「地方出身エリート男」と「都会育ち女」はなぜ離婚するのか(写真:Pangaea/PIXTA)

「〇〇さん、ついに結婚するらしいよ。でも、お相手の男性は賃貸住宅に住んでいるらしいんだよねえ……」

そんなことがママさんたちのランチの話題になるぐらい、男性が家をもっていることが、中国では結婚の大きな条件になっています。

中国人男性は、賃貸住みだと結婚できない

中国語では「有車有房」といいます。自動車と家をもっている。実は、有車有房が結婚の条件になったのは、そう古いことではないのです。   

かつては「門当戸対」ということがいわれました。門も戸も、家の格式のこと。当や対は、同程度という意味です。家庭環境や生活水準、育ちや価値観が似ていることが、まずは結婚の大前提とされたのです。

拙著『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』でも解説していますが、1990年代ですら、地方から出てきた男性が、上海や北京の女性と結婚するなんて、ちょっと考えられなかった。親が猛反対したのです。中国全土を人が行き来する時代を、親の世代は生きていません。北京の女性は、北京の男性と結婚するのが当たり前だった。都市戸籍と農村戸籍の違いがあって、配給の問題にも関わっていたからです。

今は本人たちが納得すれば、どこ出身の人とでも結婚できるようになった。ただし、そのために生活力がより要求されるようになった。だから「家をもっているかどうか」が、これだけうるさくいわれるようになったのでしょう。

ごく最近になって、プライドの高い上海や北京の親たちが、逆に娘を喜んで結婚させたいと願う地方出身者も登場しました。「鳳凰男」です。フェニックスマン。地方出身者ですから、基本的に家はもっていません。でも、将来性がある。

鳳凰男に厳密な定義はないのですが、私のイメージでは、こんな感じです。

地方の出身者で、必死に勉強して大都市の一流大学に進学。卒業後はBAT(百度、アリババ、テンセント)のようなIT系や、金融系の一流企業に就職。入社して5年ぐらい経てば年収1000万円を当たり前にもらう男性たちです。

日本にもかつて「3高」という言葉があったそうですね。結婚相手に対しては、高学歴、高収入、高身長を求める。中国の場合、ルックスはさほど重視しません。でも、収入は何より重視する。

鳳凰男は離婚するケースが多い印象があります。結婚した当初は、2人だけの生活だからいいのです。鳳凰男も都会のマナーや生活スタイルを身に付けている。でも、子供が生まれると、中国では祖父母が面倒をみるのが一般的です。田舎から鳳凰男の両親が出てきて、風習の違いでもめることも少なくない。

実際、知り合いの日本人女性も、これが原因で鳳凰男と離婚しています。中国の田舎、とくに水が貴重な地域では、赤ちゃんをお風呂に入れる頻度として1週間に1回が常識だったりする。こうした文化の違いが積み重なってけんかのもとになり、うまくいかなくなるケースもあるわけです。

中国では40代で「熟年離婚」する?     

実は2003年から16年連続で、中国の離婚率は上がり続けています。婚姻件数のほうは2014年から減り続けているのに、です。

2018年のデータでは、婚姻件数が1011万組、離婚件数が380万組ですから、2.5組に1組近くは離婚していることになる。日本では3組に1組ですから、それを追い抜いてしまった。

なぜ2003年から離婚が増え出したかについては諸説ありますが、よく冗談半分に解説されるのが、「わがままな一人っ子の八〇後(1980年生まれ)が結婚する年齢に達したから」。誰もが「なるほどね!」と膝を打ってしまう説明です。

ただ、実は離婚は七〇後のほうが多いのです。古い世代は「離婚は悪いことだ」という価値観をもっています。「これから先の長い人生を考えたら、離婚も選択肢の1つになる」と考えるようになったのが、七〇後からなのです。

ただ、七〇後が離婚する理由は、八〇後ともまた違うように思います。中国では、日本と比べものにならないぐらい、子供の教育を重視します。子供が高校生や大学生になって手がかからなくなった年代が、七〇後なのです。

日本でも「子供も手を離れたし」というフレーズはよく耳にします。でも、大抵の場合、奥さんは、旦那さんが退職するまでは辛抱する。だから、熟年離婚が増える。離婚に踏み切るきっかけは同じなのに、時期が違うのは、もちろん理由があります。

1つは、中国には退職金が存在しないこと。退職時にドカンともらうのではなく、退職後も給料をもらい続けるのが一般的なのです。だから、旦那さんの退職金狙いで定年まで辛抱する意味がない。

「男性から先に名刺交換」は危険  

もう1つ、中国では女性も働くのがデフォルトだということがあります。旦那さんの給料に頼らなくてもやっていける。基本的に男性が女性へ慰謝料を支払う習慣がないので、やっぱり辛抱する意味がない。耐えられなくなったら、早めに離婚してしまうほうが賢い、というわけです。

当然、女性もBATなどの一流企業に入れば、まったく同じ待遇を受けられる。鳳凰女という言葉がないだけです。日本の女性より生活力がある。


実は、この部分も、あまり日本人に理解されていない。年をとった人のほうが社会的地位は高いと考えるのと同様、女性より男性のほうが社会的地位は高いと考えてしまう。そんなことはありません。女性経営者として、ものすごく稼いでいる人がざらにいます。

ビジネスで日本を訪れた中国人の女性社長から、こんな言葉を聞いたことがあります。

「日本人って、なぜか私をスルーして、部下の男の子のほうと先に名刺交換しようとするのよ。あれはどうして?」

知らないとはいえ、やはり失礼なことをしている。

高い社会的地位につき、大金持ちの女性はたくさんいます。だから、日本に旅行で来たときも、平気で大きな買い物をするのです。