三池淵(サムジヨン)郡を視察した金正恩氏(2018年10月30日付朝鮮中央通信)

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韓国で教育を受けた人なら、中江鎮(チュンガンジン)という北朝鮮の地名を知っているだろう。今の慈江道(チャガンド)にあるこの町では、1933年1月に氷点下43.6度という、朝鮮半島の気象観測史上で最低気温を記録している。地理の教科書にも掲載され、1990年代まではテレビやラジオの天気予報でも中江鎮の天気が放送されていた。

そこまではいかずとも、北朝鮮の北部山間部は最低気温が氷点下30度近くになるなど、猛烈な寒さに襲われる。それだけあって、この地域に住む人々にとって、越冬準備は命の問題に直結する。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋は、最近になってこの越冬準備にかかる費用が急増していると伝える。数年前までは薪、冬服、家の修理、そして大量にキムチを漬けるキムジャンなどの費用として、4人家族の場合、100万北朝鮮ウォン(約1万3000円)から150万北朝鮮ウォン(約1万9500円)ほどかかっていた。

平均的な4人家族の1ヶ月の生活費が50万北朝鮮ウォン(約6500円)であることを考えるととてつもない額だが、それが今では300万北朝鮮ウォン(約3万9000円)から350万北朝鮮ウォン(約4万5500円)もかかるようになった。

情報筋はその理由を次のように説明する。

「越冬準備はキムチ、薪、そして冬服をまず考えがちだが、年を経るにつれ、キムチを漬ける量は減り、薪より電気を使う温熱器具をまず用意するようになった。寒くなると市場でインナーや冬服を買う程度だったのが、今では電化製品の購入が増えて越冬準備に使う費用も増えた」

市場では、ヒーター、温風機、電気カーペット、電気毛布など、様々な暖房器具が売られている。

また、かつてはトラックで運ばれてくる大量の白菜を使い、家族総出で何トンものキムチを漬け、冬の保存食としたものだが、今では市場で365日いつでも買えるようになったため、その必要性が低下したというのだ。また、火力の強い薪の需要は依然としてあるものの、切り出し禁止令なども影響して以前ほどではないようだ。

ちなみに、練炭だけで春まで過ごすには1.8トンが必要となり、その費用は50万北朝鮮ウォン(約6500円)。薪なら2.5立米が必要になるが、費用は練炭の半分程度で済む。

一方で、電気毛布が3時間から5時間ほど使える50ワット型のものが300元(約4670円)。一般家庭なら数枚が必要となり、初期費用はかなりのものになるが、一度買えば繰り返し使えるというメリットがある。

北朝鮮では、国際社会の制裁で外貨不足、燃料不足に陥り停電が頻繁に起こっている。当局は、非常に強硬な省エネ策を打ち出しているが、ソーラーパネルなら問題ないということだろう。

オンドル(床暖房)による一酸化炭素中毒での死亡事故が相次ぐ中、電気ならその心配もないというわけだ。

(参考記事:「焦げ臭い匂い取り締まり班」の活動を妨害する知人の犯罪