福岡市中央区の創業支援施設で昨年6月、IT関連セミナーの男性講師が殺害された事件で、殺人などの罪に問われた同市東区、無職松本英光被告(43)の裁判員裁判が12日、福岡地裁(岡崎忠之裁判長)であった。講師は「Hagex」のハンドルネームで活躍していた有名ブロガーだった。松本被告は被告人質問で、講師がインターネット上の「集団リンチ」に関わったとして「死ぬ以外、ネットでのリンチをやめないと思った」と動機を語った。

 松本被告は集団リンチについて「複数の人間が一方的に個人を攻撃すること」と独自に定義し、「弱い者いじめで許せなかった」と説明。集団リンチに関わったと判断した他のユーザーに対し、2015年ごろから「低能」などと中傷を繰り返した。そのため、ネット上では「低能先生」と揶揄されていた。

 講師も被告とのトラブルをブログで紹介したため、「ネット上にさらされ、挑発行為だと感じた。セミナーで福岡に来ると知って殺害を決めた」と述べ、昨年4月下旬ごろに殺害を決意したと説明。2人に直接の面識はなかったが、ブログで講師の顔写真を確認したという。

 被告は「一方的に殺してしまったことは、嫌いないじめと同じだと反省している」と述べた一方で「ネットリンチする人が1人減ったので、後悔はしていない」と淡々と語った。今回の事件以外にも「リンチしている人間はだいたいターゲットだった。殺す優先順位も付けていた」と話した。

 被告が利用していたサイトの運営会社社員も証人として出廷。被告による他のユーザーへの中傷は17年ごろから頻繁になり、「年間8千件に上ったこともあった。常軌を逸していた」と証言。アカウントを凍結しても、約500回にわたって再取得したという。

 起訴状によると、昨年6月24日夜、福岡市中央区大名2丁目の創業支援施設に侵入、1階のトイレで東京都の講師=当時(41)=の首や胸などをナイフで刺して殺害したとされる。(梅沢平、鶴善行)