局面で激しい競り合いが続いた中国戦。時にはファウル覚悟のラフプレーが日本の選手たちを襲った。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 E-1選手権を迎える森保一監督のテーマのひとつは「A代表と五輪世代の融合」だった。そして今大会の3試合で中国戦は、五輪世代がクリアするべき課題に最適だった。しかも東京五輪が秒読みに入っている現実を直視すれば、もっと五輪本番を睨んだメンバーにチャレンジさせても良かった。

 だが反面、森保監督も要再検査の状況に置かれていた。五輪代表のコロンビア戦(0-2)、さらにはベネズエラとの親善試合(1-4)での惨敗を経て、開幕戦でつまずくことは許されなかった。もちろん最優先されたのは長いリーグ戦を終えたばかりの選手たちのコンディションだろうが、おそらくこうした諸条件の下で選択されたのが、3バックとボランチに経験を重視したスタメンだった。逆に最前線のトライアングルと両翼は、鈴木武蔵以外は五輪世代を送り出し、短い時間ながらも田川亨介や相馬勇紀もピッチに立った。

 結論から言えば、ギリギリ赤点を免れたというところだろうか。フィジカルで優位に立とうとする粗暴な中国は、そういう意味で局面では危険だったが、それは日本側の捲いた種でもあった。例えば現札幌のミハイロ・ペトロビッチ監督が導入した3バックでは、ピッチを斜めに横断する精度の高いロングフィードを駆使した広範な揺さぶりに特徴があった。

 しかしこの夜の日本は、ほとんどが各駅停車の変化に乏しいパスワークに終始したので、中国側も照準を定めやすく勢い余ったチャージが日本の選手たちを痛める結果となった。特に相手に1メートル以内に寄せられると明らかに動揺が見える佐々木翔は、常にボール奪取可能な相手として狙われていた。指揮官はボランチにふたりともアグレッシブな守備力が売りの橋本拳人と井手口陽介を起用したが、もう少し攻撃的に主導権を握ることを考えても良かった。田中碧や大島僚太ら展開力を持つタイプがピッチの中央にいれば、もっと相手のプレッシャーを軽減し、むしろ効率的に疲弊させる流れが出来たはずである。
 攻撃面では先制のシーンに象徴されるように、森島司を起点とした左サイドからの崩しが有効だった。リーグ戦でも好調だった森島はピッチ上で群を抜くスキルフルな選手で、ボールを引き出すポジション取りも巧みなら、中国勢が複数で眼の色を変えて寄せて来ても平然とボールを確保し、適切な次の選択を見つけていた。開始早々には敵陣スライディングでボールを取り切っており、「キープ」「動かす」「パス」とともに「奪う」センスにも長けていることも示し起爆剤となった。また森島との連係が活きた遠藤渓太も、ティーラトンの内側からのフォローがある横浜に比べれば守備面での負担が増加し、その分攻撃の仕掛けの精度が低下したが、それでも持ち味は発揮しアピールした。

 ただ中国戦勝利の最大の立役者だった森島にしても、さすがにこのポジションでは五輪代表のボーダーラインになんとか足をかけている状態だ。逆に手薄な1トップでプレーした上田綺世は、ボール保持状態での課題を露呈し、五輪への当確には至らなかった。前方への動き出しからワンタッチゴールを特徴とする選手なので、やはり活かし切るなら十分な質を備えたパサーの援護が要る。逆にポストワークやスペースに流れての仕事を期待するなら、別の選択肢になるだろう。

 全員Jリーガーで臨んだ試合だが、通常のリーグ戦以上にストレスを感じた選手はいないはずだ。必然の勝利を掴んだ日本だが、力関係を見誤った分だけ及び腰になり、後半は中国の方がペナルティエリア侵入の数で上回った。また終了間際の失点シーンでは9人がすっかり引いてしまって、バイタルエリアの中国4選手の前には5メートル以上のスペースが出来る珍現象も見られた。ロシア・ワールドカップで大きな刺激を受けたという森保監督の攻撃マインドが薄れつつあるのが気がかりだ。

文●加部 究(スポーツライター)