボールを運ぶ作業を続けていかないといけないと思います」と苦境続きの前半45分間を通して、彼はひたむきに前を向き、戦い続ける勇敢さだけは持ち続けた。

 それが後半に入ってからのパフォーマンス改善につながったのだろう。
 後半は、相馬勇紀(鹿島)や大島の加入に相手のペースダウンも重なり、田中碧のボールコントロールやパスワークには落ち着きが生まれてきた。守備面でも前半のように後手を踏むケースが減り、相手をフリーにすることもなくなった。そうやって1試合の中で目覚ましい変化を遂げられるのが、若く伸び盛りの選手のメリットだ。壁にぶつかりながらももがき、自分なりに進むべき道を模索し続けた今回の日韓戦は、彼の大きな財産になるに違いない。

「僕自身、3バックはそんなにやったことがないので、自分がどうするべきかはまだ定まっていない。探り探りのところもありますし、毎試合いろんな経験をさせてもらって感じるものもある。そういう中で何かしら違いを個人として作らなきゃいけないし、グループとしてももっとうまく崩せるようにならないといけない。シャドーとウイングバック、ボランチの6枚で敵を破る作業を増やさなければ、3-4-3をやっている意味はない。そこをもっと共有して質を上げていくようにしていきたいです」

 このように田中碧は高い壁にぶつかった日韓戦で自分のやるべきことを明確に描くことができた様子だ。それをどうフィードバックしていくのかが重要だ。ここで成長の歩みを止めている時間はない。初めての日韓戦での屈辱的敗戦の脳裏に刻み付けて、彼にはより泥臭く貪欲に高みを目指していくことを強く求めたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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