ワシントン・ポスト(The Washington Post)はAT&Tの新しい広告キャンペーンのなかで、ジャーナリズムの古い格言「語るな、示せ(show, don’t tell)」を使って、5Gテクノロジーの次なる展開を大々的に宣伝している。

AT&Tは、ワシントン・ポストの日常業務でツールのテストを行うために、同社のニュースルームに5Gテクノロジーを導入した。このパートナーシップにより、11月に行われた最新の民主党討論会がワシントン・ポストのウェブサイトでライブストリーム配信された。その放送には、討論の間中、AT&Tビジネス(AT&T Business)のブランディングと、両社のパートナーシップによる挑戦がフィーチャーされていた。

AT&Tビジネスとワシントン・ポストとのパートナーシップは、2020年アメリカ合衆国大統領選挙戦の期間中も継続することが決まっている。その目標のひとつは、来たる大統領就任式の臨場感を視聴者に提供するVR体験だ。AT&Tはまた、ワシントン・ポストのプロダクトチームがVRの新たな用途を開拓するためのイノベーションラボもすでに設立している。WPブランドスタジオ(WP BrandStudio)は、ストーリーベースのケーススタディを通して、成果をあげた用途をドキュメント化している。

WPブランドスタジオは今後、テストと分析を行いながら、こうしたケーススタディを両社のパートナーシップをドキュメント化した舞台裏シリーズに転化し、ブランデッドコンテンツキャンペーン的にそれを配信していく見込みだ。ワシントン・ポストの最高売上責任者を務めるジョイ・ロビンス氏によれば、読者(とくに、AT&Tがリーチすることをめざしているビジネス分野の意思決定者)に、自社の事業におけるVRの可能性に対する理解を深めてもらうことが目標だという。AT&Tとのパートナーシップは、広告主とのより深いパートナーシップを築くというワシントン・ポストの目標と一致していると、ロビンス氏は話す。

新技術に慣れてもらう手段

ほかのテクノロジー企業も、多くのリソースを開発に投じてきたテクノロジーのマーケティングに対して予算の一部をあてており、ワシントン・ポストはこれをチャンスと見ている。VRが登場した当初、テクノロジー企業はパブリッシャーと提携し、VRラボやスタジオのローンチに力を貸した。それは、読者にこの最新技術に慣れ親しんでもらうための手段のひとつだった。たとえば、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は2015年、GoogleのVRグラス「カードボード(Cardboard)」130万個をプリント版の購読者に配布した。

最近では、ベライゾン(Verizon)もRYOT 5Gスタジオ(RYOT 5G Studio)をロサンゼルスに設立、メディアパートナー(同社のインハウスブランドであるハフポスト[HuffPost]やヤフー[Yahoo]、テッククランチ[TechCrunch]など)を使って、新たなフォーマットやストーリーテリング機能の開発をめざしている。同スタジオは、USAトゥデイ(USA Today)やロイター(Reuters)、AP、タイム(Time)、ナウディス(NowThis)などとも提携し、エクステンデッド・リアリティ(XR)ニュース番組の制作など、これらメディアのジャーナリズムにVRを活用している。

AT&Tビジネスの最高マーケティング責任者を務めるモ・カティべ氏によれば、このパートナーシップにより、ワシントン・ポストは5Gテクノロジーで新たな用途やツールを生み出すことができるだけでなく、こうしたイノベーションをB2Bのオーディエンスに向けてマーケティングできるようにもなるという。こうしたテクノロジーの実装を試みる企業の意思決定者にリーチすることによって、この動きは消費者にも広がり、そうなれば、これら技術に対して消費者が抱く親しみや興味も増すはずだと、同氏は語る。

「5GやAIのテストケースを活用すれば、欠陥率やユーザーセーフティを改善できる。我々の主な関心は新しいフォーマットをテストすることだ」とカティべ氏は語る。こうしたさらなるイノベーションはほかのパブリッシャーや企業の興味を引くはずだと、同氏はいう。

WPが被験者の役割を果たす

AT&Tにとって、これは目新しい戦術ではない。カティべ氏によれば、同社の子会社であるシンギュラーワイヤレス(Cingular Wireless)は15年前、学生ジャーナリストを現場に派遣し、携帯電話のみを使ってニュース速報を伝えてもらっていたという。それは、こうしたデバイスがジャーナリズムの未来を変えうることを示すためだった。

ビジネス・ジャーナル(The Business Journal)のコンテンツスタジオでエグゼクティブディレクターを務めるトム・ニーダム氏は、ワシントン・ポストとAT&Tのパートナーシップがユニークなのは、WPブランドスタジオが作り出す事例において、ワシントン・ポストが被験者の役割を果たしているという点だと話す。そしてその一方で、ケーススタディを使ってブランデッドコンテンツにストーリーテリング的なアプローチを取ることの本質には、大成功を収める可能性が秘められていると述べる。

「そのストーリーのなかにブランドとの直接的な相互作用があれば、それは大成功だ」とニーダム氏は述べている。

Kayleigh Barber (原文 / 訳:ガリレオ)