契約保留者選手名簿から外れたウラディミール・バレンティン【写真:荒川祐史】

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バレンティンは左翼が本職だが、鷹ではグラシアルが左翼を守る

 2日にNPBから公示された契約保留者名簿。そこからヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手が外れた。3年連続日本一となったソフトバンクが獲得に興味を示しており、ソフトバンクの三笠杉彦GMも「興味は持っています」と関心を隠さない。

 2011年にヤクルトに入団したバレンティン。2013年にはプロ野球記録となるシーズン60本塁打を記録した。今季も33本塁打を放ち、4年連続30本塁打。2011年からの9年間で8シーズンで30本塁打超を放ってきた。今季で国内FA権を取得し来季からは日本人扱いとなるため、外国人枠を気にせずに起用できるところは大きなメリットになる。

 ただ、ソフトバンクにはデスパイネ、グラシアルの2人の強力な助っ人がいる。2人も契約保留者名簿から外れたが、これはキューバ政府との交渉に時間を要するためで、残留が濃厚だという。バレンティンはヤクルトで左翼を守っているが、ソフトバンクはグラシアルが左翼を中心に守る。指名打者はデスパイネだ。

 バレンティンを左翼に入れると、グラシアルを右翼か三塁ないし一塁に回すことになるか。左翼の守備力には不安が残る。かといって、バレンティンをDHに入れると、デスパイネをどう起用するのか。バレンティンが加わることで、起用法は難しくなる。

 ただ、この様々な起用法を考えられる、というのが、ソフトバンクのフロントの思惑だ。三笠GMは「レギュラーがガチッと固まっていてフル出場できるのがベストかもしれないが、レギュラー全員がフルに出られることを前提に編成はしない方がいいと思っている。主力、外人含めて、状況、コンディションに応じて使っていけるようにと考えている」と語っている。

 助っ人といえども、常にコンディションを見極め、調子のいい選手を使っていく。レギュラークラスを9人揃えるのではなく、そのレベルの選手を10人、15人、20人と揃えて、柔軟に選手を起用し、常時、高いレベルで状態のいい選手を並べられる陣容にする。それが、ソフトバンクのフロントの狙いだ。

若手の出場機会減少を危惧する声も、三笠GMは「リーグ優勝、日本一を担うレベルになるには時間がかかる」

 確かに、バレンティンが加わることによって、将来を担う若手の出場機会が奪われるという危惧はある。三笠GMも「補強によって若手の出場機会を削ぐという側面はあります」と認めている。

 今季は怪我人続出の中で若手の奮闘により、優勝争いを展開することができた。だが、三笠GMは「中長期の編成の算段としては、今の野手の次を担う選手がリーグ優勝、日本一を担うレベルになるには時間がかかると思っている」と見ている。

 来季のリーグ優勝奪還はもちろん、常勝が義務付けられているソフトバンク。若手の育成は重要ではあるものの、目の前のシーズンでも勝たなければならない。勝利と育成。二律背反の2つの目的を成し遂げるために「いかに短期的な視点で補っていくか」(三笠GM)を思案して補強に動いた。

 出場機会を与えられるものではなく、奪うものだというのが、そもそものソフトバンクの考え方。多くの実力者がいる中で台頭し、ポジションを奪い取った選手こそが、三笠GMの言う「リーグ優勝、日本一を担う」レベルの選手となれるということだろう。

「若手の出場機会を削ぐという側面はありますけど、高いレベルで柔軟に戦えるチームにする」。日本人扱いということで外国人枠を気にせずに起用できる点も、編成上のメリットになる。一見すると理解し難いバレンティンの獲得。そこには常勝軍団ソフトバンクなりの思惑と狙いがある。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)