◆融資を「人質」に恫喝まがいの保険勧誘

 大手IT企業で働く中村さん(仮名・30代男性)はスルガ銀行以外にも、不動産投資の際にメガバンクや地銀から融資を受けていた。だが、他行と比較して、スルガの融資は明らかに異質だったという。

「正直、他行で融資を受ける際も電話口で事務的に保険やカードローンの加入を勧められます。ただ、スルガのように保険の担当者を同席させるようなことはなかった。おまけに、融資の条件として保険加入を勧めてくるので非常に悪質。私は生命保険のほかにも、他社の金利2%のカードローンをスルガの5%のローンへと乗り換えさせられました」

 金融機関に勤める吉田さん(仮名・40代男性)は融資を受ける際に生命保険に加入したが、騒動後に解約を申し出ると、巨額の解約金をチラつかされたという。

「私の借入額は計5億円。スルガは4.5%という金利の高さがネックでしたが、何年かすれば金利交渉に応じると言われてシェアハウス投資用にローンを組んだのです。ところが、不正融資が明るみに出る前に、家賃の支払いが停止。月々のローン返済額は160万円を超えていたので、返済猶予と保険の解約をお願いしたら、『担保措置がなくなるため、現金5000万円を担保として入れろ』『解約手数料は1000万円だ』と言われました。契約時に説明を受けていないと訴えても『説明した』の一点張り。不正行為は明らかなので現在、ローンの返済や保険料の支払いについてスルガと交渉中ですが、出口は見えていません……」

◆預金残高の改ざんを薦められる

 よりあからさまに融資条件として保険加入を勧められたケースもある。横浜支店でローンを組んだ山岡さん(仮名・30代男性)が話す。

「年収500万円のサラリーマンの身で1億円を超える融資が受けられるか不安に思っていたら、投資用不動産の販売会社に預金残高の改ざんを勧められました。『どこでもやっている』と言われて、改ざんを了承してしまったのですが、融資が下りる直前になってスルガから『審査の関係上、5000万円分の保険に入るか、自宅を担保に入れてくれ』と言われたんです。自宅に抵当権が打たれていることは担当者も把握していたはずなので、保険の強制加入を求められた格好。100万円超のローン返済からすれば、月々の保険料2万5000円は小さく思えますが、払込期間は29年なので私が死なない限り、トータルの支払いは870万円になる。投資するシェアハウスそのものに融資額に相当する担保価値があると言われていたのに、直前になって負担増を強いる。こんなことが許されるのでしょうか?」

 スルガ銀行は一部投資家の元本カットなどに応じているが、保険はあくまで保険会社との契約。半ば強制的に加入させられながら、保険料を払い続けている投資家は少なくないという。スルガ銀行に囲われた投資家の苦悩が解消される日は遠い。

◆<スルガ銀行不正融資問題の流れ>

’18年1月 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズで、賃借料支払い停止トラブルが表面化

4月 金融庁が「かぼちゃの馬車」オーナーに融資していたスルガ銀行に対して緊急立ち入り検査を実施

   オーナーへの賃料支払いを停止していたスマートデイズは民事再生法の適用を申請(負債総額約60億円)

5月 スマートデイズが破産手続開始

   スルガ銀行員が預金残高などの顧客情報の改ざんに関与していたとしてオーナーらが刑事告発

6月 過剰融資の発覚に伴う貸倒引当金の増額により、スルガ銀行の’18年3月期最終利益は前期比8割減に

8月 ’19年4〜6月四半期決算でスルガ銀行の不良債権額が前年同期比4.6倍へと一気に急増

9月 第三者委員会がスルガ銀行の調査結果を公表。「組織的な不正」「企業統治の機能不全」が明らかに

   スルガ創業家の岡野光喜会長ら取締役5人が引責辞任

10月 金融庁がスルガ銀行に6か月間の一部業務停止命令

11月 スルガ銀行が業務改善計画を公表し、融資の際の資料改ざんなどに関与した行員117人を処分

’19年4月 金融庁が行政処分を解除

5月 スルガ銀行が実施した全件調査の結果を公表。不適切融資は全体の6割強に達する1兆700億円に

   家電量販大手のノジマ、新生銀行と業務提携を発表

10月 創業家の全保有株をノジマに譲渡すると発表

<取材・文/栗田シメイ>