KPMGコンサルティング フィンテック・イノベーション ディレクター 東海林正賢氏

KPMGコンサルティングと慶應義塾大学FinTEKセンターは12月2日、日本国内の上場企業を対象に実施した、企業のフィンテック(Fintech)導入に関する実態調査の結果をまとめた調査レポート「Fintech Initiative 2030」を発表した。

同レポートは、国内の上場企業を対象に実施したアンケート調査の結果(170件)と、国内トップ企業の有識者11人へのインタビューで構成されている。

Fintechは一時期に比べると、報道も落ち着き、ブームが収まったかのように見えるが、実態はどうなのか。フィンテックへの投資について聞いたところ、過去3年間に1億円以上の投資規模と回答した企業は22.4%、今後3年間で1億円以上の投資規模を予定していると回答した企業は35.9%だった。一方、現状投資していないと回答した企業は35.3%、現状投資していないと回答した企業は33.5%だった。

こうした結果について、KPMGコンサルティング フィンテック・イノベーション ディレクターの東海林正賢氏は、「肌感覚に近い結果で、予想通り」と、日本においてフィンテックが進んでいない実情を明らかにした。

フィンテックへの投資状況 資料:『Fintech Initiative 2030』

また、フィンテックの活用およびデジタル化への中期計画やロードマップを策定しているかについて、策定していると回答した企業は9.4%にとどまり、65.3%の企業が策定していないと回答した。東海林氏は「フィンテックは3年から5年のスパンでとらえないと、効果が出ない」と指摘した。

フィンテックの活用によって期待することについては、新規事業の創出(37.1%)、顧客体験価値の向上(30.0%)といった事業への活用より、業務効率化(69.4%)を期待する企業が最も多かった。

フィンテック推進のための他社との連携においても、業務委託が48.3%、連携先の企業の業種の70.2%を占めており、「既存のITベンダーに業務委託する形の連携が多く、新しいことに取り組めてないことがうかがえる」と、東海林氏は見解を示した。

この結果について、東海林氏は「海外の企業は、新規事業の創出や顧客体験の向上といった本来のフィンテックのメリットに対する期待が高く、日本企業とは異なる状況。日本企業は、既存のITプロジェクトとフィンテックのプロジェクトがゴチャゴチャになっているのではないか」と指摘した。

フィンテックの活用により期待すること(複数回答) 資料:『Fintech Initiative 2030』

加えて、フィンテック領域に関わる技術への取り組みの状況としては、「関心があるが取り組んでいない」「企画検討中」が合わせて8割前後を占めていることがわかった。なお、IoTは12.9%、AIとロボアドバイザーは10.6%、APIは10.0%がサービス開始済みという回答が得られている。

フィンテック領域に関わる技術への取り組みの状況 資料:『Fintech Initiative 2030』

慶應義塾大学経済学部教授/慶應義塾大学FinTEKセンター 中妻照雄氏

東海林氏と共に調査を行った、慶應義塾大学経済学部教授/慶應義塾大学FinTEKセンターの中妻照雄氏は、調査結果について、「ある程度、予想できてはいたが、日本企業にはもう少しがんばってもらいたい。ただし、今回の調査によって、日本企業によるフィンテックの取り組みの実態を明らかにすることで、問題を提起したい。これが最初の一歩となれば、大きな意義があると言える」と語った。

慶應義塾大学では、フィンテック関連の講義を行っているが、中妻氏は「3・4年生から、フィンテックの講義を受けたのでは準備不足であることがわかった。そこで、1、2年生から、Python、プログラミング、機械学習などについて理解しておく必要があるとして、講義の提供を開始した」と話していた。