菩提寺の「納骨させないぞ」は法的に有効かどうか弁護士に聞いてみた

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先日、「教えて!goo ウォッチ」で公開した「無宗教での葬儀が増えている理由と無縁墓の増加とお寺の経営」という記事では、檀家制度が崩壊したことでお寺の経営が行き詰まり、その結果、檀家とトラブルが増えていると言及されている。さらには、檀家とのトラブルにおける恒例のワンシーンとして「菩提寺の言うことが聞けないなら納骨させないぞ」という決り文句も紹介されている。そこで、今回はこの「納骨させないぞ」が法的に有効かどうかや、その対策などを富士見坂法律事務所の井上義之弁護士に聞いてきた。

■そもそも菩提寺が納骨を拒否することは許されるのか?

「墓地、埋葬等に関する法律の13条は『墓地、納骨堂または火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵または火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない』と規定しています。墓地の管理者は『正当の理由』がない限り納骨等を拒否できないものとされています」(井上義之弁護士)

正当な理由があれば納骨の拒否は認められるという。

■納骨拒否が認められる正当な理由1:物理的に余地がない、墓地管理に支障をきたす

「スペースの都合など、墓地の管理上やむを得ない場合は『正当の理由』となり得ると解されます。例えば、神戸地裁平成5年7月19日判決では、墓埋法13条の『趣旨に照し社会通念により判断すべきであるが、具体的には新たな埋葬等を行う余地がないこと、申込者が墓地等の正当な管理に支障を及ぼすおそれがあること等の場合』に正当の理由があると判断されています」(井上義之弁護士)

そもそも物理的に納骨のスペースがない場合は、納骨の拒否は認められるとのこと。また墓地の管理に支障をきたす場合も拒否が認められる。これらは仕方がないだろう。

■納骨拒否が認められる正当な理由2:宗教上の理由

「津地裁昭和38年6月21日判決では、寺院墓地に先祖の墳墓を所有する者からの埋葬蔵の依頼がある場合に、管理者はその者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができないとしつつも、異宗の典礼の施行を条件とする依頼あるいは無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼に対しては自派の典礼施行の権利が害されることをもって埋葬等を拒否する正当の理由にあたる旨判断しています。ちなみに仙台高裁平成7年11月27日判決でも同義の判断が出ています」(井上義之弁護士)

既にその寺院にお墓がある場合、改宗や離檀をしていたとしても納骨拒否はできないという。ただし法事法要等を改宗後の典礼にのっとったり、あるいは無典礼という条件付きの納骨の依頼であった場合は納骨拒否の正当な理由になるという。

■高額なお布施を要求され、それを支払わせるために「納骨させないぞ」と言われた場合

「菩提寺から合理的な理由なく極めて高額なお布施を要求されても、檀家は慣習上定まった額を超えるお布施を支払う法的義務はないと思います。そして支払いを事実上強制するために『納骨させないぞ』と言ってくるようなケースについては、民事上は不法行為、刑事上は恐喝等にあたる可能性もあり得るでしょう」(井上義之弁護士)

払う必要はない上に、そもそも発言自体に違法性があるとのこと。ではこのような事態にはどう対応すればいいのだろうか。

「2つの方向性が考えられます。1つは、檀家契約の継続を前提として、菩提寺側と話し合いをし、解決を目指す方向性です。裁判手続きを利用することも可能ですが、長年の付き合いのある菩提寺と正面から対立するのは弊害もあり、まずは当事者同士でまたは代理人弁護士に依頼して十分な協議を尽くすべきでしょう。葬儀や埋葬を巡る法律問題は影響が末代まで及ぶ事柄であり、かつ、専門的な内容を含みますので、専門家に任せるのが安心かと思います。