サッカー界全体で広まっているVARはたびたび物議を醸している。 (C) Getty Images

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 昨今のサッカー界には、テクノロジーの波が押し寄せ、ピッチ内外で様々な発展をもたらしている。

 その進化のなかで、最も“物議”を醸しているのが、レフェリングの在り方を変えたビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)だろう。主審が際どいプレーのジャッジを迷ったときに、モニタールームにいる審判がビデオで詳細をチェックし、より正確な判定を下すというシステムだ。

 ここ数年の試験的な導入を経て、正式採用するリーグが増えているのだが、問題が噴出している。というのも、使用する際の詳細なルール(基準)が定まっておらず、用いられるケースがあいまいだからだ。今シーズンから正式導入したプレミアリーグでも、選手や監督、さらには識者たちからも見直しの声が強まっている。

 では、なぜ急激に各国で導入が進んだのか。それについて、ヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)のアレクサンドル・チェフェリン会長は、こう語っている。

「我々はUEFAの大会に多くの介入はしなかった。しかし、今日では異なる圧力がある。決断しなければならないのはピッチに出る審判だ。最終的に7〜8万人に『違う』と叫ばれたとしても、だ。

 私はVARのファンではない。非常に懐疑的であり、結果は気に入らないものだと言える。ところが、残念ながらもう戻ることはできない。例えば、プレーを止める際に、どのぐらい前までさかのぼるのか? 5分前なのか、15分前なのか? 前に私が聞いた話では、審判は『7分前にファウルがあったのでそこまで戻す』とは決して言わなかった。だが、それもあいまいになっている。サッカーの試合は変わりつつあり、あまりにも変化しているのではないかと恐れている」

 さらに「VARはめちゃくちゃだ。そこには寛容性がないし、例えば、オフサイドを1〜2センチで判断するのがいいとは思わない。IFAB(国際サッカー評議会)には変更を申し入れたい」と語ったチェフェリン会長は、持論を展開した。

「なぜ後戻りしないのか? それはVARが存在していなかったから負けたと考えるチームが常に存在するからだ。我々は一つのミスのせいで負けたらいつも不平不満を言う。だから、これからは技術をより明確に、より早くし、VARに対する依存を減らしていく必要がある。現状は変わらないかもしれない。だからこそ、改善に努めなければならない」

 不満が続出しているVARは、おそらくこの先、見直されていくだろう。だが、どのような形が理想的なのかは難しい問題だ。今後も注意深く見守っていく必要がありそうだ。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部