知らないと損! 「サーフボード」と「浮力」の話

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「サーフィン」とは、「サーフボード」と呼ばれる板に乗り、波の上を滑るウォータースポーツです。

このように文章にすると当たり前のように聞こえるかも知れませんが、いざ挑戦してみるとなかなか思うように前に進むことができなかったり、ボードの上に立つことさえもできなかったりと、実に奥の深いスポーツが「サーフィン」です。

波乗りをするには字のごとく、「波」に乗らなくてはいけません。

今回は「波」に乗るための道具であるサーフボード(今回はショートボード)と、海の上で浮くために必要な「浮力」の2つをわかりやすく説明していきたいと思います。

「サーフボード」と「浮力」の関係性は?

波乗りをする上で、切っても切れないのが「浮力」の問題です。

普段生活をする中であまり馴染みのない言葉ですが、これは人間がサーフボードに乗り、沖にパドルアウトした際、海中に沈まないようにするための最低限知っておかなければならない事柄です。

またサーフィンを独学で始めた初心者が失敗することの多いポイントとして、経験者やサーフショップの店員の方にアドバイスを聞かず、デザインや形といった「見た目」だけで自分に合わないボードを選んでしまったばっかりに、波に乗ることすらできず、サーフィン自体を辞めてしまうといった話も多く耳にしますので、しっかり浮力についての知識をつけておきましょう。

プロサーファーの使用するボード

世界ツアーなどに参加する多くのトッププロサーファーが使用するボードは、基本的に操作性を重視するために浮力を少なくしているものが多いです。

一概に言えないものの、浮力が少なくても「プロサーファー」ですからパドルは速く、波に乗る技術も高いですが、そういったプロサーファーの使用するボードは趣味でサーフィンを始めたばかりの一般の方が容易に扱えるものではありません。

しかし、プロサーファーは魅せるサーフィンを本業にしている方々なので、サーフボードのデザインが先鋭的だったり、スポンサーのステッカーが貼ってあったりと、魅力的なボードを使用していることに間違いはありません。

また、プロが使用するボード形状としては、波の大きさや波のタイプに合わせて使い分けることが一般的とされており、1つのボードだけでツアーに参加しているわけではありません。

【波が大きいときの場合】

・ ボードの長さが長い。
・ ボードの厚みが薄い。
・ ロッカー(ボード全体の反り具合)がきつい。
・ レール(ボードの側面)の厚みが薄い。
・ テール(ボードの末端部)の幅が狭い。

【波が小さいときの場合】

・ ボードの長さが短い。
・ ボードの厚みが厚い。
・ ロッカーが緩い。
・ レールの厚みが厚い。
・ テールの幅が広い。

個々の波に乗る感覚や好みもあるため一概に言えませんが、以上の条件をクリアしたボードを使用していることが多いです。

初めに選ぶべきボードとは?

ではビギナーが選ぶべきボードとは、どのような形または浮力のボードでしょうか? 結論から言うと、プロサーファーが小さな波のときに使うような条件に近いボードを使用することをおすすめします。

・ ボードの厚みが厚いもの。
・ ボードの幅が広いもの。
・ ボードの長さが長いもの。
・ ノーズ(ボードの先端部)は細くなく、程よく幅のあるもの。
・ ノーズのロッカーが緩やかなもの。
・ テールの幅が広いもの。

おおまかに以上の6個の条件をクリアした「浮力」の多いボードであれば、比較的ビギナーでも波に乗ることが容易で、上達するのと早いとされています。

しかし、先ほども説明したプロサーファーが使用しているような形のボードではないため、見た目にこだわる方は気がひけるかもしれません。

なぜ6個の条件をクリアしたボードは「浮力」が多いのか

答えは単純で、ボード自体の面積が大きく、ボリューム(浮力)があるからです。

これは以前に「目からウロコ! 初心者必見サーフボードの選び方!」の記事でも説明しましたが、海の上に二隻の船が浮かんでいるとし、片方は10人が乗りもう片方は100人乗りました。

ではどちらの船の方が海の上を速く移動することができるでしょうか?

答えは簡単です。10人しか乗っていない船の方が速いです。

これはあくまで同じエンジン(パドルする力)の同じ場合に限ります。このように使用する人の体重よりも、ボードの「浮力」が多い方が海の上を移動するスピードが速く、パドル力の弱い初心者でも波に乗れる可能性が高くなります。また、パドルが楽になることで体力の消耗を防ぐことができ、長時間海の中に入って練習することが可能になります。

ビギナーだけではない! 中級者にもおすすめする理由

では「浮力の多いボード」は、ビギナーだけにおすすめするボードでしょうか?

また、中級者からたまに聞くことがある「浮力の多いボードはインチキなボードだ」といったマイナスイメージの意見は果たして合っているのでしょうか? 答えは「No」です。

10年前くらいまでは、まだミニボードという形のボードがあまり世に出回っておらず、ボードの長さは今よりも長く、浮力を表すリッター表示もないものが多く存在していました。そんな中サーフィン経験者なら誰もが知る老舗「チャネルアイランズサーフボード」からロブ・マチャドとコラボしたモデル「THE BISCUIT」が発表されました。

ロブ・マチャドが彼のスポンサーであるハーレーのオーストラリアツアー「Rip My Shredstik」の中でこのボードを開発しました。ツアー中に乗られたすべてのボードの中でも、THE BISCUITは自由性とルース性に優れ、小さい波でも1フィートくらい長めのボードに乗っている感覚になると言われています。

トロくて厚い波でもグイグイ加速し、テイクオフとスピード性能は抜群で、ワイドなラウンドテールは安定しながらもルースなライディングが可能でした。このようなインプレッションからもわかるように、浮力の多いボードは日本のような比較的波の大きな日が少なく、ビーチブレイクのパワーレスな波に適していると言えます。

浮力の多いボードを保有するメリット

・ メイン、またはセカンドボードとして保有することにより波の大小に関わらず「波乗り」を楽しめる。
・ パワーレスな波でもテイクオフできる確率が高いため、多くの波に乗ることが可能になる。
・ 波に乗る本数が増えることにより技の練習ができ、感覚を掴む確率が上がるため、上達スピードがアップする。

浮力の多いボードを選ぶことにより、上記のようなメリットを得ることができます。

今となっては、かつてカッコ悪いと見なす人もいた「浮力の多いボード」から多くのことを学ぶことができるため、世界的に人気の部類のボードカテゴリーとされています。

近年のサーフボード市場から見ても、ほぼすべてのブランドから浮力のあるボードがライナップされており、デザインも多種多様なものが多く、ボードの説明文を読むだけでもワクワクしてくることでしょう。

最後に

「サーフィン」が競技スポーツとなった現在、数多くのサーフボードが販売されています。

どれを選んでも一つ一つ違った乗り味を感じることができるため、自分の好きなサーファーまたはブランドから選んで問題ありません。

個性的な形をしたボードや派手なカラーリングをしたボードなど、見た目だけで判断せず、ショップの方や乗ったことのある人などにアドバイスを聞き、自身が乗りこなせるかどうか確認することが重要です。

また、一目惚れのように勢いでサーフボードを購入するのもいいですが、一度冷静になり「自分の技量にあったボード」なのかどうかを確認してから購入して海に向かうと、より良いサーフィンライフを送ることができるでしょう。