トランプ大統領のツイートは投資家や経営者にとってチェックが欠かせないものになってしまった(写真:REUTERS/Yuri Gripas)

トランプ大統領のツイートは、実はトランプ大統領本人が行っているだけでなく他の誰かが行っているケースもあるといわれている。CNBCなどの分析によると、ツイートの「発信元」のOS(基本ソフト)が2017年3月頃までは2種類(AndroidとiOS)あり、いずれかがトランプ大統領本人で、他方が「偽トランプ」である可能性が高いとされた。


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具体的には、トランプ大統領は2017年3月まではAndroidスマートフォンを使用していたが、それ以降はiPhone(OSはiOS)を使用していることが知られている。しかし、Androidを使用している間(17年3月まで)にもトランプ大統領が所有していないはずのiPhoneからツイートが行われていたこともあり、「側近がツイートしているのでは?」と「偽トランプ」の存在がささやかれていた。

「CNN」や「ヒラリー」を叩くものが多かった

例えば、2015年1月〜2017年3月までのトランプ大統領のツイートで使われた単語をOS(Android、iPhone)ごとに分類すると、使用されている単語のパターンが異なることが分かる。「本物のトランプ」とみられるAndroidによるツイートでは、「CNN」「Hillary」などの単語が多く使われた。一方、「偽トランプ」とみられるiPhoneからは、「America」「great」などの単語が多く使われた。

トランプ大統領本人が失言をしてしまった後に、「偽トランプ」が「Make America Great Again!(アメリカを再び偉大に)」と、フォローを入れていたのだろうか。

ツイートされた時間をOSごとに分類すると、大きな差が確認できる。トランプ大統領本人とみられるAndroidからのツイートは米国時間の10〜14時、公務を行っている時間帯が多い。他方、「偽トランプ」とみられるiPhoneからのツイートは夜〜深夜にかけても断続的にツイートが行われている。生活リズムの異なる主体がそれぞれツイートを行っている可能性が高い。


OSごとのツイートのセンチメントの違いを比較すると、本物のトランプとみられるAndroidからはネガティブな内容でマイナスのセンチメント(心理)を醸成しそうなツイートが相対的に多い。他方、「偽トランプ」はポジティブあるいはニュートラルな内容のツイートが多く、本物のトランプ大統領の発言に対して「火消し」のような役割を担い、市場のセンチメントを支えていると推測される。なお、センチメント指数はソーシャルメディア上の英語表現に特化した極性辞書を用いて算出した。

極性辞書:さまざまな単語が持つ感情がポジティブかネガティブかという観点でポジティブはプラス、ネガティブはマイナスの数値をその度合いによって、ひもづけした辞書。参考:筆者記事『「明るい曲」が流行すると景気は良くなる』。


2017年3月以降はすべてのツイートがiPhoneから発信されているため、「本物のトランプ」と「偽トランプ」が、OSの違いという切り口からは区別できなくなってしまったが、依然として「偽トランプ」が存在する可能性はある。

本人とみられるツイートに多い「フェイク」や「中国」

そこで、筆者はみずほ証券の稲垣真太郎エコノミストおよび木村柚里データサイエンティストとともに、トランプ大統領のツイートを「本物」と「偽トランプ」に分類するAIモデルを作成し、最近のツイートについても、「本物のトランプ」と「偽トランプ」を分類することを試みた。

具体的には、2015年3月〜2017年3月までのAndroidとiPhoneが混在している期間のツイートを「訓練データ」として、深層学習を用いた「トランプ大統領ツイートのAI分類モデル」(Android・iPhone分類モデル)を作成した。訓練データを用いたテストによると、予測精度は86.6%と、かなり高い精度で分類が可能なことが分かった。つまり、AndroidとiPhoneでツイートする内容はかなり異なっていた。

2017年3月以降のツイートについて、今回作成した分類モデルを用いて分類し、再び使用されている単語のパターンを比較すると、やはりパターンが異なることが分かった。本物とみられるツイートでは「Fake」や「China」が目立つが、「偽トランプ」とみられるツイートでは「America」や「Democrat」などが多い。

最後に、投稿者が「トランプ大統領本人」とみられるツイートと「偽トランプ」とみられるツイートの数の変化を見た。

足元では「偽トランプ」とみられるツイートが大幅に増加していることが分かる。前述したように、「偽トランプ」とみられるもののほうがポジティブなセンチメントのツイートを行うケースが多いこととあわせて考えると、「偽トランプ」、すなわちトランプ大統領の側近が、2020年11月の大統領選に向けたアピールとしてポジティブなツイートを増やしている可能性がある。


米中貿易戦争の部分合意を広くアピールするなどの戦略を、トランプ大統領の側近が意図的に実行しているのだろう。当面は「偽トランプ」がツイートする傾向のある夜〜深夜帯に「Keep America Great!(アメリカを偉大なままに)」キャンペーンに関わるものや株価を支えようとするポジティブなツイートが増加していくのではないか。