J1リーグは、先週末行われた33節で、首位を行く横浜F・マリノスが川崎フロンターレを下し、FC東京が浦和レッズに引き分けたため、横浜の優勝が濃厚となっている。

 横浜の勝ち点は67。対する東京の勝ち点は64。勝ち点3差ながら、両者の得失点差は7あるので、東京が横浜を逆転するためには、来る7日(土曜日)に行われる直接対決で、東京が横浜に4点差以上の差を付けて勝利を収めることが条件になる。

 可能性は数パーセントしかないが、ゼロではない。想起するのは、チャンピオンズリーグ(CL)の第1戦を0-4で折り返したチームが、セカンドレグで逆転を狙うパターンだ。16-17の決勝トーナメント1回戦。0-4で敗れたバルセロナが第2戦を5-1とし、通算スコア6-5で勝利した一件がある。

 そのバルサは昨季の準決勝では一転、リバプールに第1戦を3-0で折り返しながら第2戦で4-0と敗れ、通算スコア4-3で敗れている。

 少し古くなるが03-04シーズンの準々決勝。ミラン対デポルティーボも思い出深い出来事だ。ミランが第1戦を4-1で折り返しながら、第2戦を0-4で敗れ、ひっくり返された一戦である。

 04-05シーズンの決勝、ミラン対リバプールも記憶に鮮明だ。リバプールが前半を0-3で折り返しながら、後半3ゴールを挙げ同点に追いつき、延長PKで大逆転勝利を収めた一戦である。

 東京は大逆転劇の主役になれるのか。

 東京のサッカーを一言でいえば堅守速攻だ。4-4-2の布陣をベースに2ラインのブロックを敷き、守りを固めながら、2トップ(ディエゴ・オリベイラ、永井謙佑)の破壊力に懸けるサッカーである。

 深みのあるサイド攻撃と高い位置からのプレスで攻撃的サッカーを貫く横浜と比較すれば、守備的と言わざるを得ない。33節までに奪ったゴールも46。横浜の65点に比べると3割も少ない。横浜の1試合の平均得点が約2点であるのに対し、東京は約1.4点だ。

 得点能力が低いにもかかわらず、最低でも4点以上の得点が求められている東京と、高い得点能力を誇るにもかかわらず、特段、得点を奪う必要に迫られていない横浜。それぞれがいま置かれている状況は、両者の普段のコンセプトと対照的な関係にある。

 そこで両者はどう出るのか。まず注目すべきは、東京の長谷川監督の采配だ。従来通り、けっして高くない位置でブロックを構えようとするのか。それとも一か八かではないけれど、普段より攻撃的なサッカーで高い位置からプレスを掛けに行こうすするのか。4-4-2ではなく、4-2-3-1とか4-3-3で、攻撃的な色を明確に押し出しながら戦おうとするのか。

 こう言ってはなんだが、東京は負けて元々だ。敗れても3位に転落することはない。来季のアジアチャンピオンズリーグの出場権もすでに獲得済みだ。捨てるものは何もない状況の中で、長谷川監督はどう出るか。どこまで普段とは異なるサッカーを見せることができるか。

 04-05の決勝戦。リバプールのベニーテス監督は後半、布陣を4-2-3-1からから3-3-3-1に変更。より攻撃的に出た。高い位置からプレスを掛けたことで、ミランの守備陣のミスを誘発した。

 いつもと同じ戦いでは奇跡は起きないと踏む。長谷川監督の采配には大胆さが不可欠になる。

 まさにその采配は注目されている状態にある。もしここで逆転勝ちを収めることができれば、いや、逆転できなくても、作戦が奏功し、試合を接戦に持ち込んだだけでもその株は一気に上がるだろう。監督としての名声を上げるチャンスなのだ。「次期代表監督に」の声が上がったとしても不思議はない。

 前半を3-0で折り返せば、無理に追加点を狙う必要性はなくなる。これもミランが後半、受けて立つことになった理由だ。中途半端な気分で後半を迎えたことも、この逆転劇を語ろうとした時、無視できない要素になる。

 いまの横浜と、その当時のミランとは、置かれた状況が似ている。特段、得点を奪いに行く必要性ないという点で一致する。普段通りの戦いを実践することは、思いのほか簡単ではない。そこで後手を踏むのか。いつも通り攻撃的に行けるか。こちらも監督の力の見せ所になる。ポステコグルー監督は、どのようにしてチームのモチベーションを高めることができるか。

 横浜対東京の一戦は、ずばり監督対決になる。それぞれの監督力が問われる一戦になる。心配されるのは前戦、対浦和戦で負傷し、途中退場した東京の2トップ(ディエゴ・オリベイラ、永井)だ。もしいずれかを欠くようになれば、東京は苦戦必至だ。しかし、開き直るチャンスでもある。「2トップにお任せ」的なサッカーから脱却するチャンスと捉えることもできる。

 04-05のリバプールではないが、前半から超ハイプレスを決めることができれば、試合はもつれるのではないか。面白くなるのではないか。どちらのファンでもない第3者としては、東京の変身に期待したい。