【ソウル=桜井紀雄】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が日本との対立の「仲裁役」に米国を引き込もうと切った日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定というカードは、かえって「協定を維持せよ」との米側の強い圧力を招いた。

 トランプ米政権は、韓国に在韓米軍駐留費の大幅負担増も迫っており、安全保障協力での互いの不信感が高まる中、米韓同盟の亀裂だけが広がりつつある。

 「国防分野の話より、外交的に解決すべきものが多いだけに、外交的に解決できるよう努力してほしい」。韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は17日、タイ・バンコクでの河野太郎防衛相との会談でこう要請した。国防相としてできることの限界を自ら認めたことに等しい。

 もっとも文大統領が15日のエスパー米国防長官との会談で安保上、信頼できないとして輸出管理を厳格化した「日本と軍事情報の共有は難しい」と明言していただけに、国防相会談での平行線は目に見えていた。

 文政権にとって想定外だったのは、米側が「仲裁役」を拒みながらも外交・安保を担う高官が破棄決定を見直せと一斉に攻勢に出たことだ。韓国紙、朝鮮日報は16日付社説で「破棄カードに日本はびくともせず、韓米の信頼だけにひびが入る信じがたい事態となっている」と論じた。

 特に韓国内で持ち上がっているのが、米側が協定破棄と在韓米軍駐留費問題を結び付け、交渉が不利に進むのではないかという懸念だ。トランプ政権は韓国に現状の約5倍に当たる47億ドル(約5100億円)の負担を求めているとされる。15日のソウルでの安保協議でも「公平な分担」を求めた韓国側に対し、エスパー氏は「韓国は裕福な国で、もっと負担しなければならない」と主張し、両者の隔たりの大きさが露呈した。

 韓国大統領府報道官は「韓日関係に何の変化もなく、協定終了を覆せば、決定が慎重でなかったという話になる」と説明。文政権支持層が破棄決定を支持する中、日本が輸出管理措置で行動を示さなければ、韓国からは動けないという自縄自縛に陥っている。