ベネズエラ戦で先発した中島もうまくFWを活かせず。ゴールを生み出せなかった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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[キリンチャレンジカップ2019]日本 1‐4 ベネズエラ/11月19日/パナソニックスタジアム吹田

 日本代表は11月19日、キリンチャレンジカップでベネズエラ代表と対戦。前半のうち4点を献上し、1−4という近年稀に見る惨敗を喫した。

 露呈したひとつの課題は、柔軟性のなさだろう。

 柔軟なポストワークで攻撃を牽引する大迫勇也が太ももの怪我から明けたばかりだったため今回は未招集で、代わりにベネズエラ戦では、鈴木武蔵、浅野拓磨というスピードが特長の選手が先発した。

 どうにかこのふたりを基準点としてゲームを組み立てようとしたものの、なかなかパスがスムーズに回らない。それもそのはずで、鈴木も浅野も、足もとでパスを受けるよりもスペースに走り込むのが得意なタイプなのである。
 
 大迫とはタイプが違うふたりに、ポストプレーを求めるのは難しい。後半途中から起用された永井謙佑も含めスピードが売りの選手を使うなら、そのストロングポイントを最大限に活かしたカウンターを徹底すべきだったのではないか。

 実際に、柴崎岳から浅野にスルーパスを通した14分、植田直通のフィードに浅野が抜け出した16分、中島翔哉からのパスで鈴木武蔵を裏に走らせた32分など、ビッグチャンスが生まれたのは、いずれもロングカウンターによるものだった。

 パスを回そうとすれば、ほとんどを相手に引っ掛け、どんどんリズムを崩していった。横パスをそのままかっさらわれるなど奪われ方が悪いから、守備になってもどうしても後手に回る。その結果、38分までに4失点し、前半のみで完全に勝負を決められたのだ。

 最前線に永井が入った14日のキルギス戦でも言えたことだが、大迫というポストワーカーがいない状況でもポゼッションにこだわるあまり、攻め手を失いゲームの主導権を相手に明け渡してしまう。つまり今の日本代表には、戦術的柔軟性がないのである。

 それはベネズエラ戦の2日前に広島でU-22コロンビア代表と戦ったU-22日本代表にも言える。
 
 システムこそ、A代表の4−4−2とは異なり、3−4−2−1が主体だが、つないで崩すというチームコンセプトは変わらない。

 しかしA代表と同様に、そのコンセプトに捉われ過ぎて、逆に自分たちの首を絞めている感は否めない。

 コロンビア戦では、上田綺世を先発させたが、鋭い飛び出しが得意なこのFWに、緻密なポストワークを要求しても、なかなかうまくいくはずはない。前線でタメが作れないからウイングバックの上がる時間もなく、結局は久保建英や堂安律の個人頼みの単調な攻撃ばかり。テンポの悪いパスワークに終始し、ボールロストを繰り返すと、47分と59分に被弾し、無得点のまま0−2で敗れている。

 この11月の3試合を見ると、日本代表の強化は進んでいるのかと疑問を抱いてしまう。A代表とU-22代表を兼任する森保一監督は「臨機応変」「対応力」という言葉をよくに口にするが、その点では両チームとも未熟だと言わざるを得ない。

 柔軟な戦い方を身に付けることが、今後のテーマのひとつになるのは間違いないだろう。

 取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)