内田氏は日産では出世畑とされる調達・購買を担当した。独立系サプライヤー幹部は「仏ルノーと三菱自を含む企業連合で購買を担当しており、部品メーカーと近い感覚の経験があるので外部企業から来るより(事業は)安定化するだろう」と期待を示す。別のサプライヤー幹部によれば、内田氏は「温和な印象だが、仕事に対し強い熱意を見せることがある」という。

 内田氏を推した日産幹部は「自分の仕事を前向きに捉えて活路を見いだす人物だ」と太鼓判を押す。実際、日産の業績が低迷する中でも内田氏が現在担当する中国事業は攻勢を強めており、電動化関連部品の現地生産などを促している。グプタ氏や関氏も“協調型”とされており、内田氏を支える上で大きな役割を果たしそうだ。

 一方で「(新体制で)強いリーダーシップを発揮するのは難しいのではないか」(中堅サプライヤー首脳)と疑問視する声もある。日産はルノーとの資本関係の見直しなど対処が難しい局面にある。

 また、再建に向け2022年度までに世界の年産能力を現在比1割弱減の660万台に縮小する計画。「センシティブな案件は、現在暫定社長兼CEOを務める山内康裕COOなどが引き続き、手腕を発揮してほしい」(同)という意見がある。

 社内の勢力図が変化したことで、経営方針の変更を警戒する動きもある。ある部品メーカーは日産トップの方針が明確になるまで投資計画や事業再編を凍結することを決めた。

 経営陣を刷新したことで前向きな期待が高まっているのは事実。だが、日産は抱える課題が山積している。新体制は決まったものの、サプライヤーにとって予断を許さない状況が続く。
(取材・渡辺光太、山岸渉)
日刊工業新聞2019年10月16日