「ひと言で言ったら、何もしていないなと思います」

 浅野拓磨(パルチザン・ベオグラード)は開口一番、自身の不甲斐なさを吐露した。

 惨敗に終わったベネズエラ戦。髪を金色に染め上げた背番号15は、消化不良のまま、65分にピッチを後にしている。


森保ジャパンで初のスタメン出場となった浅野拓磨

 森保ジャパンでは待望の初スタメンだった。これまでのレギュラー組である南野拓実(ザルツブルク)や堂安律(PSV)らがこの試合には招集されておらず、浅野にとってはアピールのチャンスだっただろう。しかし、自身がピッチに立っている間に4失点。交代後に1点を返したことを考えれば、マイナスイメージはとうてい拭えない。

 サンフレッチェ広島時代に森保一監督に師事し、スタイルの体現者として、このチームの主軸になることが期待されていた。しかし、森保体制発足から1年あまり、”ジャガー”と呼ばれる快速ストライカーは、南野、中島翔哉(ポルト)の同級生コンビの活躍を尻目に、いまだそのポテンシャルを発揮できないでいる。

 森保監督の初陣となった昨年9月のコスタリカ戦ではピッチに立ったものの、その後は故障に苦しんだ。アジアカップメンバーに選ばれながらもケガで辞退するなど、主軸になるどころか、代表に定着さえできていない状況だった。

 それでも今夏、パルチザン・ベオグラードの移籍をきっかけに状態を高めると、10月のワールドカップアジア2次予選で、約1年ぶりに代表復帰。タジキスタン戦ではダメ押しとなる3点目を決めている。キルギス戦には出場できなかったとはいえ、森保監督の信頼を取り戻しつつあるなかで迎えた今回のベネズエラ戦だった。

 持ち前の快足を生かして観衆を沸かせる場面もあったが、目に見える結果は残せなかった。それゆえに漏れた冒頭の言葉だっただろう。もっとも浅野は、「攻撃陣含めて、全員で守るべきゴールを守れなかった」ことをこの試合の最大の課題に挙げている。

「守備から入った時の、チームとしてのイメージが合っていなかったのかなと率直に感じました。前から2トップがしっかり限定して、後ろもそれについていてくるという形を全員で意識していましたが、意識だけではなかなかうまくいかないのが、今日の試合だったと思います」

 プレスをかけに行っても取り切れない。あるいは、パスミスを繰り返してショートカウンターを浴びる。ほとんどぶっつけ本番で臨んだ急造チームのような編成では、連動性を望むことは難しかったとはいえ、あまりにも組織性に欠けた戦いぶりこそが最大の敗因だろう。

 一方で浅野が、もうひとつのテーマに掲げたのは、ボールを受けたあとのプレーだ。

「抜け出しに関しては僕の持ち味でもありますし、タイミングが合えばどんどんそのプレーは出していこうと思っていました。ただ、抜け出したあとのプレーというのは、もっともっとクオリティを上げていかなければいけない。トラップの質であったり、最悪でもシュートまで行くというのは、今の僕の課題かなと思います」

 たしかにチャンスはあった。鋭い飛び出しでラインの裏を突き、ゴールに迫る機会を何度か迎えている。

 しかし、いずれも相手DFに対応され、シュートには持ち込めなかった。わずかなミスも逃さないベネズエラ守備陣を、浅野はかいくぐることができなかったのだ。せっかくのスピードを生かすには、最後のクオリティの向上がテーマであり、浅野がひと皮むけるために求められるポイントとなるだろう。

 この日の浅野は、前半は鈴木武蔵(北海道コンサドーレ札幌)と2トップを形成し、後半は中島を背後に置いた1トップとしてプレーしている。よりのびのびとプレーできていたのは、後者だろう。2トップ時では、同タイプの鈴木と動き出しのタイミングがかぶる場面があり、やや窮屈そうにプレーしているように見えた。

 一方で後半、日本がペースを奪い返せたのは、ベネズエラのトーンダウンももちろんあったが、このポジション変更も無関係ではないだろう。浅野は自身のタイミングで飛び出してボールを引き出し、あるいは潰れ役となって中島のプレースペースを生み出す。その関係性は、この試合で見えた数少ない光明だった。

 つまり、浅野が今後ポジションを争うべきは、トップ下タイプの南野ではなく、CFの大迫勇也(ブレーメン)となる。

「僕自身、あそこのポジションでやることが一番得意。前半はボールが受けられないなかで、どうしても無駄な動きが多かった。その分、体力もなくなってきますし、スピードを生かしきれなかった場面も多かった。でも後半、ああいうポジションになったことで、やり切れた感はありましたね」

 ゴールもアシストもなかった。それでも浅野は、交代直前にわずかに爪痕を残している。

 相手を背負いながらもボールを収め、そのまま持ち上がり左に展開。再びボールを受けると強烈なシュートで相手ゴールを脅かした。とりわけ、相手を背負いながら前を向いた力強いプレーは、これまでの浅野にはなかなか見られなかったもの。東欧の厳しい環境に身を置きながら、浅野は着実に進化を遂げているようだった。

「まず自分のチームで結果を残すことが一番大事になってくると思いますし、それがないとこの舞台にはなかなか戻ってはこられないと思う。今日の敗戦はどうしても戻ることができないので、今日から自分の未来を変えていくしかない。そのために全力でやるしかないかなと思います」

 その言葉は危機感に満ちていたが、一方で有言実行の覚悟も備わっているようだった。

 すでに今の日本代表は、同世代が中心となっている。日本が誇る韋駄天は、先を行かれた同級生コンビに追いつくことができるだろうか。