福岡県内の土木現場で働いていたベトナム人技能実習生のグエンさん(24)=仮名=は仕事でけがをした上、雇用主の建設会社とトラブルになり、北九州市の労働組合の施設に「保護」されている。けがの後、風邪で仕事を休んだところ「解雇を示唆された」と、会員制交流サイト(SNS)を通じて外部に助けを求めた。会社側は西日本新聞の取材に対し、グエンさん側の主張の多くを否定し、解決には至っていない。失業状態となって9カ月。先の見えない日々が続く。

 グエンさんは1月、同県内の道路建設現場で工事中によろめいて転倒。側溝の型枠に残されていたくぎが手に刺さり、病院で1週間超のけがと診断された。

 労働安全衛生法では4日以上の労働災害は遅滞なく労働基準監督署に報告する義務があるが、グエンさんが勤める建設会社は報告しなかった。労基署は、労災を隠したとして同法違反容疑で会社と社長を書類送検。社長は「義務を知らなかった」と説明し、検察は証拠不十分で不起訴とした。

 グエンさんによると、けがの後、風邪で休むと社長は「(ベトナムへの)帰りの飛行機代を差し引くので最後の給与はない」と解雇を示唆。思い悩んでSNSに投稿した。外国人労働者問題に携わる札幌の支援者の目に留まり、労働組合「ユニオン北九州」(北九州市)に連絡。ユニオン関係者が2月、会社の寮からグエンさんを連れ出した。一緒に働いていたベトナム人男性(26)も数日後、寮を出てユニオンに保護された。

 2人は2018年に来日し、九州豪雨の被災地でも河川の復旧作業に従事した。その際もグエンさんはフォークリフトに接触して負傷、もう1人の男性も長さ約2メートルのコンクリートブロックが足に落ち、けがをした。2人とも数日〜5日間、仕事を休むことになり「その分給料を減らされた」という。ユニオンが「当時も労災を隠したのではないか」と問い合わせたが、建設会社は元請けに「仕事を休むようなけがではなかった」と説明しており、言い分はすれ違っている。

 今は別の実習先を探す2人は、西日本新聞の取材に「毎日現場でしかられた。もう少し優しくしてほしかった」と肩を落とす。

 福岡労働局によると、18年の実習生の労災(休業4日以上)は同県内で26件発生し、このうち製造業が14件、建設業が7件。ユニオン北九州の本村真委員長は「氷山の一角だ。受け入れる能力が十分でない零細業者で問題が多発している」と言う。グエンさんの会社も従業員は数人規模。本村さんは「受け入れ要件を厳しくするなど改善を促さない限り問題は続く」と訴えている。 (竹次稔、山下航)