■思わず駆け込み乗車をしてしまう人の心理

電車に乗っていると、閉まりかけたドアを押し開けるようにして、すごい勢いで駆け込んでくる人を見ることがありますよね。明らかに危ないとわかっているのに、それでも駆け込み乗車をしてしまうのはなぜなのか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/ake1150sb)

以前、駅の階段にビデオカメラを設置して、駆け込み乗車について調査したことがありますが、上り階段と下り階段で比較すると、駆け込み率が高いのは前者だとわかりました。下り階段のほうが転んだときに大怪我をしたり、他人を巻き込みやすかったりとリスクが高いため、行動が抑制されるのです。リスクレベルの認知には個人差がありますが、人は主観的にリスクが少ないと思うと、リスクを取りにいきます。

リスクを取ることで得られるメリット、リスクを取らないことで生じるデメリットを天秤にかけたとき、あえてリスクの伴う行動をすることを、心理学では「リスクテイキング行動」と言います。

■発車ベルが鳴ったらなぜ走ってしまうのか

以上を踏まえると、駆け込み乗車は3パターンに分類できます。

1つ目は意識的にリスクを取るパターン。駆け込むリスクを取ると、目的地に早く着くメリットがあります。駆け込まなかった場合は、遅刻するデメリットがあります。メリットとデメリット、さらにはリスクを取ったときの損害の大きさを、総合的かつ合理的に判断した結果、駆け込み乗車をするタイプです。

2つ目は時間に余裕があるとわかっていても、リスクを取って駆け込むパターンです。走らなくてもいいやと、電車を1本やり過ごしたときに、自分の乗った電車が遅延したりして、到着が大幅に遅れた……。そんな経験があると、リスクを取らないことで生じるデメリットを避けるため、1本でも早い電車に乗ろうと合理的に判断するのです。

大体は、発生しうるリスクとうまくいったときの結果とのバランスを踏まえ、合理的な判断をしたうえでリスクテイキングする「期待効用最大化仮説」で説明がつきます。ただし、多くの人が駆け込み乗車のリスクを過小評価しているので、客観的には合理的判断とは言えません。

それらに当てはまらないパターンが3つ目。毎朝遅刻ギリギリで駆け込み乗車している人などが、電車が来たり発車ベルが鳴ったりすると、「走らなきゃ!」と習慣的に駆け込むもの。合理的判断をしていないので、前出の2パターンと比べると、「エラーとしての駆け込み乗車」と言ってもいいかもしれません。

■駆け込み乗車、ダメ、絶対!

駆け込み乗車は非常に危険です。電車のドアはセンサーで自動的に開くものだと思い、駆け込み時に傘や鞄などを差し込む人がいますが、あれはダメです。ドアは車掌が開けない限り開きません。さらに電車はすべてのドアが閉まらないと発車できない仕組みになっていて、ものが挟まるトラブルは時間のロスにつながります。細いものだとドアの開閉を制御する回路が認識せず、挟まったまま電車が走り出すことも……。

この機会に「駆け込み乗車は本当に危険だからやめよう」と、思い直す人が増えることを願います。

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芳賀 繁交通心理学者
立教大学名誉教授。社会安全研究所技術顧問。著書に『あなたのその「忘れもの」コレで防げます』ほか。趣味はギター演奏。
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(交通心理学者 芳賀 繁 構成=池田園子 写真=iStock.com)