握りをポンとつまんで、ぐびりと一杯。そんな幸せがここにある。

高級住宅地の多い世田谷には、近所の人が行きつけにするのはもちろん、わざわざ行きたくなる鮨の名店がそこかしこに。

芸能人もお忍びで通う隠れ家から、新店まで一挙に紹介しよう。



希少になったニ楴衒屬懸イ魴兢気垢襪桓膺
江戸のエスプリを頬張る幸せ『金多楼』

江戸前握りの伝統的な型ながら、手数が多く、今ではほとんど使う職人がいないニ楴衒屬懸イ魴兢機

シャリとネタが扇型になった姿勢のいい鮨を現出させるのは、三宿の住宅街に潜む鮨屋『金多楼』のご主人・野口四郎氏。

財界人や、著名人のファンも多い名職人だ。



左上から時計回りに、鯵、まぐろのヅケ、穴子、真子鰈

鮨はご主人と二代目の剛さんがネタによって握りわける。

艶やかなまぐろのヅケは、ねっとりとした旨みと清涼感のある青唐辛子の辛みが絶妙。

鯵は旬の走りの時期のみ皮つきで供す。酢で〆めてあるにも関わらず、血合の色が美しい。

煮あげた穴子は皮がブリンと弾け、淡雪のように口中で溶ける。桜色のガリはたおやかに甘く、後引く旨さだ。



ウニ巻き。海苔の香りとウニの香りが最高にマッチしている。

巻きもののウニは礼文島のエゾバフンウニを使用する。

利尻昆布を食べて育ったウニは、甘みが強く旨みも濃厚だ。

ポンとつまんで、熱燗をぐびりといきたいものだ。



丁寧に仕事を施したネタが行儀よく並ぶ

小ぶりな握りはどれもしみじみ旨く、「真っ当な江戸前鮨ここにあり」と得意満面で人に教えたくなる1軒である。




カウンターで腕を振るう店主・堀川さん
芸能人もお忍びで通う隠れ家的名店『鮨ほり川』

世田谷代田駅から徒歩10分ほど、梅ヶ丘通り沿いに佇む『鮨ほり川』は、隠れ家的な立地も手伝い、創業当時から現在も多くの業界人に愛され続ける名店である。

銀座などで修業を積んだ店主・堀川さんが28歳という若さで開業。老舗ながらもインスタでも情報を発信し、若い世代からも支持される。

店主の朗らかな人柄に引き寄せられるように、店内は常に賑わいをみせている。



その日味わえるネタを全て見せてくれる。豊富なネタから好きなものを選ぶのも楽しみのひとつ

『鮨ほり川』では、コースの用意はなく好きなものをお好みで注文するスタイルである。

席に着くと、その日味わえる旬の食材がズラリと目の前に並べられ、「今日はコレが美味しいよ」「光り物でおすすめは?」など店主と言葉を交わしながら、好きなネタを選ぶのだ。



最初に供される料理だけでもお酒がどんどん進んでしまう

その日味わうネタを決め終えた頃、運ばれてくるのはお通し3品。「もずくサラダ」、「米のかき揚げ」、「マスコ」など旬を取り入れた料理はお酒との相性も抜群。

また、お刺身を注文した人には、これに加えて長芋や水茄子など野菜の漬け物6種盛り合わせも供される。



好みのネタを選ぶ時間も楽しみのひとつ

もちろん『鮨ほり川』はコース提供ではないので、いきなり握りを注文するのも、つまみをいつまでも堪能するのも全て自由。大人の気ままな時間を楽しませてくれる場なのだ。

同店を訪れる人のお目当てにもなっている「あぶらかれい えんがわ」や、たっぷりと盛られる「生うに」などはもちろん、「めねぎ」や「エシャロットとうずら」といった野菜を使用した握りも豊富に揃う。



「とまととうふ鍋」(1人前1,600円)

また寒い時期にぴったりなのが、仕入れる魚介と野菜を組み合わせて作る小鍋料理。

一番人気は、通年味わうことができる「とまととうふ鍋」。

胡麻と梅酢を混ぜ合わせて作る出汁のなかに、えんがわ、トマト、とうふと言った具材がたっぷりと入っており、濃厚ながらもさっぱりとした味わいで、いつまでも食べていたくなるほど美味だ。



奥には座敷席も備え、宴会が行われることもしばしば

肩肘はって食べる寿司じゃなく、気軽に好きなものを好きなだけ食べたい夜には『鮨ほり川』を訪れ、季節の味わいを堪能してみてはいかがだろうか。


華やかで最高に旨い握りならこの新店へ!



カウンターとテーブル席を備える店内
金沢ネタが都内で味わえる新店『鮨割烹 鼓舞』

小田急線豪徳寺駅から徒歩3分。閑静な住宅街の一角に佇む『鮨割烹 鼓舞』。腕を振るうのは、職人歴25年以上の高徳建治氏だ。

『旭寿司』で江戸前寿司の基礎を学び、代々木上原の人気寿司店などを経て、石川県金沢市で寿司の新店がオープンした際、料理長として招かれた彼は、そこで「北陸の海の幸×江戸前寿司」という新たなジャンルを切り開いた。

その美味しさを多くの人に知って欲しいという想いで、2019年5月にオープンしたのがここ『鮨割烹 鼓舞』である。



「季節の限定コース」(1人前15,000円)※内容は日により異なる

大将・高徳氏が金沢で自ら開拓した独自の仕入れルートを駆使し、産地から直接仕入れる北陸の鮮魚は、他ではなかなか味わうことのできない一品ばかり。

甘海老よりも甘くねっとりとした食感が特徴の「ガス海老」や、富山県産のものを昆布締めにした「白海老」など、都内では出回ることの少ないネタの数々が次々に登場し、楽しませてくれるのだ。



「ガス海老」

なかでも「ガス海老」は足がはやく都内で味わえることはめったにない。

しかし、高徳氏がもつ強力な金沢港とのパイプによって、最後に引き上げられる網で取れたガス海老のみを送ってもらうことができ、新鮮なガス海老を味わえるのである。

この奇跡、味わわずにはいられない!



「ブリのすなずり」

都内の寿司店ではあまり注目されないネタだが同店の「ブリのすなずり」はぜひ味わっておきたい一貫。実は金沢では大トロよりもブリを注文する人が多いほど、ブリが美味しい土地なのだ。

そんな絶品ブリのなかでもたっぷりと脂ののった稀少部位・砂ずりを優先的に仕入れているのだから、食べずには帰れない。

冬に美味しさを増していくブリが、まるで大トロのような口溶けでサッと口から消えていく食感をぜひ体験してほしい。



豪徳寺駅から徒歩2分ほどの閑静なエリアに佇む

都内でここまで北陸の味を堪能できる場所は数少ない。

今後、予約の取れない名店になること間違いなしの『鮨割烹 鼓舞』は今がイキドキだ!




「返しはネタのダ質や種類イ砲茲辰栃僂┐襦廚犯口氏
無駄のない手仕事が生み出す端正な味わい『鮨いち伍』

2008年に世田谷の住宅街にオープンした『鮨いち伍』の店主・樋口達也氏がまだ駆け出しだった頃の話である。

樋口氏が鮨の道を目指すきっかけとなったのは、ある1冊の本だった。描かれていたのは、とある鮨店の人情味溢れる世界と奥深い仕事。鮨職人になり、ほどなくしてその店を訪れるが店主の気迫に圧倒されて終始委縮しっぱなし。

帰りがけ、店主に「お兄さんも鮨屋かい」とたずねられた樋口氏は驚いて「なぜわかったんですか」と聞いたところ「手を見ればわかる」という返事が。



左上から時計回りに、店主自慢の煮かき、京都のまぐろのヅケ、きすの昆布〆、鯵の棒寿司。おまかせコースから

前置きが少々長くなったが、ひと目で鮨職人とわかる手から生み出される握りは、見ためも風味もこのうえなく端正。

つまみにも丁寧な仕事が施されていて、実直な性格を窺わせる。

こだわりのシャリには赤酢と塩と砂糖を少々。おまかせとは別に、握り15貫のみのお寿司ひととおりコースも用意しており、握りにかける並々ならぬ思いを感じる。



「鮑のぶつ」。肝を醤油でのばして生姜汁を加えたタレでいただく



鮑の身に細かく刃を入れて食べやすく