カンボジア・シエムレアプ州の食肉処理場で従業員が湯を沸かす中、外を見つめる犬(2019年10月25日撮影)。(c)TANG CHHIN Sothy / AFP

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【AFP=時事】カンボジアの犬肉産業では、1日に数千匹の犬が殺されている。犬を殺す方法は溺死や窒息死をさせたり、刺殺したりするなどさまざまだ。一方で拡大する犬肉業界で働く人々はトラウマを負い、狂犬病など死に至る恐れのある健康リスクにもさらされている。

 キュー・チェン(Khieu Chan)さん(41)は、自らの仕事について語りながら泣き崩れた。1日に多いときで6匹の犬の喉をかき切る仕事は、眠るときにも頭から離れない。「許してくれ。君たちを殺さないと、家族を養うことができないんだ」。ケージの中で運命を待つ10匹の犬に、彼は語り掛ける。

 安価なたんぱく源である犬肉は、中国や韓国、ベトナム、インドネシアの非イスラム社会などのアジア諸国で現在も食べられている。

 カンボジアでも残酷な犬肉取引がひっそりと行われてきたが、新たな調査の結果、犬の捕獲や無許可の犬肉処理場などのビジネスが繁盛し、「特殊肉」として犬肉を出す飲食店が都市に多数あることが明らかになった。

 動物愛護団体「フォー・ポーズ(Four Paws)」の推定によると、年間200万〜300万匹が食肉処理されており、首都プノンペンには犬肉を提供する飲食店が100軒以上、古代遺跡群アンコールワット(Angkor Wat)で有名な観光地シエムレアプ(Siem Reap)にも同様の飲食店が約20軒あることが確認された。

■狂犬病危機

 犬の卸売業者は、カンボジア北部をバイクでめぐり、鍋などの調理器具と不要とされている犬を交換する。生きた犬は1キロ当たり2〜3ドル(約220〜330円)で売れるため、卸売業者はできる限り多くの犬を集めようとする。

 だが専門家らは、犬肉産業が公衆衛生に危機をもたらしていると指摘する。病気に感染している犬が全国に出回る可能性があるからだ。カンボジアは世界でも人の狂犬病発生率が高く、その多くは犬にかまれたことが原因だ。

 また、政府の監督が行き届いていない不衛生な犬肉処理場は安全規制が皆無で、労働者たちは防護服などを身に着けていない。

 シエムレアプの村で犬肉の煮込みを作っていた男性(33)はAFPの取材に応じ、犬にかまれたが予防接種を受けることはできず、代わりにせっけんとレモンで傷を消毒したと語った。

■犬肉処理場

 犬が処理場に運ばれてくると、上半身裸の男性従業員たちは犬を逆さまにつるしたり、ロープで絞め殺したり、頭をこん棒で殴ったり、悪臭を放つ水でいっぱいになった穴の中で溺死させたりする。

 ある従業員(59)は犬を木の枝につるして窒息死させると、沸騰する湯の中に入れて毛と皮を取り除き、部位ごとに切り分けた。「多い日には、10〜12匹を殺す」「気の毒にも感じている」と元兵士の男性は語った。

 カンボジアでは衣料品工場の月給が200ドル(約2万2000円)未満なのに対し、犬肉の供給業者は750〜1000ドル(約8万2000〜10万円)を稼ぐことができる。

 生産性は極めて重要だ。犬肉業者の一人は「殴った方が早い」と話しつつ、「罪なことだとは分かっている」と言い添えた。だが、犬の鳴き声を聞かずに済むことから、地方部で好まれているのは溺死させる方法だ。

■業者たちの転職

 安い犬肉は網焼きや1.25ドル(約140円)ほどのスープになって飲食店で提供されており、日雇い労働者に人気がある。それでも犬肉を食用として届ける精神的トラウマは計り知れず、犬肉産業で働く人々はましな職が見つかれば転職する。

 タケオ(Takeo)市で飲食店を経営するキュー・チェンさんも、閉店を条件にフォー・ポーズから農地を支給されることになった。

 病気にかかっていた犬たちはプノンペンで治療を受けることになった。チェンさんは移送前にケージの前にひざまずき、「君たちは今、自由だ。死なずに済んだんだ」と言って、別れを告げた。

【翻訳編集】AFPBB News

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