いまどきの「60歳からのマネー防衛術」とは?(写真:west/iStock)

2019年6月、老後生活には公的年金以外に夫婦で2000万円が必要、という金融庁審議会の報告書が大きな話題になった。いわゆる「老後資金2000万円問題」だが、若い世代はこれからどうやって定年までに2000万円もの老後資金を用意すればいいのか……。途方に暮れる人も少なくないのではないか。すでにリタイア間際という人の中には、「到底無理」と考えた人も少なくなかったはずだ。

60代の平均的な資産額は実質1000万円ぐらい

実際問題として、現在60代の人の平均的な金融商品保有額は、金融広報中央委員会の調べによると1849万円(「家計の金融行動に関する世論調査」/2018年)だが、これは大富豪も含めた数字であり、最も多くの人が持っている金額「中央値」は、60代の場合、ちょうど1000万円(2人以上世帯)。退職金が出た人が多いはずだが、この金額だ。

終身雇用も、年功序列も、すでに崩れ去った現在、定年まで我慢すれば退職金がそこそこもらえて、後は年金で暮らしていける……、という見通しは絶たれたと言っても過言ではない。

とはいえ、老後資金の問題は現役世代も含めて日本国民の大きな課題といっていい。何らかの形で、自己責任で老後の生活を守っていく必要がある。とりわけ日本では、政府の体質が大きく変化していくことは今後も望めそうもない。日本が豊かな国である限り、日本政府の体質は今のままと考えていいだろう。

政府の体質が変わらない、ということは年金の公的制度に対しても何となくその制度存続に対して不安がある。5年に1度の財政検証でも、シミュレーションのひとつには公的年金の存続も含めて、見直しが必要であることが発表された。うかうかしていられないわけだ。

とすれば、私たち国民が自分自身で安定した楽しい老後を、自分自身の手で作っていくしかない。拙著『年金20万・貯金1000万」でどう生きるか - 60歳からのマネー防衛術』でも詳しく解説しているが、私たちは意外と自分自身の老後のことはよくわかっていない。

例えば、何となく平均寿命で男性は83歳、女性は88歳ぐらいまで生きるのではないか、と思っている。しかし実際のところは、現時点ですでに男性の4人に1人、女性の2人に1人は90歳まで生きることがわかっている。

数多くの人間は、仮に65歳で定年退職を迎えたとしても、その後20年、30年と生きることを覚悟しなければならない。実際に、平均ではなく「寿命中位数」という指数で見ると男性は84.23歳(2018年)、女性が90.11歳(同)となっている。

一方、自立して生活できる年齢を示す指標に「健康寿命」がある。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことだが、男性が72.14歳(2016年)、女性が74.79歳(同)となっている。

年金に頼らないで一生働いていこうと考えている人がいるかもしれないが、せいぜいそれも70歳前後までで、後は思うように働けない体になってしまうかもしれない。やはり老後の資金はきちんと蓄えておく必要があるということだ。

「老後2000万円問題」の本質は自己責任?

報告書で話題になった「老後2000万円問題」だが、金融庁が発表したデータは95歳まで夫婦がそろって生き残った場合のシミュレーションであり、実際にそれぞれ男女の平均余命まで夫婦が生きた場合は、そんなに不足することはないはずだ。

総務省の家計調査を使ってシミュレーションすると、65歳の夫婦がそれぞれ平均余命まで生きる場合、最終的な不足額は1132万円程度だと考えられる。むろん、生活レベルはその人の家族構成やライフスタイルにもよるが、あくまでも平均値ではその程度だと考えていいだろう。

ただ残念なことに日本の年金制度は世界的に見ても非常に問題がある。アメリカの大手コンサルティング会社「マーサー」が毎年発表する「グローバル年金指数ランキング(2019年度)」を見ると、日本は37カ国中31位と最下位に近い。将来的に安心できる年金制度とはとても言いがたい。

老齢年金の受給額が、現役世帯の収入に対してどの程度給付されているのかを見る指数に「所得代替率」がある。現役世代の平均賃金に対して、何割の公的年金が給付されているのかを見る数値だが、日本の算出方法は特殊で夫婦2人の標準世帯をベースに算出している。2019年時点で、61.7%という数字が出ているが、実はこれを夫婦の単位ではなく、男性だけ、女性だけで見てみると、その数値は大きく下がる。

夫婦2人の合計金額以外の数値を見ると、OECDが算出したデータでは日本の男性の所得代替率は34.6%(2016年)となっている。日本の現実は、現役世代の3分の1程度の年金しかもらっていないことになる。そういったことも踏まえて、私たちは老後資金を考えていかなければいけないということだ。

他の先進国に比べるととても世界標準とは言いがたいものがある。政府与党が昔から宣言している「年金は100年安心」という言葉を鵜呑みにすることはとてもできない。

現実問題として、2019年は5年に1度の年金制度の見直し「財政再検証」にあたる。ここで発表されたのが、61.7%という所得代替率だが、このまま維持されることは実際にはなさそうだ。

財政検証では、2049年度までの実質成長率がマイナス0.5%だった場合には、夫婦2人の所得代替率は35〜37%となり、公的年金制度は事実上崩壊する可能性すらあるとしている。

年金2000万円問題は、現実的に将来のことを考えれば、この程度の預金は必要なのかもしれない、ということだ。

貯蓄がなくても楽しく暮らせる方法はあるのか?

資産防衛のためには、貯蓄していくだけではだめで、今の生活をある程度見直していく必要もある。将来的に、公的年金だけでは食べていけない時代を自覚して、自分の資産を防衛していく必要があるということだ。現実的にどうすればいいのか……。簡単にポイントだけ紹介しておくと次の5点になる。

(散投資する

外貨建て資産を増やして海外の金融商品のウェイトを増やしていく

6發箍樵枋眠澆覆鼻金融マーケットの動きとは異なる金融商品を増やす

ざ睛札沺璽吋奪箸遼粛遒剖い金融商品に投資をしておく

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大切なことはやはり分散投資と言っていいのかもしれない。もし、資産運用の初心者でこれから勉強するのもしんどいという人は、WelthNaviといった「ロボットアドバイザー」、もしくは「ロボアドバイザー」と呼ばれるAI(人工知能)による資産運用という手もある。

ロボアドバイザーは、あくまでも顧客のニーズに沿った運用を、分散投資を前提として行うもので、世界中のETF(上場投資信託)などに分散投資してくれる。運用能力のはっきりしない人間に任せるよりもAIに任せたほうがひょっとしたら安心かもしれないからだ。

ただ、資産運用だけで老後生活を維持していくのにも限界がある。例えば、定年退職を迎えた後の人であれば、生活にかかる固定費は引き下げるなどのライフスタイルの見直しも必要になる。生命保険の見直しやローンの返済、公共料金や電話料金といった固定費をチェックして、少しでも毎月かかる費用を減らす必要が出てくるだろう。

具体的には、PCだけではなくてスマホやタブレットを活用して、生活費を抑えるという方法だ。若い人ではごく少数かもしれないが、60歳以降の人の中には、いまだかたくなにスマホは持たない、ガラケーでいいと言い続けている人が数多い。

残念ながら、ガラケーだけでは財布にも厳しく、また人生の楽しみを大きく制限してしまうかもしれない。例えば資産運用でロボアドバイザーを活用した運用方法をする場合も、パソコンだけではやはりその魅力は生かしきれない。

資産運用の世界では、証券会社の窓口営業の人と付き合っている場合とPCやスマホで取引している人の手数料の差は極めて大きい。証券会社や銀行の窓口の営業マンが儲けさせてくれる人であれば問題はないが、なかなかそうはいかない。

パソコンでも運用はできるが・・・

むろんパソコンでも運用はできるのだが、リアルタイムで自分の資産の動向を把握していくには、やはりスマホやタブレットが便利で有益だ。いまや仮想通貨や金に投資するのもスマホがあればいつでもどこでも簡単に投資ができる。

例えば、老後資金を貯めていく場合も、あるいは自分自身で資産運用をしていく場合でも、資産の2〜3割はロボアドバイザーに資産運用を任せてしまうのも、一つの方法といっていいかもしれない。ロボアドバイザーの手数料は1%のみ。投資信託なら運用手数料(信託報酬)が2〜3%、初回の販売手数料も2〜3%もかかる。

ちなみに、PayPayやLINE Payといったキャッシュレスに対応するにもスマホは必需品だ。マネーの世界はいまやデジタルに満ちている。

現在は、第4次産業革命といわれるようなデジタル化への転換が大きく進んでいる。こうした世の中では、例えば新聞や雑誌、そして映画や音楽、雑誌といったものも、宅配の新聞や書店で売っている雑誌ではなく、そしてCDやDVDを買ったり、レンタルで借りたりするのではなく、スマホやタブレットで無料もしくは格安の定額で楽しむことができる。

いわゆる定額サービス、サブスクリプションを使って節約する方法だ。それだけではなく、人間関係の広がりもスマホであれば大きな可能性を秘めている。碁や将棋、麻雀といったゲームもわざわざ碁会所や雀荘に行かなくても、楽しむことができる。

家にいながらにして世界中の人間たちとゲームができる。山歩きや旅行などもスマホを武器にして歩けば、安全性を保ちつつ、さまざまな可能性が広がってくる。万一、山で遭難しても位置情報を使えば、すぐに助けに来てもらえる可能性が高い。

老後の余暇時間は、ざっと8万時間あるそうだが、高齢者向けのSNSも使い方によっては孤独な老後を過ごさずに済むかもしれない。むろん、自分なりにプライバシー保護などのセキュリティーをきちんとやる必要はあるが、旅行や山登り、ゲームなどを通して同世代の人間たちと楽しむこともできる。そういう意味では、現在の「ICT(通信情報技術)革命」に乗り遅れるという選択肢はないはずだ。スマホを1台持つことで大きな可能性を確保できる。

新聞を20年購読すると支出は100万円超

例えば、宅配で朝夕と新聞を購入すれば、月額4400円(税込)、年額5万2800円、20年間新聞を取り続ければ105万6000円の支出になる。これをスマートニュースといったニュースアプリを使うだけで、貴重な老後資金の支出が105万円減るわけだ。


現在では、スマートニュースを使えばロイターやブルームバーグ、ニューズウィーク日本版といった海外メディアの情報もチェックすることができる。新聞やテレビの情報だけで老後を過ごすのはかなりもったいない。

NHKはやむをえないにしても、それ以外の有料なメディアは、高齢者になったときに必要なのかどうかわからない。世界最大手のネットフリックス(Netflix)やアマゾンの動画配信サービスを使えば、ケーブルテレビよりもはるかに安価で、良質の動画も楽しめる。

こうした最新の情報通信技術を駆使した老後にするだけで、20年で500万円得するというシミュレーションもある。ひょっとしたら「老後2000万円問題」解決の糸口になるかもしれない。