海外では家政婦の雇用や外食化が進んでいるのに、日本では家事のアウトソースが「びっくりするぐらい進まない」という筒井淳也先生。いったい何が家事の効率化を阻んでいるのでしょうか。海外の共働き家庭と比べてみると、驚くべき差が見えてきました。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/grinvalds)

■仕事も家事も「ワーク」と捉える意識を

女性の社会進出が進むにつれ、海外では家事をアウトソースする家庭も増えてきました。欧米ではプロのお手伝いさんが活躍していますし、アジア諸国では外食産業がますます盛んになっています。

なのに、日本ではいまだに料理も掃除も自分でやるという人が多数派。海外に比べて労働時間が長く、家事に割ける時間は決して多くないはずなのに、それでも自力でやろうとするのはなぜなのでしょうか。

まず大前提として、家事は「仕事」です。日本では、ワーク・ライフ・バランスの「ワーク」を家庭の外での労働、「ライフ」を家事などの家庭生活と考える人が少なくありません。しかし、本来の「ライフ」は、仕事と家事以外の“人生を楽しむ時間”のことなのです。

会社では仕事、帰宅後は家事という生活では、1日の時間すべてがワークということになってしまいます。特に、家事分担ができていない共働き家庭では、夫はライフを楽しめるのに妻はワークばかりという不公平な状況が生まれます。まずはきちんと家事分担をして、夫も妻も平等にライフを楽しめる時間をつくりたいものです。

同時に、仕事でも家事でも、「ワーク」はできる限り効率化することをおすすめします。家事の効率化にはアウトソースも含まれますが、日本ではこれがなかなか進みません。その原因の一つが、先述した家事を仕事として認識していないことにあるのです。

■同じ献立を3日続ける超シンプル家事

家事のアウトソースが進まない理由の2つ目に「完璧主義」があげられます。日本の、特に女性は家事に求める品質が世界一高いと言われます。例えば欧米の共働き家庭では、自炊であれお手伝いさんの料理であれ、夕食のメニューが3日間同じということもよくあります。

ホームパーティーや記念日など特別な場合を除いて、自宅で家族だけで食べるなら、味や見た目にもそれほどこだわりません。普段の食事に高い品質を求める人は、外食するかデリカテッセンなどで買ってくるのが一般的です。

お弁当についても同様です。日本では彩りや栄養バランスを考えたり、子どもにキャラ弁をつくったりと手間をかける人も多いですが、海外ではリンゴ1個、ジャムを塗った食パン1枚ということも。買い物や料理、後片付けなど一切の手間を省いた、非常にシンプルな食生活と言えるでしょう。

もちろん日本でも海外と同じ生活をすべきだとは思いませんが、外での仕事を持っている以上、家事にもある程度の質低下を許す割り切りは必要でしょう。自分の許せる範囲内で、できる限り家事をシンプルにして、その分の時間をライフに回してはどうでしょうか。

こうした生活スタイルが広まれば、日本でも家事のアウトソースが進むかもしれません。アウトソースの第一目的はライフの時間を確保することであり、完璧な家事をしてもらうことではない──。共働き家庭の多くがこう考えるようになれば、意識面でのハードルはかなり低くなるように思います。

■働き方改革に次いで「家事改革」が必要

近年、会社での労働に対しては働き方改革が叫ばれていますが、家庭での労働に対しても「家事改革」が必要だと思います。理想を言えば、仕事も家事も自由時間も全部楽しいのが一番。でも、現実はそううまくはいきませんから、せめて仕事と家事を精いっぱい効率化して、自由時間を増やす努力をしていただきたいのです。

手前みそで恐縮ですが、私はこの家事改革を推進する「ゆとりうむ」というプロジェクトに参加しています。家庭内のさまざまな仕事を効率化して、人生に自由な時間、つまりゆとりを生み出そうという試みです。住宅メーカーやキッチン用品メーカーなどさまざまな企業の協賛を得て、この夏から活動を開始しました。

今の日本では、家事のアウトソースはまだ一般的ではありません。しかし、共働き家庭は増加を続けています。この現状に即した解決法として、少しでも家事の効率化をサポートできたらと思っています。完璧とは言えなくても、そこそこの質を維持しながら効率化できる方法もきっとあるはずです。

■他人が家の中に入ることに抵抗の意識も

さて、日本で家事のアウトソースが進まない3つ目の理由は「他人が家の中に入るのが嫌」という意識です。近年は核家族化が進み、家の中にいるのは両親と子どもだけという家庭が増えています。そこに他人が入ってくるのは抵抗があるという人も多いでしょう。

かつては、親戚や配達業者などが勝手口から自由に出入りしていた時代もありましたが、今はセキュリティ意識もかなり高くなりました。また、お手伝いさんにプライベートを知られたくない、散らかった家の中を見られたくないと考える人も少なくありません。

「今日はお手伝いさんが来るから」と、いつもより片付けに励むようでは、せっかくのアウトソースも本末転倒。ただ、これらの意識は信頼関係さえできれば解決するはずです。

■育児支援に加えて家事支援があるべき

もう一つ、日本ではまだ家事代行のコストが高いことも原因に挙げられます。特に質の良いサービスは高額ですから、共働き家庭の多くが「こんなに払うなら、ゆとり時間を犠牲にしても自分でやったほうがいい」と考えても不思議ではないでしょう。

理想は、所得が高い人も低い人も等しく利用できること。共働きやワーク・ライフ・バランスを推進するのなら、本来は育児支援に加えて家事支援もあってしかるべきだと思います。

繰り返しになりますが、日本で家事のアウトソースが進まない理由は、_隼を「ワーク」ではなく「ライフ」と捉えている、家事に完璧さを求める人が特に女性に多い、B梢佑鵬箸貌られたくない、ぅ灰好箸高い、の4つが考えられます。

いずれも、解決にはまだ時間がかかるでしょう。まずは家事を「ワーク」と捉える意識を持ち、効率化を図るための家事改革や、夫婦間での家事分担を進めていただきたいと思います。そうすれば、本当の意味での「ライフ」の時間も、少しずつ増えていくのではないでしょうか。

自分のために使える自由時間、あるいは家族とともに過ごす自由時間は、人生をより楽しくしてくれるもの。そうした意味でも、「ライフ」の時間をどう確保するかは、今後の共働き社会において重要なテーマになっていくだろうと思います。

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筒井 淳也(つつい・じゅんや)
立命館大学教授
1970年福岡県生まれ。93年一橋大学社会学部卒業、99年同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得満期退学。主な研究分野は家族社会学、ワーク・ライフ・バランス、計量社会学など。著書に『結婚と家族のこれから 共働き社会の限界』(光文社新書)『仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか』(中公新書)などがある。
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(立命館大学教授 筒井 淳也 写真=iStock.com)