「ジャック・ドーシーは、誰もが「Twitter的なSNS」をつくれる世界を目指そうとしている」の写真・リンク付きの記事はこちら

インターネットは誰のものでもない。サーヴァーを立ち上げる技術とホスティングの費用を払えるだけの資金があるなら、あなたが自分のサーヴァーに動画を投稿するのを止める者はいない。だが、YouTubeやFacebook以外の場所に動画を投稿するのは得策とは言えない。さらに、FacebookやTwitterがあなたの動画をシェアすることを禁じたとしたら、それを見つけてくれる人はいるだろうか?

しかし、YouTubeやFacebookといったプラットフォーム上で、誰もが何でも自由に投稿できるようにするというのも、いい考えではない。ハラスメントやヘイトスピーチ、リヴェンジポルノ、外国のプロパガンダといった問題に対処できるだけの力と責任は、ほんのひと握りの企業に集中している。

ツイッターの最高経営責任者(CEO)であるジャック・ドーシーは、それを変えたいと思っている。ドーシーは「脱中央集権化」されたソーシャルネットワークの標準づくりを開発する5人に対して、ツイッターが予算を提供すると12月11日(米国時間)にツイートした。さらにドーシーは、このチームが開発した脱中央集権化のための標準化技術を、Twitterが利用できるようになることも願っていると述べたのだ。

Twitter is funding a small independent team of up to five open source architects, engineers, and designers to develop an open and decentralized standard for social media. The goal is for Twitter to ultimately be a client of this standard. 🧵

- jack 🌍🌏🌎 (@jack) December 11, 2019

「ツイッターは最大5人のオープンソースアーキテクト、エンジニア、デザイナーからなる小規模の独立チームに出資し、ソーシャルメディアのためのオープンで脱中央集権化された標準づくりを実施します。最終的にTwitterが、この標準化技術のクライアントになることが目的です。🧵」

これはつまり、企業としてのツイッターがソーシャルネットワークとしてのTwitterを単独で管理するのではなく、ほかの多くの人々が自分たちの“独自ヴァージョンのTwitter”を運営できるようになるということだ。これは、さまざまな企業や非営利団体、個人が独自のメールサーヴィスを運営しているのと同じことである。

あなたはGmailからYahooへ、あるいは個人が運営するプロヴァイダーのサーヴァーへメールを送れるだけでなく、自宅でメールサーヴァーを立ち上げることもできる。これはメールが誰でも利用できるオープンスタンダードをベースにしているからこそ可能なことなのだ。

だからといって、すぐにでも自分用のTwitterを立ち上げられるようになると期待してはいけない。このプロジェクトはまだ立ち上がったばかりだ。ツイッターの最高技術責任者(CTO)であるパラグ・アグラワルが、「@bluesky」と呼ばれるこのチームの採用を進めている。

この新プロジェクトがどのようなかたちになるのかは、まだ明らかになっていない。「このチームには既存の脱中央集権化のスタンダードをさらに洗練されたかたちにするか、そうでなければ一から新たなスタンダードをつくり上げてほしいと考えています」と、ドーシーはツイートしている。「わたしたちTwitter, Inc.からの要求はそれだけです」

なぜツイッターにとってよいことなのか?

また、もうひとつ明らかになっていないのは、この脱中央集権化されたソーシャルネットワークから、ツイッターがどの程度の利益を得るのか、あるいはまったく利益を得ることはないのかということだ。

「これがなぜツイッターにとってよいことなのでしょうか? この脱中央集権化により、わたしたちはより大規模な公共の議論へのアクセスと貢献が可能になり、健全な議論を促進するオープンな推薦アルゴリズムの構築に注力できるようになります。またわたしたち自身は、これまで以上に革新的になることが求められるようになるでしょう」

ドーシーのツイートからは、ツイッターが脱中央集権化をコンテンツモデレーションの手段のひとつとして考えていることがうかがえる。ドーシーはテクノロジー専門ブログサイト「Techdirt」のエディターであるマイク・マズニックの論文が、脱中央集権化への動機のひとつとなっていると語っている。

「一部の巨大プラットフォームがオンライン上の言論を取り締まるのではなく、大規模な競争が行われることになるだろう。そこでは誰もが独自のインターフェース、フィルター、追加サーヴィスを設計でき、特定の人間による全面的な検閲に依存することなく最適なあり方を探っていくことができる」と、マズニックは述べている。

「これによりエンドユーザーは、特定の言論をどこまで許容するかを自分で決められるようになる。また、個人の言論を完全に封殺したりプラットフォーム自体が言論の可否を決定したりすることなく、大半の人々にとっては問題のある言論を避けることが容易になるだろう」

Mastodonというモデルケース

脱中央集権化されたソーシャルネットワークである「Mastodon(マストドン)」は、モデルケースのひとつと言えるだろう。誰でもMastodonサーヴァーを立ち上げ、アカウントを登録できるのだ。

Mastodonサーヴァーでアカウントを登録したら、そのサーヴァーと別のサーヴァーの両方でほかの人々をフォローできる。各サーヴァーの所有者は、許容される言動やコンテンツに関するポリシーを独自に設定し、ほかのサーヴァーから自分のサーヴァーへの接続をブロックすることもできる。

例えば、極右御用達のTwitterとも言える「Gab」は、ピッツバーグで起きたユダヤ教礼拝所の銃乱射犯の投稿をホストしており、今年はじめにMastodonネットワークに加入した。多くのMastodonサーヴァーとクライアントアプリがGabをブロックし、Mastodonの大規模なエコシステムから隔離した。

このアプローチにより、各コミュニティは自分たちの体験をよりコントロールできるようになった。Twitterがこれを採用すれば、オンライン上で何が許容されるのか、あるいは許容されないのかといったことを同社が単独で決めることがなくなる。

だが、これだけで巨大プラットフォーム企業が抱える問題がすべて解決するわけではない。例えば、問題のあるコンテンツを隔離しても誤情報などに関する問題の解決にはならないのだ。プロパガンダは閉じたグループの中で循環し、そうした環境では対抗言説が機能することも難しい。そのような状況がインドをはじめとするさまざまな場所で悲劇を招いてきた。

ツイッターがMastodonと同様のモデルを採用したとしても、ユーザーの大半が同社が管理する元のTwitterを利用し続けることになれば、実質的には一極集中と同じことになるだろう。

閉じたプラットフォームを目指してきたツイッター

一方で、一部のデヴェロッパーや企業家は、ツイッターのこのようなプロジェクトが長期的に見て生き残っていけるのかどうかを懸念している。同社は過去にも外部のデヴェロッパーがTwitterのクライアントやツールを開発できるように自由を与えたが、時間が経つにつれ、その自由は徐々に制限されていった。

「何千人ものデベロッパーがTwitterのAPI上でのプロジェクトの開発に注力し、大衆がアクセスしやすいプラットフォームづくりに取り組んでいました」と、駐車スペース予約アプリを開発するBoxcar Transitの共同創業者であるジョー・コランジェロはツイートしている。「その対価としてツイッターは閉じたプラットフォームをつくり、開発者たちのアクセスを制限したのです。また同じことを繰り返そうというのでしょうか?」

ドーシーはツイートでこの件についても触れている。「さまざまな理由により、当時は別の道を行くというのが合理的な選択でした。そしてTwitterは一極集中化していきました。しかし、時間とともにさまざまなことが変化しました」

問題は、ツイッターが既存のスタンダードを採用するのか、それとも新たにつくり出すのか、ということだ。既存のスタンダードで可能性があるものとしては、Mastodonをはじめとする多くのサーヴィスで利用されている「ActivityPub」と呼ばれるプロトコルがある。

ドーシーはツイートで、ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)の基盤となっている分散型台帳でありデータベースのブロックチェーン技術に言及し、「(ブロックチェーンは)オープンで可用性が高いホスティング、ガヴァナンス、さらにはマネタイズにいたるまで、さまざまな脱中央集権化ソリューションを提示しています」と述べている。

アイデアの先へと進めるか

Mastodonとビットコインは、脱中央集権化において異なるアプローチをとっている。Mastodonはメールのような「連邦制」だ。メールの送受信時に利用するアプリ、例えば「Microsoft Outlook」は、他者と直接メールの送受信を行うわけではない。メールの送受信はサーヴァーを通じて行う。

これと同じように、Mastodonでは誰でもサーヴァーをホストし、別のサーヴァー上の他者とコミュニケーションすることができる。だが、メッセージの保存やルーティングに関しては、サーヴァーが依然として重要な役割を担っている。

ビットコインは「分散型」で、ピア・ツー・ピア(P2P)のファイル共有サーヴィスに似ている。ビットコインのネットワーク上では、ユーザーはビットコインのソフトウェアを使ってほかのユーザーと直接つながっている。分散型ソーシャルネットワーキング用のプロトコルとしては「Scuttlebutt」が存在するが、これはブロックチェーンベースではない。

ドーシーがツイッターの脱中央集権化を考えているというだけでも驚きではある。だが、それはまだアイデアの段階に過ぎないのだ。

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