今夏のワールドカップでは選外だった猶本光。79分から交代でピッチに立つも……。写真:早草紀子

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 11月10日、北九州スタジアムで南アフリカ女子代表と戦ったなでしこジャパンは、10月のカナダ戦に続いて勝利を収めた。その序列に大きな変化はあったのか――。結論から言えば、女子ワールドカップ組優位の構図は変わっていない。

 この試合、女子ワールドカップ不出場組で唯一先発に起用されたのは、A代表2試合目のDF土光真代だった。

 代表で100試合を超えるキャリアを誇るDFの熊谷紗希(リヨン/フランス)、そして所属する日テレ・ベレーザの僚友たちに囲まれた土光は、もう一歩でまだ代表で得点がなかったキャプテンを差し置いて、ゴールを奪うかという場面を作った(最終的には、土光のシュートのこぼれ球から熊谷の代表初ゴールが生まれた)。また、守備面では、南アフリカ女子代表のエース、クレツィナー・クガトラナを封じ込めゴールを与えなかった。

 自己採点は「フリーの場面で、もう少しドリブルで持ち上がって、1枚でも2枚でも相手を引き付け、前を助けるプレーをしたかった」とのこと。攻撃へ関与できず、ゴールが少なかった部分に責任を感じるあたりは、女子ワールドカップのアルゼンチン戦で奮闘した、南萌華(浦和レッズレディース)を思わせた。

 この活躍にも、「土光に関しては守備に対する集中力は、最後まで切れなかったと思いますし、フィードの部分でも、工夫をしてプレーをしようという意図はあったので、及第点」しかつかないのだから、高倉麻子監督のジャッジは厳しい。

「複数ポジション」というテーマに挑戦した遠藤純、宮川麻都(以上日テレ・ベレーザ)も、無難に任務をこなしたかに見えたが、指揮官の設定したハードルは、一段も二段も上。左サイドバックにチャレンジした遠藤は、「前目のところでいいプレーをしようというチャレンジはしていましたが、攻撃ではクロスやシュートの部分で、まだまだ努力が必要」との評価だった。

「試合に出られるならどこでも」と意気込む宮川についても、「ユーティリティーの高い選手で、ソツなくプレーしていた。前半は少しこぼれ球を拾い切れない場面もあったので、試合の中でそういうところを修正できる選手になっていってほしい」と注文がついた。

 試運転段階では十分なデキにも見えたが、指揮官は「緊急時のオプション」ではなく、「ひとつの選択肢」になり得るよう、求めている。
 こうしたなか、やや立場が苦しくなったのは猶本光か。本人が「試合への入りが悪かった。悔しいです」と振り返った通り、投入後、相手の守備網に引っ掛けられてカウンターを浴びるきっかけを作ってしまった。

 先日、指揮官から、ボランチのボールロストへの苦言も出ており、スムーズな流れを作ってアピールしたかったところ。ミスを引きずったのか、しばらくは持ち前のゴールに迫る積極性、影を潜めてしまった。

 しかし、アディショナルタイムに、左足でシュート(敵DFがコース上でブロック)。直後にもやや遠めの位置から右足でゴールを狙ったが、GKに防がれた。後がない場面で放ったこのシュート2本が、東京オリンピックへの挑戦権を、もう一度、手繰り寄せるものになるだろうか。

 この後、12月のE−1(東アジア選手権)で、なでしこジャパンの今年の対外試合は終了する。刻々と東京オリンピックが近づくなか、選手の表情も締まってきている。ワールドカップよりも少ない18枠を目指す競争のタイムリミットはそれぞれが感じている。厳しい競争を経て、東京オリンピックへ出場するのは誰になるだろうか?

取材・文●西森 彰(フリーライター)