最新刊『芸人と影』が話題のビートたけし

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 大阪市に住む小6少女が行方不明になった事件では、容疑者が「長く引きこもり状態だった」と報じられた。最近は引きこもっていた人物が事件を起こす例が相次いでいるが、新刊『芸人と影』を上梓したビートたけしは、親が子供に与える「1人部屋」が問題を助長していると指摘する。

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 最近、ニュースになることが多いのが「引きこもり」が関わる事件だ。川崎の20人殺傷事件もそうだし、それを見て元農水事務次官が自分の息子を殺しちまったって事件もあった。農水次官を務めたような超エリートが引きこもりの息子の暴力に怯えてたっていうんだけどさ。  

 報道によると、元農水次官の件じゃ、自宅の部屋とは別にウン億円もする別宅を息子に与えてたらしいね。まァ、そこまでじゃなくても、いまどきの親は子供を甘やかし過ぎてるよ。そもそも、どこの家も子供に当たり前のように「1人部屋」を与えてるのが間違いなんじゃないか。  

 ニッポン人はみんな「子供に1人部屋を与えてやりたい」って広い家を買おうとするけど、実はそれが「不幸の始まり」かもしれないぜ。だいたいオイラがガキの頃は1人部屋なんてあり得なかったよ。ただでさえ家が狭いうえに、オイラは末っ子だったんで、家の中に自由なんてカケラもなかったんでさ。

 なんせ8畳間に家族全員が詰め込まれてるんで、どこにいても親の目が届いちゃう。センズリどころか、エロ本を隠す場所すらなかったんでね。引きこもりたくても、引きこもれない状況だったわけだ。

 最近は自分の部屋にこもって、ネットで顔も知らないヤツラとばっかり話してるんだろ? それで部屋の前まで親がメシ運んできちまうから、安心して引きこもりになっちまう。オイラは悪さをすればメシも食わせてもらえなかったし、家の中でそういう当たり前のコミュニケーションがあったんだよな。

 狭い家じゃ何もできないから、自然と意識も外に向くんだよ。「友達と野球をやろう」とかさ。マジメなオイラの兄貴(北野大)だって、しょっちゅう外に出てたぜ。

 兄貴は本の虫で、毎日毎日遅くまで小さな灯りで小難しい本を読んでたもんだよ。だけど、オイラの家は親も兄弟も狭い部屋で一緒に寝てたんで、オヤジが「電気がもったいねェから消せ」ってうるさくてさ。しょうがないから、こっそり外に出て、街灯の下で夜中まで本を読んでたというね。

 理由はどうあれ、昔の子供ってのはとにかく家の中にはいたくなかったんだよ。早く自立して、1人暮らしをしたいって思うのが普通だったんでね。

 最近はなんでも“子供の権利を尊重する”って風潮だけど、それが裏目に出てる。いっそのことニッポンは「1人部屋禁止法案」を作るべきだね。子供からすりゃたまったもんじゃないかもしれないけど、きっと悪いほうには転ばないぜっての。

※ビートたけし/著『芸人と影』(小学館新書)より