マッサージ事業者の収入高合計推移

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マッサージ事業者、収入高合計は前年度から4.8%増加 高齢者を中心としたリピーターを確保

街中に「肩こり・腰痛改善」「保険診療可」などの看板を掲げる整骨院や鍼灸マッサージ店があふれている。特に「整骨院」は国家資格の柔道整復師(以下、柔整師)養成学校の規制緩和で資格所有者が急増し、店舗数が増加した。

厚生労働省によると、柔整師が手がける施術所(整骨院)は2018年末時点で約5万77カ所まで増加し、10年間で約1.4倍に膨れ上がっている。供給過多となった整骨院は同業との競合が厳しく、保険診療の不正請求に手を染めるケースが後を絶たない。

整骨院・療術・マッサージ業者2090社のうち、2016年度、2017年度、2018年度決算の収入高が判明した1888社を対象に各年度の収入高合計をみると、2018年度は前年度比4.8%増の2038億4800万円となった。

収入高トップはリラクゼーション大手の(株)りらく(大阪市港区)となり、次いで整体サロン『カラダファクトリー』運営の(株)ファクトリージャパングループ(東京都千代田区)、整骨・鍼灸院『げんき堂』運営の(株)GENKIDO(東京都台東区)が続いた。中堅・大手事業者は新規出店で増収につなげたほか、小規模業者においても高齢者を中心としたリピーターを確保できた業者が多くみられた。

2017年度、2018年度決算の収入高が判明した1997社のうち、2018年度に「増収」となった企業は356社(構成比17.8%)であったのに対し、「減収」は248社(同12.4%)、「横ばい」は1393社(同69.8%)」となり、「横ばい」が全体の約7割を占めた。

マッサージ店の倒産、2018年に迫るペースで推移

「10〜30年未満」が946社(構成比45.3%)で最多となり、次いで「10年未満」が759社(同36.3%)となった。近年では、整骨院を中心に新規参入が相次ぎ、業歴が浅い企業の割合が増えている。一方、「50〜100年未満」は87社(構成比4.2%)、「100年以上」は3社(同0.1%)となった。

「10人未満」は2090社中、1702社(構成比81.4%)で最多となり、小規模業者が全体の8割を占める結果となった。
一方、「100人以上」は28社(構成比1.3%)にとどまった。

一方で整骨院・療術・マッサージ業者の倒産件数は2016年以降、増加傾向にある。2018年の倒産件数は85件で2000年以降、最多を記録した。2008年(27件)と比較すると10年間で3倍超となり、増加傾向が続いている。また、2019年(1月〜10月)の倒産件数はすでに78件発生しており、2018年に迫るペースで推移している。負債額別でみると、負債「1000万円〜5000万円未満」の小規模業者の倒産が目立った。

整骨院で公的保険の「不正請求」が問題化 自由診療でも競合激化で淘汰加速の可能性も

整骨院・療術・マッサージ業者2090社のうち、2016年度、2017年度、2018年度決算の収入高が判明した1888社を対象に各年度の収入高合計をみると、2018年度は前年度比4.8%増の2038億4800万円となった。柔整師の国家資格者が運営する「整骨院」の新規参入が相次ぎ店舗数が増加。また、高齢者を中心にリピーターが増えたことが背景にある。

リラクゼーション目的のマッサージは自由診療だが、柔整師が運営する整骨院では、骨折、捻挫、打撲、脱臼、挫傷の5つの外傷に対する施術に限り、公的保険が適用される。本来、慢性的な腰痛や肩こりは対象外だが、保険対象の外傷と偽るほか、治療部位の水増しなど公的保険の「不正請求」が問題になっている。

近時では厚生労働省が保険審査を厳格化する動きが強まっており、整骨院業者の業績に影響を及ぼしかねない問題になっている。すでに保険診療から骨格矯正やマタニティー整体、猫背矯正など自由診療のシェア拡大に注力する業者が増えるなか、今後は鍼灸マッサージやカイロプラクティック、リラクゼーション業者と競合となり、淘汰が加速する可能性がある。