2011年シーズンに当時JFL所属の町田をJ2に昇格させた、ポポヴィッチ監督。写真:郡司聡

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 FC町田ゼルビアは12月15日、来季からの新監督に就任するランコ・ポポヴィッチ新監督の就任記者会見を実施した。
 
 2011年以来となる町田の監督復帰を果たしたポポヴィッチ新監督は、「まるで私の家に帰ってきたような気持ち」と自らの心境について語り、「説明していただいたプロジェクトに共感できたし、全員が同じ方向を向いて、プロジェクトを成功させたい」と抱負を述べた。

 町田は二度目の監督就任から6年間チームを率いた相馬直樹監督が今季限りで退任。クラブとしては続投を基本路線にチーム編成も組む方針だったが、相馬監督とクラブが双方協議の末、退任が決定し、来季に向けた新監督の選定はシーズン終了直後の喫緊の課題となっていた。

 そこで新監督の人選を中心になって進めてきた唐井直GMは、「4人の候補者」をもとに大友健寿代表取締役社長らと相談した結果、11年以来の復帰となるポポヴィッチ氏に白羽の矢を立てた。
「相馬さんが6年間にわたって築き上げてくれた、チームがひたむきになって戦うものを踏襲する監督として、インパクトのある方はポポさんが良いという結論に達した」と唐井GM。
 
 ポポヴィッチ氏はJ1のクラブや欧州、さらには他のアジアの国から監督就任の打診もあったため、J1のリーグ戦全日程が終了する12月7日以前には合意に持ち込もうと、唐井GMが交渉を進め、ポポヴィッチ氏の新監督就任に至った。

 なお、新指揮官に託されたミッションは「3年以内でJ1を目指せるチーム作り」(唐井直GM)。10月のサポーターミーティングで藤田晋オーナーは2020シーズンにJ1昇格というプランを表明していたが、より現実的な地に足の着いたプランに見直そうと、3か年計画を構築した上で「3年以内でJ1を目指せるチーム作り」に落ち着いた。

 向こう3年でのJ1昇格を目指す上で、ひとつの懸念材料が、ポポヴィッチ監督の“J2での経験値”だろう。「日々サッカーは進化する」(ポポヴィッチ新監督)時代の中で、ポポヴィッチ氏がJクラブを率いるのは14年のC大阪以来、6年ぶり。さらにかつて率いたJクラブは大分、FC東京、そしてC大阪とすべてJ1カテゴリーだった。

 猛者と曲者が集うJ2リーグは、自動昇格枠がわずかに2つで、クラブとしての予算規模の大きさがそのまま成績に反映されにくい“戦国リーグ”。特にポポヴィッチ監督が率いるチームは、縦パスをスイッチとしたオートマチックな攻撃的スタイルであるため、ボール奪取からのカウンターを狙うチームには格好の餌食となる。
 19年の“相馬ゼルビア”がそうだったように、戦い方が明確な分、対戦相手は対策を立てやすく、堅守速攻型のチームスタイルが少なくないJ2では、困難な戦いが待ち受けているかもしれない。それでも、ポポヴィッチ監督は自信に満ちた表情でこう言った。

「海外のリーグでも2部リーグは1部よりも、後ろを固めてカウンターを仕掛けてくるチームが多いのかなと感じている。ただ我々がJFLからJリーグに参入したとき(2011年)に証明したが、目指すものは変わらない。だからと言って守備を疎かにするということではなく、攻守において主導権を握るサッカーを目指していきたい。

 その中でわれわれの確固たるスタイルを身につけなければいけないと感じているし、もちろんリーグの特徴を踏まえながら戦っていきたい。大きな計画を実現するためには、非常に時間も掛かるし、困難も待ち受けていると思うが、ひとつになってまとまって戦い、いち早く結果を出していきたい」
 
 さらに今季18位の町田を立て直すイメージとして、「安定性を高め、メンタルを強くするためには、毎日のトレーニングしかない」と語ったポポヴィッチ新監督。堅実な町田のチームカラーらしく、日々の積み重ねが重要であることを強調していた。

 こうして「3年以内でJ1を目指せるチームを作る」というビジョンの実現に向けて、“第2次ポポヴィッチ・ゼルビア”の方向性が示された。

取材・文●郡司 聡(フリーライター)