飲み会での悪口は信頼につながる?

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 忘年会など飲み会が増える時期となりました。飲み会で嫌われることとして、人や会社などの「悪口」を言うことが挙げられ、ネット上にも、「悪口が飛び交う飲み会は嫌い」「飲み会での悪口をどのようにやり過ごしたらいいの?」といった声があります。一方で、あの野村克也さんは「人の悪口を言わないような人間は信用するに値しない」と著書で主張しており、悪口を一概に否定することはできないと考える人もいるようです。

 人との信頼感を築くための方法として、飲み会での悪口はアリなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

同調心理によって結束強く?

Q.人はどのような心理から、飲み会で悪口を言ってしまうのでしょうか。

小日向さん「ストレス発散です。悪口だけではなく、つらい、苦しいなど心にあるネガティブな感情を『吐き出す』という発散行為により、気分が楽になります。飲み会以外でも、気が許せる人との電話や自分自身のSNSで、ネガティブな感情を吐き出して気持ちが軽くなった経験のある人は多いのではないしょうか。こうした一般的な心理に加え、アルコールは緊張を解く作用があるので、抑制されている感情が出やすくなるということがあります」

Q.飲み会で悪口を言った方が、同僚らとの信頼感が深まるという声もあります。心理学的には。

小日向さん「これは“条件付きでアリ”と言えると思います。条件というのは、自分も悪口の対象に対して同様の感情を持っている場合です。例えば、自分がある同僚に対して仕事が遅いと不満を持っていたときに、飲み会で『○○さんの仕事が遅い! イライラする』という話題になった場合など、みんなも同じことを感じていたのだという同調心理は、同様の感情を持つ人が多いほどその場の人々の結束を強くします。

それが、悪口を言い出した相手への信頼感にまで昇華できるケースはまれですが、少なくとも親近感は抱くようになると言えるでしょう」

Q.悪口なら何でもよいわけではないと思います。どのような悪口であれば、人は共感し、信頼感を深めることができるのでしょうか。

小日向さん「基本的に、その場にいない人の悪口で盛り上がる飲み会というのは、よいストレス発散とは言えません。しかし、その飲み会が終わった後に自分自身が『明日も頑張ろう』といったポジティブな気持ちになることができるのであれば、一概に『悪口はネガティブな言葉』と決めつける必要はありません。

そもそも、他人に対してネガティブな感情を抱くことは、抱いている人自身にも多少の自責の念があるものです。ネガティブな感情を悪口で発散することで、自責の念を対象人物に抱かなくて済むように状況が変えられる、あるいは、変えていこうといった、未来に対する希望的な感情を抱けるようになるのであれば、悪口と思える言葉も改善に向けての起爆剤になり得ます」

Q.逆に、飲み会で悪口を言うときに、人に嫌われるような悪口はどのようなものでしょうか。

小日向さん「まず、発言に責任が取れないのであれば言うべきではありません。つまり、『あなた、先日、私のことをこう言っていたらしいね』と本人に言われたとき、『言っていません』とうそをつくようなら言うべきではないということです。これは、お酒を飲むと記憶をなくして自分の発言を覚えていないことが多い、いわゆる、お酒に飲まれるタイプの人も、発言に責任が取れないという意味では同じです。

もう一つ、言ったところで何も展望が抱けない悪口は、周りの人を不快にさせるだけなので避けましょう。『○○さんって本当に嫌みな人で、今日も△△とか言われてムカついた』と言ったところで、あなた自身にその人物との関係性をどうしようか全く考えがないのであれば、言うべきではないでしょう。ただ吐き出したいだけであれば、日記など誰にも見られないところに吐き出しましょう」

Q.飲み会で悪口を言うことによって信頼感が深まるか嫌われるかは、紙一重のように思います。信頼感を深められる自信がなければ、悪口は言わない方が無難ということでしょうか。

小日向さん「野村監督がおっしゃる『人の悪口を言わないような人間は信用するに値しない』という言葉は、他人から悪口と受け取られかねない発言ができる人というのは、たとえそれを批判されたとしても、一貫して自分の言葉に責任を持てる人だということです。つまり、そのくらい強い人間であるから、信用できるのだということなのです。監督自身が公人として発言に責任を持ち、実績も伴ってきた人だからこそ言える言葉でしょう。

悪口はどこから回って本人の耳に入るか分かりません。発言を問われた際に『Yes』と言えるか、そして、そもそもお酒に飲まれない身体的な強さがあるか。『お酒を飲んでいたから覚えていない』では済まされないこともあります。悪口を言う行為は弱気なときに出てきがちです。しかし、逆に弱いからこそ言ってはいけないのが悪口です」