招集されたものの出番は訪れず。後半の反撃に車屋の攻撃力は有効だったはずだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 もちろん監督には選手選考の全権がある。例えば森保一監督自身も、当時日本代表監督がハンス・オフトでなかったら、おそらく日の丸をつけることはなかった。イビチャ・オシム監督も、当初は千葉の教え子たちを軸にチーム作りを進めた。ただし嗜好が偏り、結果が伴わなければ、必然的に批判は倍加する。オフトは無名だった森保起用の正しさを結果で示したし、オシムもチームの進化の過程が見えたからファンも納得した。

 だが今回のベネズエラ戦で、森保監督の嗜好は完全に裏目に出た。俊足好きの同監督が2トップで裏を突く速攻を仕掛けようとしたのは、ここ数年ついて回った「大迫依存」へのひとつの打開策だったのだろうが、攻撃が単調になり質も伴わなかった。

 前半に一度、柴崎岳からのスルーパスで浅野拓磨が抜け出したが、先にボールを支配下に置きながらオソーリオに対処された。そもそも指揮官がどのレベルを想定して選手を試しているのかが疑問で「五輪では金メダル」「ワールドカップではベスト8以上」を狙うなら、目標に即した質を備えた選手を発掘テストしていく必要がある。

 もし今適材が見つからないなら未来の伸びしろに賭けるべきで、質に妥協は禁物だ。久保建英に守備面でのフィジカルが不足しているのは誰にでも分かることだが、それは時間が解決する可能性が高いし、欠点を補ってあまりある攻撃面でのプラス材料があるから経験させる価値がある。逆に絞り込まれた世界のトップレベルが競うノックアウトステージで、森保監督が好むスプリンターが輝けるスペースが見つかるのだろうか。

 さてU-22のコロンビア戦に続き最大の収穫は、親善ムードに覆われて来たキリンチャレンジに骨のある明らかな格上を招聘できたことだ。すでに日本は30分過ぎには完全崩壊に向かっていたので、指揮官は迅速に別のテストに踏み切るべきだった。誰もが憧れる対象だからこそ厳格な敷居が要るのだ。

 最大の謎は、攻めるしかない状況で車屋紳太郎が登場して来なかったことである。いったい森保監督は、左サイドバック(SB)に何を求めているのだろうか。決して誉められた出来ではなかった室屋成は、それでも右サイドにスペースが空けば、縦に仕掛けて中島翔哉の決定機を演出したり、自らシュートを狙ったりしている。

 だが先制シーンでロンドンに先にジャンプされ競りかけることもできなかった佐々木翔は、それ以上に左足でクロスが蹴れない。後半に3度フリーで受けるシーンがあったが、そのままスピードを緩め相手の帰陣を待ち、右に持ち替えて仕切り直しをしている。同じ局面で左利きの車屋がボールを持てば、確実に何度かは際どいシーンを演出できたはずだ。
 
 かつて都並敏史氏は、当時日本代表の森孝慈監督に「左SBをやりたい」と直訴したが「左でクロスを蹴れるようになったら考えてやる」と言われ、連日トレーニングに励んだという。同じく長友佑都もプロデビュー当時は「左足はまだしょぼいです」と笑っていたが、やがて精度を高めた。

 確かに人材難のポジションではあるが、現在広島で3バックの一角でプレーする佐々木が、日本代表の左SBの適任者に変貌していく時間と可能性があるのだろうか。やはりこのポジションはレフティを選択するか、酒井高徳の復帰を促さない限り、長友依存から脱却できそうにない。

 また絶望的な前半を経て、後半も36歳がゴールマウスに立ち続けるのも妥当な判断とは思えない。大ベテランは、今結果を引き出す飛び道具だ。それが機能しないなら、日常的に試合に出ている若いGKの可能性に託さなければ、公平な競争原理は成り立たない。

 不可解だらけの完敗から明るい材料を探すのは至難の業だ。それでも神戸でチームが不調な時にもコンスタントなパフォーマンスを見せて来た山口蛍と古橋亨梧は、今後もオプションとして割り込んでいける可能性を見せた。特に山口は、攻守両面の総合力を考えれば、ボランチの軸に復活しても不思議ではない。

文●加部 究(スポーツライター)

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