いまどき「総合職」入社は勝ち組なのか? 会社にとって都合良く扱われ…

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 企業の中で働く社員といっても、正社員と契約社員、派遣社員など、ヒエラルキーがあることはすでに周知の事実。大企業や有名企業では、さらに正社員の中にも「格差」がある。一般的に出世コースと言われる「総合職」で入社できれば、その後は順風満帆……と思いきや、総合職ならではの悩みもあるらしい。

◆やりたいことがやれる技能職や契約社員が羨ましい

 都内の大手電機メーカーに勤務する永吉努さん(仮名・30代)は、慶應義塾大学の理系学部を卒業後、新卒「総合職」枠で採用された勝ち組の一人、だったのだが……。

「うちの新卒は総合職と技能職と二つの新卒採用枠があり、私は総合職で入社しました。総合の方が初任給が高く、社内での待遇も良い。入社当時は『君は総合か!』と上司からも一目置かれ、誇らしい気持ちでいっぱいでした」(永吉さん)

 同じ大学、同じ学部出身で同じ会社に入社した友人は、総合職ではなく技能職採用枠だった。給与も出世のスピードも違う。大学時代の成績でも「優」の数が友人よりも多かった。心から「勉強していてよかった」と喜んだ。しかし……。

「理系学部出身で、本当なら開発や製造に携わりたかったという当初の目的を忘れてしまっていたんです。この10年、私がしてきたことといえば総務部に人事部、海外ビジネス推進部などで事務作業ばかり。2年前に一度、希望した技術系の部署に配置されましたが、もはや現場のことはさっぱりわからず、初めて社内評価でマイナスがついた。一方で、友人といえば、技術畑で才能を開花させ、すでに会社を去りました。海外駐在中に台湾のIT企業から引き抜かれて、年収は僕の3倍もあるとか」(同)

 都内の大手テレビ局総務担当者・菅祐香里さん(仮名)も、同様の悩みを持つ一人。

「学生時代に東南アジアを取材してVTRを作っていましたから、ジャーナリスト志望だったんです。総合職で入社し、一年目から念願の報道局に配置され、夢が叶ったと喜んでいたのもつかの間。朝の情報番組担当になり、やることといえば芸能人が結婚したとか不倫したとか、週刊誌の記事を見ては使えそうなネタを探して、出版社に『使わせてくれ』と電話する毎日……。

 上司に不満をうったえると、今度は報道からも外されて、お笑い番組担当、通販番組担当と、自分の希望しないことばかりをやらされる。収入は三分の二ほどになりますが、報道限定の契約社員はイキイキしていました。これが総合職の定めなのかと」(菅さん)

 自身が優秀だからというだけで、聞こえも収入も良い「総合職」を目指すと、後悔した時にはすでに手遅れになる、ということもある。

◆潰しが利かない、一生いまの会社に尽くすしかない…

「総合職とはその名の通り、会社の為には総合的になんでもします、という都合の良い人材のこと。自身の希望に関係なく、会社から求められたことをそつなくこなし、会社の安定、成長に寄与しなければならない。だからこそ会社は、総合職採用で出来るだけ優秀な人材を採用しようとします」

 こう話すのは、大手人材企業の新卒採用担当者だ。総合職とはやはり優秀な「オールラウンダー」であり、何をするにつけても「会社のため」に動かなければならない。

 大手であればあるほど、大切なのはやはり“人”。優秀な総合職社員は、社員同士のトラブルに首を突っ込み調整をさせられたり、あるいは直属上司の命を受け、ライバル社員を蹴落とすための情報入手を求められることもある。

「総合職で入れば、会社のありとあらゆることをやらされるため、気が付いた時には転職の潰しが利かなくなり、一生いまの会社にいるしかなくなってしまいます。

 例えば公務員であれば“国民の利益のために”と大きな目標を持っているために、そうした間違いは起こりにくい。一般企業を希望する人は、ある程度の目標ややりたいことが絞られているために、総合職で会社に入ったのに思い描いていたものとは違う、と落胆してしまう場合は多いでしょう」(大手人材企業担当者)

 ともあれ、である。総合職社員はやはり勝ち組とは思わずにいられない。前出の大手テレビ局総務担当者・菅さんが続ける。

「でも働いている限り、やはり給与は重要ですよね。技術職社員や契約社員だと、仕事がなければそれでおしまい。私たちは、会社が存在し続ける限り、仕事があるんです。会社を続かせるのが仕事ですから。お金や仕事がなければ、報道がやりたいなんて夢すらも語れない。普段は辛いですが、給料日やボーナスをもらうたびに、総合でよかったって思っちゃうんです。ジャーナリストになりたいって夢、もうほとんど忘れかけています」(菅さん)

<取材・文/山口準>

【山口準】
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。