無人島を買おうとする中国人の不気味なエピソードとは(※画像はイメージ)

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 前回の記事では宮古島における「静かなる侵略」をご紹介したが、奄美・加計呂麻島でも同様の事態が進行している。平野秀樹氏の『日本はすでに侵略されている』から、今回は無人島を買おうとする中国人の不気味なエピソードをご紹介しよう。

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「島を丸ごと買いたい」:奄美・加計呂麻島

 安全保障関連の国土買収は、奄美大島でも数年前から始まっています。表向きは大陸から友好平和を願う暖かい風という趣きですが、真の意図はまだよく見えてきません。

 2013年、奄美大島の地元紙・南海日日新聞に不可解な広告が載りました。

「山求む!」、「豊かな山林・原野求む。どんな山奥でも、条件が満たされていましたら買取もいたします。××不動産」

無人島を買おうとする中国人の不気味なエピソードとは(※画像はイメージ)

 広告主は奄美市内の小さな不動産会社で、いかにも唐突な珍しいメッセージでした。

「40年以上この新聞を読んでるけど、こんな広告を見たのは初めて。いったい何をはじめるつもりなのか?」

 地元の人もいぶかるように、今どき不人気な奥山の山林がほしいとはどういうわけなのか、リゾートか、それとも太陽光発電か、世界遺産登録を見据えた先買いか──いずれにせよスポンサーがついていることは間違いありません。

 地元住民がいぶかる目的不明の土地探し広告は、その後もさまざまな名目で登場しては、売却や買収話が持ち上がり、一時は鳴りをひそめたものの2017年ごろから再び蠢(うごめ)きはじめています。例えば奄美大島北部の龍郷町芦徳では、シンガポール系資本が海岸部の土地を買収し、14棟のヴィラの営業をはじめています。この年の夏、今度は上海から若い資産家と称する紳士が訪問しています。

南海日日新聞の紙面広告

「フィリピンの海に比べても素晴らしい景色と碧い海。ダイビングができる海沿いの土地を探してくれませんか?」

 10年ぶりに再開された奄美市日中友好協会のメンバーにそう依頼したそうです。そのため地元の不動産業界は活況を呈し、自動車販売店を畳んで不動産屋に看板を掛け替える人まで出てきました。

 また同じ頃、奄美大島の西隣に位置する加計呂麻(かけろま)島ではさらに大胆な買収話がありました。中国から訪れた男性5人の一行が、島の北端でミニバスから降り立つと、その中の一人が、目の前に広がる海を見ながら島の住人にこう話しかけました。

政治もメディアも伝えない。「国家の溶解」最新報告! 『日本はすでに侵略されている』平野秀樹[著]新潮社

「この島一つ買ったら、いくら?」

 男性が口にした「島一つ」とは、すぐ近くに見える江仁屋離(えにやばなれ)島という無人島のことではなく、面積7700ヘクタール、人口1200人が暮らす加計呂麻島全島そのもので、取り立てて冗談をいったふうではなかったそうです。

 ちなみに江仁屋離島は、陸海空の自衛隊が離島奪還訓練を行う場所で、大島海峡を隔てたその視線のすぐ先には奄美大島の西古見集落が見えます。この地区は現役国会議員の出身地でもあります。一行は、加計呂麻島で稼働している四つのキビ酢工場をめぐり、これらにも興味を示したそうですが、それにしても人口流出著しい加計呂麻島を丸ごと買ってどうするつもりなのか。まさかサトウキビ事業ではないはずです。

 天然の要塞、加計呂麻島は、もともと島全体が秘密の基地でした。山腹には日本軍の遺構がいくつも残っています。1905年、日露戦争での連合艦隊はここからバルチック艦隊との決戦に向かい、太平洋戦争では戦艦武蔵と大和が停泊しました。島北部の薩川湾は水深が深く、数十年前までは東シナ海と太平洋につながる海峡では随一の良港でした。島を丸ごと買いたいという背後には、やはり軍事面での意図がうかがわれます。

 奄美諸島は、地政学的には沖縄と並んで琉球弧の中で二大拠点に位置付けられます。直近の20年を振り返ってみても、周辺海域は波風穏やかではありません。東シナ海のガス田問題をはじめ中国との緊張を抱える最前線であり、2001年には北朝鮮工作船と海上保安庁の巡視船との銃撃戦も起きています。

 しかもここにきて、奄美大島における防衛強化が急速に現実化しています。2019年春までに新たに配備された560人は、北東部の地対空誘導ミサイル(SAM)の運用部隊と、南西部の地対艦誘導ミサイル(SSM)の運用部隊で、島に駐留する隊員数は一気に30倍になりました。関係者を含めると2千人の人口増です。

 高まる地政学リスクを背景に、奄美に自衛隊の重点配備を急ぐことは当然として、一方で、それとは逆のインバウンド振興も同時進行しています。国土交通省は7千人クラスの大型クルーズ船の寄港地として、奄美西端の西古見を選ぼうと前のめりです。この人口30人ばかりの小集落に数千人もの外国人(大半が中国人)を下船させ、そこから加計呂麻島や江仁屋離島を周遊してもらうという構想です。

 クルーズ船誘致に対しては慎重論もあり、2018年から町主催の白紙ベースの検討委員会がはじまりました。しかし、ここでも有識者に混じって国交省の職員は皆勤賞で、オブザーバーの立場にもかかわらず、寄港推進のトーンをつらぬいています。防衛相が自民党、国交相が公明党というように所属政党がちがうにしても、国策としては真逆の方向で、とても正気とは思えません。

 2019年夏、地元の瀬戸内町長がオーバーツーリズムなどを懸念し、誘致の断念を発表したのが救いですが、海岸線を狙っての爆買いは止まりそうにありません。

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 インバウンドに浮かれているだけでいいのか。そうした声は政治家からもメディアからもほとんど上がってこない。その陰で一体何が進んでいるのだろうか。

デイリー新潮編集部

2019年12月5日 掲載