北国では、大雪の便りもチラホラ聞こえてくる頃。寒いからとカラダを縮めてばかりいると腰が曲がってしまうことに。この時期のココロとカラダの養生法を知りましょう。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/liza5450)

■もの悲しい冬本番の時期は、カラダの調子を整えて乗り切ろう

12月7日〜12月21日は、大雪(たいせつ)です。この時期は山間部や寒い地域ではこの冬初めての本格的な大雪が降る頃。暖かい日はほとんどなくなり、冬本番になります。植物も動物も動きをひそめ、余計な体力を消耗しないようにじっとしています。そのため、何かもの寂しく感じるかもしれません。

しかしながら、12月13日は、新年を迎えるための支度をはじめる正月の事始め。スス払いから大掃除を行い、周囲を清めるだけでなく、カラダの不調も整えることで、名実ともに新年を迎える準備をしましょう。

大雪とは、本格的に雪が降る頃を指し、冬本番のはじまりです。空は重い灰色の雲に覆われ、天地の陽気が少なくなる時期です。

季節のはじまりの初候は、雪国では、積もった雪の重みで枝が折れないように雪吊りをして、木を守る準備をします。ちょうどこの時期には、オオワシが川や水田にも見かけらるようになり、ブリが旬を迎えます。

季節が進む次候では、正月の事始めの時期であることから、スス払いをはじめ、1年の汚れを落とします。ツバキが咲き乱れ、牡蠣やネギが旬を迎えるのもこの時期です。終わりである末候は、サケやニラが旬を迎え、冬の深まりを感じることでしょう。

■全身の毛細血管が縮み、血行不良で抜け毛が増える?

この時期は寒い冬を乗り切るため、カラダも冬眠のような状態になります。そして、エネルギーは生命を維持するために大切な中心部の臓器へと向けられ、カラダの末端には栄養があまり行き渡らなくなります。そのため、腰を丸めて、カラダの大事な部分であるお腹を温めるような姿勢をとります。また、体中の血液を中心に集めるために四肢の血管が収縮することで手足が冷えたり、カラダの末端にあたる毛まで栄養が行き渡らないために毛が抜けたりと、いろいろな変化が認められます。そのため、自分自身でも一気に老け込んだように感じる時期かもしれません。

冬の深まりを感じる大雪は冬眠の時期でもあります。カラダは生命維持のために必要な部分にエネルギーを集中させているため、脳にまで栄養が行き渡らず、ボーっとして、想像や集中などの精神活動が鈍くなるのもこの時期の特徴です。

カラダを温めるような食材を多く食べ、内臓の機能を高めるとともに、カラダを動かしたり、ほぐしたりするなど外的な力でエネルギーをカラダ全体に巡らすようにすることで、脳の循環も良くするように心がけましょう。

■内臓を温め、骨盤底筋群を鍛えて若々しく

「カラダとココロの養生法」

この時期は寒さが強いことから、自然に背中を丸めて、お腹を温めようとします。お腹が冷えるのは、外気温が低いこともありますが、近年ではストレスなどの緊張状態、食べ物や飲み物などの食習慣、運動習慣、環境要因などさまざまな要因が考えられます。ストレスとは、交感神経の活動が優位な状態ですが、内臓は一般的に副交感神経が優位なときに活動します。そのため、ストレス下では内臓血流が低下することで、内臓の働きを抑制し、お腹の冷えが現れると考えられています。さらに、ウリ類などのカラダを冷やすような食材やビールなど飲み物は内臓を直接冷やすため、内臓の活動低下を招き、お腹が冷えてしまいます。冷えた状態が長く続くと、内臓の血流を上げるために多くの血流を内臓に集めることになり、結果、全身が冷え、栄養が行き渡らなくなって老化が進んでしまいます。

また、お腹の周りには多くの筋肉が存在しますが、運動不足によりお腹の筋肉が硬くなると、血行が悪くなって冷えを招くとともに、骨盤底筋群などの筋力が低下し、骨盤内臓器(膀胱・子宮など)の機能低下を招くことにつながります。そのため、骨盤周りの筋肉である骨盤底筋群を鍛えることが大切です。骨盤底筋群の運動には、肛門に力を入れ、その状態を10秒くらい保つ運動を1日20〜30回程度行うのが効果的。立ちながら、寝ながら、座りながらなど、いろいろな体位で肛門に力を入れ、骨盤底筋群を鍛えましょう。

「食養生」

この季節の旬は牡蠣です。牡蠣は海のミルクとも呼ばれ、栄養満点。精力をつけ、不眠を治し、解毒や神経強化に効果があります。年齢とともに味覚が鈍感になりがちですが、これは亜鉛不足の可能性があります。特に牡蠣は亜鉛が豊富なため、味覚障害にも効果的な食材です。

イラスト=uatelier(イラストAC)

「お勧めのツボ」

大雪を乗りきるためのおすすめのツボに関元(かんげん)があります(図表1)。関元はおヘソから指4本分下に位置します。このツボは、生理痛や冷え性にも効果的で、内臓機能を高めてくれるツボであり、アンチエイジング効果が高いだけでなく、骨盤内臓器(子宮・卵巣・膀胱・腸など)の機能回復にも効果的です。イタ気持ちいい程度に10秒程圧迫し、5秒空けて5回程度刺激するようにしましょう。なお、触って冷たい場合はドライヤーで温めたり、お灸を行うことをお勧めします。

■腹筋・背筋トレーニング、カイロなどを活用して温めよう

【タイプ別・腰を鍛える方法】

この時期は、寒さが厳しくなるため、カラダの中心、特にお腹を温めようと、腰を丸める姿勢が自然と多くなります。お腹や腰周りには、栄養を消化吸収するための腸や、生殖器としての子宮・卵巣、さらには腎臓・膀胱など人間にとって大切な臓器が存在しています。そのため、お腹や腰周りを意識して温め、鍛えることが大切です。

一生懸命頑張りすぎている頑張り屋さんタイプの人は、寒さやストレスでお腹や腰周りが硬くなっているため、ストレッチなどで、筋肉を緩めることが大切です。また、腰やお腹にカイロやお灸をして温めることも効果的。特に丹田(たんでん)と呼ばれる下腹部や骨盤周りをカイロや腹巻などで温めることいいでしょう。

このタイプの人は特に腰周りの筋肉である腰方形筋や腹筋が緊張しているかもしれません。腰方形筋のストレッチは、椅子などに座り、伸ばしたいほうの手を耳につくまで真っすぐ上げ、反対側にイタ気持ちよい程度に腰が浮かないように注意しながら、わき腹を伸ばします。また、うつ伏せで寝た状態から、イタ気持ちよい程度に背中を反らして腹筋を伸ばしましょう。なお、これらのストレッチは息を吐きながら5〜10秒程度ゆっくりと、イタ気持ちいい程度に伸ばし、1日10回程度行います(図表2)。仕事や運動の終わり、お風呂上りに行うと効果的です。

【腰方形筋ストレッチ】.ぅ垢忘造蝓∧卻の腕を耳につくように真っ直ぐ上げる。⊂紊欧刃咾鬚修里泙淅紳佇向に倒し、5〜10秒キープ。左右交互に行う。
【腹筋のストレッチ】‐欧砲Δ追になり、⊂綢里魑こして後ろに反らし、5〜10秒キープ。10回ほど行う。

生活リズムの乱れによっておこる生活習慣タイプの人は、食生活を見直す必要があります。カラダを温める食べ物や消化吸収が良い食べ物を摂取しましょう。冬に旬を迎える季節の食べ物や根菜類はカラダを温めてくれる食材ですので、積極的に摂るようにしましょう。ダイコン、キクイモ、カブ、レンコンなどが効果的です。根菜は土の下で育つ野菜ですが、気温が下がる秋から冬にかけて旬を迎えるものはその成長が遅くなり、じっくり時間をかけて育ちます。そのため、大地のミネラルをたっぷり蓄え、おいしさだけでなく栄養価も高くなるのです。ちなみに、ミネラルには、体内のタンパク質を熱に変えてカラダを温めるという働きがあります。また、土の上で育つ瑞々しい葉野菜と違い、根菜には水分が少ないことも、カラダを温める働きにつながっています。

■内臓機能低下は冷えを招き、生理痛や尿を引き起こす原因に

年齢による加齢タイプの人は、お腹や腰周りの筋肉が低下しています。腹筋や背筋などの筋力、さらには体幹トレーニングなどを積極的に行い、体幹部の筋力強化を行いましょう。

腹筋は、ヒザを曲げて仰向けで寝た状態から、片方の足を真っすぐ伸ばし、その足を見るような形で上体を縮めます。背筋は、うつ伏せで寝た状態で、右手と左足のように交互の手足をそらします。いずれの筋トレもそのままの状態を5〜10秒キープする運動を1回とし、合計1日10回程行いましょう(図表3)。

【腹筋トレーニング】ゞ銚けに横になり、ヒザを立てる。∧卻の足を上に上げ、その足先を見るように上体を縮め、頭を起こして5〜10秒キープ。左右交互に10回行う。
【背筋トレーニング】 ,Δ追せに寝る。右手と左足のように、それぞれ反対の手足を持ち上げ上体を反らし、5〜10秒キープ。左右交互に10回行う。

なお、自分のカラダのタイプに関しては、カラダの状態を入れるだけで簡単にわかる無料アプリYOMOGIを利用すると便利です。月に1回(毎月10日まで)入力すると、あなたに合ったその月の養生法が送られてきます。

大雪は雪が本格的に降る時期です。身体活動は抑制され、何もかもが動きをひそめがちに。特に内臓機能が低下すると、生理痛や頻尿など骨盤内臓器に関連する症状に影響が表れやすいので、お腹周りを中心に温めるようにしましょう。なお、内臓を温めるにはお腹を温めるだけでなく、食事や運動習慣などもとても大切です。生活習慣から改善をめざしましょう。

「大雪の特徴」

●心身の症状
カラダ:背中が丸くなる、循環が悪い、カラダが冷える
ココロ:脳の活動が低下する(ボーッとする)

●季節に多い症状
腰が曲がる

●心身の養生法
腰を鍛える(ストレッチと運動)、根菜類を摂る

●食養生に効く食材
牡蠣・ネギ

●ツボ
​関元(かんげん)

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伊藤 和憲(いとう・かずのり)
明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授
鍼灸学医学博士・全日本鍼灸学会理事。同大学附属鍼灸センター長。トリガーポイント鍼治療の第一人者であり、慢性痛の緩和治療に精通。現代女性のための、東洋医学に基づく心身のセルフケアも指導している。
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(明治国際医療大学大学院/養生学寄付講座教授 伊藤 和憲 写真=iStock.com)