サイゼリヤで本格イタリアンを楽しむ“裏ワザ”とは(Tokoroten/Wikimedia Commons)

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 人気飲食チェーンの中で、最もコストパフォーマンスが高いといわれているサイゼリヤ。安かろうまずかろうというイメージがあるためか、デートでは使えないなんて声もある。ところが意外や意外、低価格のメニューには、じつは高級な食材や調味料がいくつも使われているという。それらをアレンジすれば、本格的イタリア料理に生まれ変わるというのだ。

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 サイゼリヤは、全国に1085店(2018年8月)を展開し、ファミレスチェーンではガストに次いで業界2位だ。老舗のロイヤルホストやデニーズなどを大きく引き離している。客単価は730円と、平均的ファミレスの客単価約1000円よりもかなり低い。なにしろ、一番人気のミラノ風ドリアが299円、マルゲリータピザが399円、パルマ風スパゲッティが399円、グラスワインは100円といった按配だ。

サイゼリヤで本格イタリアンを楽しむ“裏ワザ”とは(Tokoroten/Wikimedia Commons)

「実はサイゼリヤは、料理の専門家から見るとかなり評価が高い店なんですよ」

 と語るのは、11月2日に『人気飲食チェーンの本当のスゴさがわかる本』を出版した稲田俊輔氏である。同氏は関東や東海を中心に和食店、ビストロ、インド料理など、飲食店25店舗を経営する円相フードサービスの専務取締役。全店のメニューを監修、レシピを開発し、インド料理店の総料理長も務める。『人気飲食チェーン〜』は、サイゼリヤをはじめ、人気飲食チェーンは素晴らしいコンテンツの宝庫であることを紹介している。

「サイゼリヤには、無料の調味料コーナーに様々な調味料が用意されていますが、実際に使っている人はそう多くはいません。具体的には、まずオリーブオイル。ナポリの老舗メーカーと提携して直輸入されたそれは、香りの豊かさ、スパイシーさを感じる風味、さらりとした口当たりで、これがただで自由に使えるなんて他のファミレスでは考えられません。それから、最近、置かれるようになった粉チーズのグランモラビア。以前の粉チーズは大衆的な店でよく見かける紙筒入りのものでしたが、それとグランモラビアを比べると、たとえて言えば、インスタントコーヒーとドリップコーヒーくらいの差になります。熟成感のある硬質チーズならではの深い旨みとフレッシュな風味があります。もし、ただ茹でただけのパスタを注文することができるのなら、このオリーブオイルをたっぷりとかけ回し、グランモラビアもたっぷり振りかけて、調味料コーナーにあるブラックペーパーをガリリとひくだけで、絶品のパスタになります。以前、このことをブログに書いたことがあるのですが、実際にサイゼリヤでこの絶品パスタを作った方がいましたよ」

サイドメニューが高品質食材

 このグランモラビア、日本ではほとんど流通していないチーズだという。さらに、本場イタリアでスパゲッティ・カルボナーラに使われる、日本では希少なペコリーノチーズも100円で注文できる。

「主菜となるハンバーグやステーキ、チキン料理などの肉料理は、ガストなど他のファミレスに対抗するためなのか、イタリアンにはなっておらず、普通のファミレスのメニューと同じです。ところが、サイドメニューとなるプロシュートやサラミ、ソーセージは本場イタリアの高品質なものを提供しています」

 プロシュートは、パルマ産生ハムで、1年熟成されているという。

「しっかりした熟成感と凝縮感がありクオリティーは抜群です。一般のスーパーでは入手できません。サラミもミラノ熟成サラミで、滑らかでとろけるような味わいが楽しめます。ソーセージはイタリアのサルシッチャです。日本ではドイツ式の燻製したソーセージが主流となっていますが、サルシッチャは生のソーセージをグリルしたもので、肉々しい旨みがダイレクトに楽しめます。日本では珍しいソーセージが気軽に食べられるという意味で、サイゼリヤは貴重な店と言えますね」

 さらに、水牛のミルクで作ったバッファローモッツァレラチーズもイチ押しだという。

「フレッシュなモッツァレラチーズは日本でも人気ですが、サイゼリヤのものは伝統的で貴重なバッファローのミルクを使っています。普通の牛乳で作ったものより濃厚な味わいです。サイゼリヤのメニューでは、バッファローモッツァレラチーズのピザがありますが、注文するときは、普通のチーズは抜きでオーダーしてください。ピザ用の黄色いチーズは風味が強くて、モッツァレラチーズのデリケートな風味がぼやけてしまうからです。そして、無料のグランモラビアを少しだけ振りかけると、味わいに立体感が生まれます。グランモラビアはモッツァレラの繊細さを邪魔しませんから」

 稲田氏はこんな光景を目撃したことがある。

「昼下がりのサイゼリヤで、東南アジア系の若者グループが食事をしていました。ライスにエスカルゴのオーブン焼きをオイルごと混ぜ、そこに辛味チキンの身をほぐして加え、唐辛子フレークで仕上げていました。私には思いつかない組合せだったので、その席に行って、写真を撮らせてもらいました。『フィリピンの方ですか』と尋ねたら、その通りでした。フィリピンの旧宗主国はスペインで、そこでは肉類と貝を一緒に調理するのです。しかも彼らは辛いものが好きなんです」

 稲田氏の手にかかれば、ごく普通のリブステーキが“牛肉のタリアータ”に変身する。

「リブステーキが出てきたら、鉄板の上からガルムソース(醤油味のソース)を取り出してテーブルの片隅に追放します。イタリアンに醤油味は合いません。付け合せのポテト、青豆、コーンを小皿に移します。鉄板の上に残ったステーキを、ナイフを斜めに入れて6切れほどにカットします。カットしたステーキを白い皿に移し、まずたっぷりのオリーブオイルを注ぎ、軽く塩を振り、多めのブラックペッパーを皿からはみ出さんばかりに広範囲にかけます。これでイタリアンらしくなります。このときデキャンタの赤ワインを飲んでいたら、ごく少量を肉と皿に振りかけるといいアクセントになります。最後に削りたてペコリーノチーズを惜しみなく振りかけると、牛肉のタリアータの完成です。付け合せのポテトたちは、オリーブオイルとグランモラビアを加えて、サイドデッシュ的な温野菜料理にします。ちょっとしたひと工夫で、料理は際立ちます。サイゼリヤの公式サイトを見ると、料理のアレンジを推奨していますので、店員の目を気にせず堂々とアレンジしてみたらいかがでしょうか」

週刊新潮WEB取材班

2019年11月13日 掲載