デビュー20周年イヤーを迎えるAIが11月10日、東京・築地本願寺で「AI 20周年記念プレミアムライブ with ゴスペル聖歌隊」を開催した。AIが築地本願寺でライブ自体を行うのも、ゴスペルライブを披露するのも今回が初めてのこととなる。
2000年にデビューし、「Story」「ハピネス」などのヒット曲を送り出す一方、海外のアーティストとコラボを重ねながら国境を越えた活動を続けているAI。11月6日に20周年記念ベストアルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST-』 をリリースしたばかりの彼女はこの日、全米で活躍するゴスペル隊を含む総勢23名の一流ミュージシャンとともに、400年の歴史を持つ築地本願寺を素晴らしい歌声で包み込む最高のパフォーマンスを繰り広げた。

オープニングセレモニーとして築地本願寺の僧侶による法要が執り行われた後、ライブはスタート。AIと18名のゴスペル聖歌隊が客席に後方から登場し、場内は大きな歓声で包まれる。観客とハイタッチを交わしながらステージに上がったAIは、まずはゴスペルの名曲「Jesus Is My Help」を披露。クワイアによる大迫力のボーカルとハーモニーが響き渡り、いきなり大きな感動が生まれる。
「素晴らしい歌声をたっぷり感じてください!」というMCを挟み、クワイアのメンバーをフィーチャーしながら「キラキラ feat.カンナ」、「For my Sister feat.Judith Hill」などの人気曲をゴスペル・バージョンでパフォーマンス。日本とアメリカから集まったゴスペルシンガーたちのソウルフルにしてダイナミックなコーラスはまさに圧巻だ。また、20周年記念ベストアルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST-』に収録された新曲「ラフィン・メディスン」では、“笑顔こそが人生をよりよく生きるための薬”というメッセージがまっすぐに伝わってきた。
「まさか築地本願寺でライブができるとは思いませんでした。これだけ大所帯のツアーは今度いつ出来るかわかりません。今日のライブに来ていただいて、本当にありがとうございます」という言葉からも、この貴重なライブに対する強い思いが感じられた。

母親への愛を歌った「ママへ」では、孫がいるという女性客をステージに上げ、すぐそばで温かい歌声を響かせた。さらに高校時代にAIがゴスペル隊で歌っていたというカーク・フランクリンの名曲「The Reason Why I Sing」、映画「グレイテスト・ショーマン」の主題歌「This Is Me」をカバーするなど、今回のツアーでしか体感できないレアなステージが続く。さらに大沢たかお主演の映画「AI崩壊」(2020年1月31日公開)の主題歌として書き下ろされた新曲「僕らを待つ場所」も。ゴスペルの荘厳なコーラスとともに“自分を一番受け入れてくれる場所”“大切な人を受け入れてあげたい心”を描いたこのバラードは、彼女の新たな代表曲として浸透しそうだ。

凄腕のミュージャンたちによる濃密なグルーヴをたたえたバンドセッションを挟み、ライブは後半へ。台湾のヒップホップ・グループMJ116とのコラボ曲「You Never Know feat.MJ116」、“盛り上がろう!盛り上がろう!”という合唱が生まれた「MORIAGARO」など5曲メドレーで、会場全体の熱気をさらに引き上げる。「この人たち、すごくない?!」というAIも、このライブを心から楽しんでいるようだ。
新曲「Baby You Can Cry」も強く心に残った。安室奈美恵さんの「Baby Don‘t Cry」をモチーフ/サンプリングして制作されたこの曲は、“ときには肩の力を抜いて、泣いてもいいんだよ”というメッセージを込めたナンバー。安室奈美恵さんとAIの絆から生まれたこの曲は間違いなく、20周年を記念した今回のツアーのハイライトのひとつだ。
「“一人じゃないから”という歌なので、みんなも歌って」(AI)という言葉に導かれたのは、代表曲「Story」。大迫力のゴスペル・ハーモニー、ブラックミュージックのエッセンスを色濃く反映したサウンド、そして、AIのパワフルなボーカルが広がった「Story」は格別だった。
ベストアルバム『感謝!!!!! - Thank you for 20 years NEW & BEST-』に収録された「No Weapon」(フレッド・ハモンド)のカバーでは、ゴスペルとR&Bを中心にした彼女自身のルーツを力強く表現。この日一番の大合唱が生まれた「みんながみんな英雄」、AIにとって初のゴスペルのオリジナル曲「LIFT ‘EM UP feat. B.SLADE」などを次々と披露し、AI、クワイアのメンバー、観客による心地よい一体感を生み出した。本編ラストは「Music Is My Life」。ピアノを中心にしたオーガニックなサウンド、ソウルフルなメロディ、壮大なコーラス、そして、“音楽こそが私の人生”という思いを込めた歌が高らかに響き、ライブはクライマックスを迎えた。

アンコールでも、このツアーでしか見られない貴重なシーンが実現。まずは「この人数で歌うんだったら、この曲しかないと思って」(AI)と「We Are The World」(USA for Africa)をカバー。高いスキルと強い感情を込めたメンバーたちのボーカルによって、名曲に新たな生命が吹き込まれた。1985年にアフリカの飢餓と貧困に対するチャリティーソングとして制作された「We Are The World」は、今回のツアーの「2020年に世界中の注目を集める東京から、宗教も、国籍も、すべての境界(ボーダー)を越えた平和な時間を届けたい」というテーマともしっかり重なっていた。ラストは「ハピネス」。幸福そのものを結晶化したようなパフォーマンスによって、この記念すべきライブはエンディングへ。本場のゴスペルとともに、20年のキャリアのなかで生み出されたAIの名曲をたっぷりと味わえる、本当に素晴らしいステージだった。いま日本でこのステージを披露できるシンガーはおそらくAIひとりではないだろうか。

この日のライブは、特番「AI 20周年記念 プレミアム・ゴスペルライブ in 築地本願寺」として12月22日(別日含めて全5回放送)にNHK BS8Kで放送されることが決定。築地本願寺の本堂で行われた貴重なステージをぜひ追体験してほしい。

Text by 森朋之
カメラマン:上飯坂一