ラグビー南アフリカ戦より

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 下馬評を覆し、大盛況のうちに幕を閉じたラグビーW杯。なかでも、大迫力の“ハカ”で日本中を魅了したのが、ニュージーランド代表「オールブラックス」だった。だが、今大会では惜しくも3位に終わった「常勝軍団」は、母国のメディアからこんな批判を浴びせられていた。――敗因はSNSのやりすぎじゃないか?

 もちろん、SNSがW杯の盛り上げに貢献したのは事実だろう。大会のSNSは前回の4倍超に当たる17億ビューに達し、ファン層の拡大にひと役買ったのも間違いない。しかし、ニュージーランドの地元メディア「stuff」は、〈選手がSNSに取り憑かれ、集中力を欠いた〉ことでオールブラックスが優勝を逃したと指摘するのだ。曰く、

〈南アフリカ代表と対照的に、多くのオールブラックスの選手たちはW杯の最中、あらゆる瞬間を閲覧者に逐一報告していた〉〈SNSはプロスポーツにおける新たなアルコール。コーチはその使用法について教育を施す必要がある〉

ラグビー南アフリカ戦より

 選手のインスタを覗くと、ディズニーシーや竹下通りでの記念写真がアップされている。ラグビー界のスターが日本を紹介してくれたことは嬉しくもあるが、それとは反対に、SNSの使用を制限して栄冠に輝いたのが南アだった。

「南アのコリシ主将は優勝後の会見でこう語りました。“エラスムス監督との初めてのミーティングで、フィールド外のことではなく、ラグビーを最優先させろと言われた。それでSNSに没頭するのをやめたんだ”、と」(スポーツ紙記者)

 スポーツライターの直江光信氏によると、

「SNSが勝敗を分けたかはともかく、敗れれば些細なことまで追及されるほど、オールブラックスに対する母国の期待は大きいんです。準決勝に敗れた翌日にはショックで学校を休む子どもまでいたとか。また、チームの伝統として、黙々と仕事をこなし、最高のパフォーマンスを見せることが求められてきた。だからこそ、“SNSなんかにうつつを抜かして”と批判されたのではないでしょうか」

脳に疲労が蓄積

 注目度で群を抜くオールブラックスのメンバーは、W杯期間中もスポンサーのイベントに引っ張りダコ。ハンセン監督に至っては、キャンプ地の別府市の警察署で一日署長まで務めている。こうした過密スケジュールを問題視する声もあるが、

「SNSが南アとニュージーランドの明暗を分けた可能性はあると思います」

 と語るのは、おくむらメモリークリニックの奥村歩院長である。

「一流のアスリートは試合前に外部からの刺激を遮断して精神を統一します。一方で、SNSの利用は常に新たな刺激を取り入れる行為に他なりません。過剰な情報によって脳の前頭前野の機能がフリーズすると、処理能力が低下して、段取り良くパフォーマンスすることができなくなるのです」

 さらに、日本デジタルデトックス協会で講師を務める森下彰大氏も、

「休憩時間にSNSを閲覧していると、体は休めていても脳に疲労が蓄積して集中力が落ちてしまう。一瞬の判断が勝敗を分けるスポーツでは決して無視できない問題でしょう。加えて、チームワークへの悪影響も考えられます。特に、W杯のような代表チームによる短期決戦の場合、チームメイトとの親密なコミュニケーションが不可欠。SNSでのやり取りばかりに気を取られていればチームの連帯感も築けません」

「SNSが敗因」というのもあながち的外れな批判ではないようだ。常勝軍団は対戦相手よりも前に、SNSを封じるべきだった。

「週刊新潮」2019年11月21日号 掲載