ブランドの広告が不適切なコンテンツ、不快なコンテンツの隣に表示されたことに、最後にメディアが騒ぎ立てたのは数カ月前だが、長いキーワードブラックリストを用いたブランドセーフティツールによるパブリッシャーの不利益は拡大する一方だ。

問題は、多くのクライアントがいまだに、すべてのパブリッシャーを対象とした包括的なキーワードブラックリスト戦略を採用していることだ。キーワードリストやブランドセーフティツールは恐ろしく無遠慮で不明瞭なものになり得る。文脈をきちんと考慮しなければ、ひとつの単語が記事の意味を誤って伝えてしまい、その結果、クライアントが広告の掲載を控える場合があるのだ。たとえば、スポーツライターは得点が入るという文脈で「シュート(shoot)」を使用するが、shootには銃撃という意味もあるため、しばしばキーワードリストに入っており、その結果、shootが使用されているコンテンツから広告収入を得られないという事態が生じる。

キーワードリストの実害事例

キーワードブラックリストがばかばかしい結果を招くこともある。Vice Media(バイスメディア)のメディアソリューション担当バイスプレジデント、ポール・ウォーレス氏は11月18〜20日に開催された米DIGIDAY主催の「プログラマティック・メディア・サミット(Programmatic Media Summit)」で、便秘の記事がいかにしてブランドセーフティの餌食になったかを語った。記事のタイトルは「1週間に何度ウンチすべきか?(How Many Times A Week Should You Be Pooping?)」。排便(defecate)は大丈夫だが、ウンチ(poop)は問題があると判断されたようだ。緊急避妊薬に関する記事が不適切と判断されたこともある。タイトルは「緊急避妊薬の使用は遅すぎると無意味(You’re Screwed If You Wait Too Long to Take Plan B)」で、性的な意味を持つ「screwed」の使用が問題だったようだ。

こうした事例は数え切れないほどある。エル(Elle)、エスクァイア(Esquire)、コスモポリタン(Cosmopolitan)などを所有し、(コムスコアによれば)10月の月間ユニークユーザー数が2430万人だったハースト(Hearst)のプログラマティック責任者ライアン・バックリー氏は、ブランドセーフティベンダーにブロックされた記事とキーワードリストの分析を開始したと話している。分析の結果、サセックス公爵夫人(Duchess of Sussex)のメーガン・マークルを取り上げたすべての記事がブロックされていると判明した。いずれの記事もブランドセーフティのガイドラインには違反しておらず、サセックス公爵夫人(Duchess of Sussex)に「セックス(sex)」が含まれていることが問題だった。

ハーストの事例をもうひとつ。URLに「makeup(メイクアップ)」という単語が記載され、記事IDに47を含む記事が、自動小銃「AK-47」を含む記事と判断されたことがある。

ニューズUK(News UK)のオーディエンス、データ、コマーシャル責任者ベディール・アイデミール氏は「あまりに多くの単語がブロックされていても、マーケターやエージェンシーがそれを理由に契約を解除されることはない。しかし、怪しいコンテンツに広告を掲載したら、契約を解除される恐れがある。だから、ブラックリストに登録される単語がどんどん増えていくのだ」と説明する。「彼らは『ニュース』をブロックしているも同然だ。何千もの単語をブロックしていたら、一体どこに広告を掲載できるというのだろう? 私はレシピサイトくらいしか思いつかない」。

「GDPRよりも収益に悪影響」

ブランドにとって安全なメーガン・マークルの記事が不当にブロックされているだけでなく、ニュースの横に広告を掲載すること自体にクライアントが神経質になっているという問題もある。ドナルド・トランプ米大統領やブレグジットの記事の横に広告が掲載されたら、ブランドのイメージも悪くなると広く考えられているのだ。複数のパブリッシャーによれば、テクノロジープロバイダーはこれを理由に、ブランドセーフティ(ブランドにとって安全か)からブランドスータビリティ(ブランドにとって適切か)へと移行し、ブランドが広告掲載を望む環境にさらなるニュアンスを付け加えようとしている。

コムスコアやニュースワークス(Newsworks)といった測定企業、業界団体による調査は、広告想起(アド・リコール)などを測定することで、ニュースコンテンツの広告効果は上昇しており、たとえ厳しい内容のニュースでも、ブランドへの悪影響はそれほどないと示唆している。それでも、効率性を求める広告主はしばしば、過剰にブロックしてしまう。エージェンシーにとっては、キャンペーンのインプレッション目標達成が困難になるが、パブリッシャーと異なり、売り上げや存続の危機に陥る心配はない。

あるアドテク幹部は「あるパブリッシャーは、キーワードによるブロックは欧州連合(EU)の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)より売り上げへの影響が大きいように感じると言っていた」と話す。

パブリッシャーは不当なブロックの割合について、インベントリー(在庫)の30%〜90%と報告している。ただし、バイサイドとセルサイドに直接的な関係がない限り、クライアントがオープンマーケットプレイスでプレ入札のブロックリストを使用していたら、実際の影響を測定するのは難しい。

ブランドセーフティ企業のいま

ハーストはより深く理解するため、ポートフォリオ全体でブロックされた記事のリストをベンダーから受け取り、記事のURLそのものを詳しく調べている。

バックリー氏は「パブリッシャーにとっての課題は、実情を十分に把握できないことだ」と話す。「プログラマティックの世界では、我々パブリッシャーは、サイト全体でどれくらいブロックされているかを見ることができない。唯一の機会は、広告主やエージェンシーと直接的な関係がある場合で、何がブロックされているかを直接確かめることができる。ブランドセーフティ会社を使うことは業界標準になっているが、私たちはその前提を疑い、彼らに心情、文脈、論調まで考慮させなければならない」。

ブランドセーフティ企業はパブリッシャーへのアピールとして、ブランドセーフティツールにニュアンスを付け加えていることを強調している。11月20日には、広告認証企業インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)がコンテクスチュアル分析を専門とするアドマントX(ADmantX)の買収を発表した。パブリッシャーにとっては、歓迎すべき動きだ。人工知能(AI)による確率的なキーワードブロックからより自然な言語処理技術、コンテクストへの移行を示唆しているためだ。

デイリー・ミラー(Daily Mirror)を発行するリーチ(Reach)は10月、ニュース、スポーツ、テクノロジー、セレブリティ関連記事のトラフィックの40%はブランドにとって安全だが、利益につながっていないと述べていた。リーチは対策として、マンティス(Mantis)というツールを開発。IBM Watsonの機械学習、自然言語処理を利用し、安全だがブロックされた記事を特定するというものだ。テレグラフ(Telegraph)などのパブリッシャーやエージェンシーからマンティスについての引き合いが来ている。

クライアントの許容度の問題

しかし、エージェンシーや広告主に受け入れられなければ、パブリッシャーだけがこうしたツールを使っても大きな効果はない。ブランドセーフティに関する新たな不祥事が発覚し、エージェンシーがさらに手綱を締めることになるのは時間の問題だ。

バックリー氏は「おそらく再び大きな問題が発生し、彼ら(広告主)がすべてをブロックすることになるだろう」と予言する。「3000のキーワードがブロックされたら、エージェンシーによるインプレッションへのリーチにも影響が出るだろう」。

アイデミール氏は次のように言い添えている。「これはクライアントが解決すべき問題だが、彼らにその動機があるとは思わない」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)