SoutaBank / PIXTA(ピクスタ)

写真拡大

◆授乳を通じて育児を考える「全日本おっぱいサミット」

 満員電車でのベビーカーやiPad育児など、子どもを持つ親に向けられる視線は厳しい。公共の場での授乳もそのひとつ。「目のやり場に困る」「人前でするものではない」といった批判が寄せられる。

 授乳を通じて育児を考えるイベント「全日本おっぱいサミット2019」が10月下旬、東京都渋谷区で行われた。2017年の初回以来、今年で3回目を迎える。

 テーマは、「広い宇宙に、ママひとり?公共の場での授乳問題と密室育児」。とりわけ母親はひとりで子育てを頑張りがちだ。その間は周りから切り離されたと感じ、孤独感を抱きやすい。

 密室での孤独な育児は親にどのような影響を与えるのか。ライター・編集者の今一生さんが司会を務め、さまざまなバックグラウンドを持つ登壇者がそれぞれの視点から語った。

◆苦しくても逃げ場がない。ワンオペ育児をする親の生活は、宇宙飛行士と同じ?

 「ママさんと宇宙飛行士は共通点が多いと感じます」と話すのは、宇宙飛行士や宇宙に関する取材を20年以上にわたり続けている、ライターの林公代さん。

 宇宙飛行士は、国際宇宙ステーションで仕事と生活を送る。6時の起床以降は分刻みのスケジュールをこなすマルチタスクの日々だ。

 多忙な生活や閉鎖的な空間に疲れても、気分転換のため外出することもできない。24時間緊張状態が続き、孤独感を抱きながら過ごすためリラックスできる時間が少ない。

 また役割へのプレッシャーから頑張りすぎたり、弱音を吐けず仕事を抱え込んだりして、ストレスを発散できないケースがある。

 過去には、抑うつ状態に陥った宇宙飛行士が自室に引きこもってしまい、周りとのコミュニケーションがとれずに火災といった事故を起こしかけたケースもある。そのため、現在では、2週間に一度は精神心理担当と面談をする、一週間に一度は家族や友人とテレビ電話会議ができる、プレゼントなどの仕組みを整えている。

 宇宙飛行士がおかれる状況は、家でひたすら子どもに向き合い、誰の助けも借りられずワンオペ育児で孤独感を強める親に似ている。

 「自分がストレスを感じていることを自覚し、解消することが生き延びるために必須」「ひとりで抱え込まない、頑張りすぎないことが大切」と林さんは会場に呼びかけた。

◆日本人のママの自殺率は高い

 産婦人科医の村上麻里さんは、日本における妊産婦の死亡原因のトップが自殺というショッキングな事実を紹介。背景にあるのが、出産後に気分の落ち込みを起こす「産後うつ」だ。

 うつの可能性のある妊産婦の割合は、初産婦の場合、産後2週間に多い。自殺する妊産婦の割合をイギリス、スウェーデンと比べると、日本人女性は突出している。村上さんは原因を、母親へ向けられるプレッシャーと考える。

「日本社会には『お母さんはこうあるべき』という考えが強い。芸能人がお子さんとレジャーに出かけたことをブログに書くと炎上することがありますね。それに、お母さんたちは育児がうまくできないと自分を責めがちです」

 興味深いのが、産後うつは男性も発症しえること。男性の場合、子どもが誕生後3〜6か月後と、女性に比べると発症が遅い。10人に1人がかかると言われるが、決して少なくない数字だ。「女性だけではなく男性にも何からしらのケアが必要」と村上さんは強調する。

◆男性も孤独を感じる。ママ友とのつながりで気持ちが楽に

 著作『おっぱいがほしい!男の子育て日記』(新潮社)が人気の作家・樋口毅宏さんは、家事と育児のほとんどを担当。お子さんが生まれたばかりのころは「記憶がない」と話し、参加者の共感を得ていた。