鈴木の先制ゴールをアシストした森島。抜擢に見事にこたえた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 2013年韓国大会以来、2度目のタイトルを目指し、EAFF E-1選手権2019(釜山)に臨んでいる日本代表。その重要な初戦となった10日の中国戦で、森保一監督は意外な選手をスタメンに抜擢した。2シャドーの一角を占めたのは、今季JリーグMVP・得点王の仲川輝人(横浜)ではなく、U-22世代の森島司(広島)。鈴木武蔵(札幌)を所属クラブと同じ右シャドーで使いたいという意図があったせいかもしれないが、左の森島というのはひとつのサプライズに他ならなかった。

 ところが、彼は序盤から非常にスムーズな動きを見せ、攻撃陣の潤滑油となる。最前線の上田綺世(鹿島)、左サイドの遠藤渓太(横浜)といい距離感でトライアングルを形成しながら積極的にボールに絡み、守備時は前線からのハードワークを厭わない。29分の鈴木武蔵の先制弾をお膳立てしたタテへの侵入、高速クロスを含め、その一挙手一投足は大いに光った。最終的に日本は2-1で勝利したが、最大の原動力は彼だったと言っても過言ではないだろう。

「いいポジションに立ち続けて相手の嫌なことをするのと、渓太に入れる中継役、今日はあまり入れられなかったけど綺世への中継役をやろうとしてて、まあわりとできたかなと思います」と本人も納得の表情を浮かべた。「A代表と言っても相手のレベルがメチャメチャ高いわけじゃないし、Jリーグの相手の方が嫌だろうなという感覚で入った。だから緊張しませんでした」という口ぶりからも確固たる自信と手応えが窺えた。

 森島がA代表初舞台でこれだけ気の利いた仕事ができた要因のひとつに挙げられるのが、「森保チルドレン」のアドバンテージだ。

「プロ1〜2年目の時は森保さん(が監督)でしたし、やり方は分かってました。今も3バックをやってるんで、いろんなことを試しながらやりました」と言うように、森保監督のサッカーを理解したうえでチームに入ってきているのはやはり大きい。

 鈴木の先制点の場面にしても「あのタイミングで上げるのは自分のチームで共有していたところ」と話したが、日頃やっている役割を大きく変化させることなく出せる環境だったからこそ、森島は違和感なくプレーできた。そこは所属クラブで4-2-3-1の右MFを主戦場としている仲川ら他のアタッカー陣との大きな違いだろう。

 同じ広島の佐々木翔が背後にいたことも、彼にとってはひとつの追い風となった。
「翔君とはタイミングも分かりますし、相手がやりにくさを感じるプレーをやってくれる。あまり目立たないかもしれないですけど、僕や渓太は彼のおかげですごくやりやすかったなと感じます」と言う通り、佐々木のクサビのパスを森島が受けて攻撃のスイッチを入れるシーンは何度か見られた。

 E-1選手権のような準備期間の少ない大会を乗り切るためには、日頃クラブで連係やコンビネーションを熟成させている選手をそのまま持ってきた方が確かに合理的ではある。そういう意味で今回の森島起用は成功したと言っていい。
 
 ただ、これですぐにA代表定着というわけにはいかない。シャドーのポジションは南野拓実(ザルツブルク)や堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)といった欧州組アタッカー陣がひしめく大激戦区。東京五輪行きを争うだけでも熾烈を極めているだけに、さらなるアピールが求められるのだ。

「今回はアシストできましたけど、もうちょっとゴールに向かうプレーを増やしたい。そのためにもボールを触る回数を増やさないと。中国戦でもクロスを入れられなかったところがあったし、推進力も見せられたらいい」と森島は課題を口にする。

 特にゴールの部分はまだまだ物足りない。今季J1でも24試合・3得点と数字的にはそれほど大きなインパクトを残せなかった。中国戦で2シャドーを形成した鈴木が13ゴール、出番のなかった仲川が15ゴールを奪っているのに比べるとどうしても見劣りすると言わざるを得ない。

 彼が「得点を取れて機転の利くプレーのできるアタッカー」へと進化を遂げなければ、せっかく中国戦で得た評価もすぐに低下しかねない。残された香港、韓国戦でその課題に挑み、数字を残すこと。今大会の森島はそのタスクを果たすことが強く求められる。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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