日本、韓国、中国、香港の東アジア4カ国で争われるE−1選手権(釜山)。その初戦で中国と対戦した日本は、鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)と三浦弦太(ガンバ大阪)のゴールで後半25分までに2−0としたが、後半45分にゴールを奪われ、2−1のスコアで試合を終えた。


遠藤渓太、橋岡大樹、森島司が代表初出場となった日本の先発メンバー

 この試合を評価する時、まず触れておくべきは中国の実力だ。スポーツ大国・中国にとって、サッカーは最大の泣きどころだと言われる。実際、この試合の中で技術的に光るプレーを披露した選手はひとりもいなかった。タイ代表のチャナティップ(札幌)やティーラトン(横浜F・マリノス)のように、J1で通用しそうなテクニカルな選手は見つけることはできなかった。

 そのうえ今回の代表は経験の浅い選手ばかり。代表監督もこれが就任初戦だった。この日、ベンチを温めた田中駿汰(大阪体育大学)と小川航基(水戸ホーリーホック)、古賀太陽(柏レイソル)以外、すべてJ1の選手で固めた日本にとって、中国は文字通り格下に値した。

 ところが日本は、開始から20分ぐらいまでその中国に後手を踏む。日本の陣形が相手の陣形に噛み合っていなかったからだ。中国の攻撃を下がった位置で手をこまねき、傍観する恰好になった。それは日本が3バック(3−4−2−1)で臨んだことと密接な関係があった。

 その森保式3バックは、容易に5バックになっていた。フィールドプレーヤー10人のうち、5人が最終ラインに並べば、高い位置からプレッシャーをかける選手は5人。4バック時に比べ1人少なくなる。加えて前の3人(センターフォワードの上田綺世/鹿島アントラーズと、2シャドーの鈴木と森島司/サンフレッチェ広島)が真ん中に固まるので、前方向への進みがいい相手の両サイドバックにプレッシャーがかからない。

 日本は、経験も浅ければ、光る個人もいない中国に、ゲームをコントロールされるという情けない展開を強いられた。ピッチには森保式3バックの特徴が鮮明になっていた。ひと言で言えば守備的。先日J1優勝を飾った横浜FMとは真逆のサッカーだ。中国には番狂わせを起こすチャンスが到来していた、かに見えた。

 しかし、雲行きは徐々に変わっていく。14分、左ウイングバックとして起用された遠藤渓太(横浜FM)が、左サイドから頑張って、際どい折り返しを中央に送る。17分には畠中槙之輔(横浜FM)の放ったシュートが、中国のゴールポストを直撃した。

 中国はこのあたりから慌て始めた。27分、中国のキャプテンであるメイ・ファンがラフプレーによりイエローカードを提示されたシーンなどはその象徴。自分たちのサッカーに自信が持てなくなってきた感じだった。おのずと日本は5バックになる時間が減り、平均値で上回る個人の力を発揮しやすい状況になった。

 そして29分、プレーが「連係、連動」した。佐々木翔(サンフレッチェ広島/3バックの左)からボールを受けた1トップ上田が、脇に走り込んだ森島に、相手の意表をつくクイックパスを送ると、局面がパッと開けた。森島が逆サイドに展開すると、そこには鈴木がいた。日本の先制点は、その鈴木のクリーンシュートによってもたらされた。真ん中やや左から展開していく中で生まれた鮮やかなゴールだった。

 ところが、当初の勢いがすっかり失われ、体力勝負にしか活路を見出せなくなった中国に対し、日本もほどなくすると、森保式3バックの地が出始め、勢いを失った。そして後半が始まると、気を取り直したのか、中国が再びペースを握る。5バックで構える日本陣内でプレーする時間が増えていく。後半8分には、ゴールに近い場所で左から右へと展開。右SBミン・ティアンが、ポスト直撃弾を放った。

 日本の追加点は、そんなよくない流れの中で生まれた。後半25分、セットプレーからのゴールだった。CKを三浦がヘッドで押し込み2−0とすると、中国は再び活気を失い、日本の勝利は揺るぎないものになった。

 森保一監督は試合後、「後半15分ぐらいからメンバー交代を考えていた」と述べた。交代は後半27分、鈴木を田川亨介(FC東京)に入れ替えたのが初めて。交代枠も2回しか使わなかった(もう1回は84分の橋岡大樹/浦和レッズ→相馬勇紀/鹿島アントラーズ)。その理由をこう続けた。「プレーがスムーズに行き出したところで新たな選手を入れることにためらいがあった」と。

 その結果だろう。日本が終盤、再び中国の攻勢を許すことになったのは。後半45分の失点には、そうした意味で必然を感じる。

 この試合はよくも悪くも、森保監督の真骨頂を見た試合だった。5バックになりやすい3バック(5バックになりにくい3バックも存在する)で守備的に臨み、かねてから唱える連係、連動するプレーで先制点を奪う。だが、そうは言ってもそのサッカーは引いて構えるサッカーなので、うっかりしていると能力の低い相手にも、受けて立つことになる。セットプレーで追加点を奪うことに成功しても、慎重になるあまり、交代が遅れ、それが災いし相手にゴールを許してしまう。

 どう見ても森保監督は守備的思考、かつ慎重な人だ。そうしたベースの中で、毎度唱える、連係、連動するプレー(佐々木→上田→森島→鈴木)が飛び出す。中国人記者の質問に対し「どっちが勝ってもおかしくない試合だった」と述べた森保監督だが、満足度は思いのほか、高いのではないだろうか。

 だが、あえて言わせてもらえば、先制点のような連係、連動は、相手が中国だからこそ実現したプレーだ。出るところに出れば、逆に危ないプレーになる。サイドアタッカーは両サイドに各1人しかいないので、連係、連動に絡みにくい。攻撃は中央に寄りがちだ。そこで技術的に高度な連係、連動を繰り出せば、リスクもその分、上昇する。逆襲をされやすくなる。

 実は、5バックになりやすい森保式3バックと、連係、連動との相性は決して良好とは言えないのだ。この試合を成功体験としてポジティブに捉えることに、懐疑的にならざるを得ないのである。