コストコの商品がネットで買えるのは魅力ですが……(写真:コストコホールセールHP)

12月10日に「コストコホールセール」で通販が開始されました。コストコファンにとっては長らく待ちわびてきたコストコオンラインのスタートでしたが、開始直後から、

「商品が高い!」

という声が上がっています。いったいなぜそのような反応になっているのでしょうか。

コストコは日本国内で現在26店、世界で約780店を構えるアメリカ生まれの会員制小売りチェーンです。高ブランド・高品質の食品や日用品がとにかく大きなパッケージで安く売られていることから、主婦層にとても人気の小売業態です。ホールセールクラブなのに小売業態というのもちょっと言葉の矛盾に感じますが、実態がそうなので、記事の中では小売店として説明していきます。

トップブランドもPBも高品質

コストコの特徴はそれぞれのカテゴリーでトップブランドのメーカーと交渉して品ぞろえをするとともに「カークランドシグネチャー」というプライベートブランド(PB)もとにかく品質にこだわったいい商品をそろえます。そしてコストコで買い物をすることができるのは年会費(個人会員は4400円、法人会員は3850円、いずれも税抜き)を支払った会員だけ。これは通販でもルールは同じです。

例えば私が愛用しているコーヒー豆はコストコで売っているカークランドのエスプレッソブレンドですが、このコーヒー豆はアラビカ種100%の高品質の豆をプライベートブランド商品であるにもかかわらず、わざわざスターバックスに焙煎を依頼して作っています。

販売サイズは907gと大型のポテトチップスぐらいのサイズの袋に入って通販では税込み1698円。とにかくコストコはこのお徳用サイズ、高品質商品、それが安いという3点セットの特徴で会員の支持を得ています。

私もコストコに年間で5〜6回は出かけて買い物をするのですが、デメリットは自宅から遠いこと。コストコの倉庫店は首都圏では町田、幕張、川崎、千葉ニュータウン、入間、三郷といった具合で、東京都23区に住む会員の場合だいたいどこが最寄りだとしても車で片道1時間ぐらいかかってしまいます。

ですからコストコファンにとっては通販で購入できるのはうれしい話で、だからこそ待ちわびたコストコオンラインのスタートだったということです。

ところがコストコオンラインが使えるようになって早速購入しようとしたら、いつも購入している商品がそこそこ高いことに気づきます。

実際に私が最近購入したレシートと比較しながら通販の価格を調べると、どの商品も15%から30%ぐらいの幅で単価が高く設定されています。もちろん5%程度しか高くない商品もありますが、すべての商品が100円から300円ぐらい高いのです。ただこの価格は送料込みの料金として設定されているので、価格差があるのはそれが理由と考えるといったん納得はできます。

「送料込みでその程度の価格差でコストコユーザーはなぜ騒ぐのか?」

コストコ会員ではない読者の方は感じるかもしれません。でもコストコで日常的に買い物をしている立場では、一度コストコにでかけるととにかくまとめ買いをするのが通常です。私の場合はレシートを見ると1回の買い物金額がだいたい毎回3万円超です。

それでこの価格の違いを適用して、通販で購入した場合の金額がいくらになるのかを調べると私の場合、100円から300円の差が積もり積もって6000円も違ってくる。つまり、

「送料込みで6000円の差は高すぎるんじゃないのか?」

と戸惑うわけです。

コストコの商品はとにかくコスパがいい

さて、ここまでの状況は消費者の立場で、かつ世論を代表して状況を記述した話です。立場を逆にしてコストコの立場で考えて、かつ経営コンサルタントの知識を動員して考えた場合に、なぜこうなっているのかについて説明をしてみたいと思います。


購入頻度が高いジャンルは食品・飲料・お酒になりそう(写真:コストコホールセールHP)

コストコで商品を購入してみて気づくことは、とにかくコストパフォーマンスがいいこと。例えば普通の大規模スーパーで同じように購入をした場合と比較するといくらぐらいになるのか計算してみたことがあるのですが、控えめに見ても4〜5割は高くなります。つまり私がコストコで3万円の買い物をしているときには、1.2万円以上得をしながら買い物をしている計算になります。

コストコではなぜこれほど安く商品を販売できるのでしょうか。経営コンサルタントの観点でみると3つのポイントがあります。

まずお店の側のコストが小さくなる売り方をしていることです。具体的には大きな倉庫型の店舗でフォークリフトを使ってパレット単位で商品を陳列するスタイルです。スーパーならば倉庫から商品を見つけて売り場に並べるコストがかかるのですがその分を節約できる。言い換えれば倉庫から商品をピックアップする仕事を顧客がやってくれているのです。

2番目に卸サイズの大型商品ばかりなので販売効率がいい。一緒に買い物に来て、自宅に戻ってから4〜5人で商品を小分けして精算して持ち帰る主婦グループもいます。これは会員が卸として購入し、自宅で小売用に小分けして販売しているのと同じで、この場合は小売り機能を顧客に任せているからコストが低いと考えることができるのです。

年会費以外の利益はすべて会員に還元

そして3番目にコストコの場合には余計な利益を上げない方針になっている、という変わった特徴があります。コストコは上場企業で年間の利益額が公表されているのですが、その利益額は会員数×年会費とほぼ等しいという特徴があります。つまりコストコの方針として会員からは年会費に相当する4400円だけ利益を上げればいいという考え方があって、それ以外の利益はすべて会員に還元する方針だから安いのです。

さて、この特徴を理解すると、なぜコストコオンラインが割高なのかその秘密がわかります。

ここからの説明はあくまで外部の経済コンサルタントが経験をもとに話すことなので、内部情報と違っている点があればご容赦ください。もっとも、企業秘密である内部情報はそう簡単に外には出てこないと思いますが。

コストコオンラインのサービスを開始するにあたって、消費者が期待する価格は「倉庫店の価格+送料」であるべきだと考えがちです。さきほどの私の例でいえば3万円分の食品を購入してそれを(かなり大きめのダンボール箱で)自宅に配送するとしても、どんなに高くても送料は2000円しかかからないだろうと思いがちです。だから6000円も高くなると思うと「オンライン高すぎ!」と思ってしまうわけです。

ところがコストコの側からすればコストコオンラインで追加されるコストは送料だけではありません。倉庫店では商品のピックアップは消費者がやってくれます。これはコストコに買い物に行くとつくづく痛感することですが、とにかくコストコでの買い物は疲れます。

広い倉庫に大きなカートを押しながら、必要な商品の棚に寄って大きなパッケージをピックアップする。そのピックアップに1時間ぐらいの労力をかけます。それをレジに持っていって支払って、駐車場までカートを押して車に積み込んでようやく自宅に向かうのです。


299万円のマットレス+ベッドも買える(写真:コストコホールセールHP)

ではオンラインで注文した商品はどうやって自宅に届けられるかというと、実はコストコオンラインの従業員が行う作業は、週末にコストコを利用する私が行う作業と同じです。

仮に私がお店で買うのと同じ商品をコストコオンラインでオーダーしたとしましょう。従業員はカートを手にオンライン用の倉庫を回り、一つひとつ商品をピックアップする必要があります。だいたい15種類ぐらいの商品をそうやってカートに入れていくのです。そのうえで段ボール箱にパッキングをして送付状を梱入し、あて先ラベルを貼り付けて運送会社に引き渡すという作業が発生しています。

つまり発送にかかるコストは送料だけではないわけです。ではどれだけの追加コストがかかるのかというと、要するに週末に私が自分でやっている作業分は人件費としてかかるということです。

小分けで注文するならば妥当な価格

そして通販の特徴としては、おそらく自分で買い出しに行くのと違って1度の注文単位は少なくなるはずです。私がコストコオンラインで購入すれば2カ月に1度、3万円分を購入して6000円分割高になるのではないのです。そうではなくもっと頻繁に、例えば5回として1回当たり6000円分を購入して1200円ほど割高になるような買い方をするはず。

だと考えれば送料が800円(6000円の商品でもコストコ商品は結構大きいんです)、ピックアップの人件費が400円という内訳になっていると考えると1200円ほど割高なのは実に理にかなっていることがわかります。

結局のところ、コストコの特徴はやはり年会費からだけ利益をとる仕組みで、お店で買おうが、通販で買おうが、コストコはそれにかかったコストだけを受け取ってそこからは儲けようとはしていないのです。

しかし倉庫店で買う場合は、わたしたち会員が自ら働くことでコストコのコストを下げてくれています。だから安い。そして通販で買う場合は会員の代わりに従業員が働いてくれています。だから相対的には高い。それでもスーパーよりはずっと安いのです。