茂木敏充外相

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「茂木敏充」外相に学ぶ法律違反の逃れ方(1/2)

 疑惑報道の渦中にあった菅原一秀経産相があっけなく辞任。同じ経産相だった小渕優子女史も本誌(「週刊新潮」)報道を機にスピード辞任している。他方、手帖、線香、香典3点セットを渡しても「買収」摘発をすり抜けたのが、自称総理候補・茂木敏充外相。法律違反の逃れ方を学ぼう。

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 去る10月26日のラグビーW杯準決勝。ニュージーランド(世界ランク1位※当時)対イングランド(同2位)の試合は事実上の決勝戦とも、それぞれのユニフォームに因んで「白黒はっきりさせる」一戦とも言われた。

 奇しくもその前日の25日、永田町でも、疑惑の渦中にあった菅原一秀経産相が辞任、白黒はっきりついた恰好となった。

茂木敏充外相

 菅原氏は大臣就任以降、選挙区がある東京・練馬の有権者にメロンなどを配っていたことが報じられた。これは2006〜07年のことで、菅原氏の大臣就任に一役も二役も買った菅義偉官房長官も、「10年以上も前のことでしょ」と意に介さぬ風だった。永田町の常識は世間の非常識などと言われるが、「みんなやってること。10年前は不問でしょ」というのが定説だった。

 その雲行きが怪しくなったのは週刊文春による10月24日の報道からだ。同17日、菅原大臣の支援者の通夜に、大臣の代理として公設第1秘書が2万円の香典を携え、参列したのだ。疑惑が取りざたされるこのタイミングでなぜ⁉という疑問もさることながら、秘書が香典を差し出すまさにその場面まで、あろうことか写真に納まっていた。やんぬるかなというわけで、“菅原号”は〈目的地=スピード辞任〉のレールをひた走ることとなった。ちなみに、政治家本人が香典を持って出向く場合は法的に問題はない。

 そこで改めて頭をよぎるのは、じゃあどうしてあの大臣はセーフで、また別の大臣はアウトだったのかという点だ。

 アウトは14年秋に露見した小渕優子経産相=当時=で、セーフが17年夏以降報じられた自称総理候補こと茂木敏充経済再生相=同=(現在は本人の熱烈な希望で外相を務める)のケースである。いずれも本誌報道が発端となったもので、その疑惑の中身をざっとおさらいしておこう。まず、【小渕大臣の場合】から。

▼例年、選挙区である群馬5区の有権者向けに東京・日本橋「明治座」を借り切って観劇会が行われる。これは「小渕優子後援会」の女性部の主催で、政治資金収支報告書上、その収支が全く合わなかった

▼参加者から集めた費用よりも小渕氏側が劇場に支払った額が毎年1300万円ほど多い。有権者の買収、あるいは報告書の虚偽記載などと見做しうる

▼同様に、東京ドームでの巨人戦観戦もどうしたことか“政治活動”として行っており、参加者から集めた額より小渕氏側の支出の方が大きかった

▼小渕氏の写真をラベルにあしらった「赤白のワイン」、「ネクタイ」に「鉢植えの蘭」を地元選挙区内の有権者に贈呈した。いずれも有権者への寄付を禁じる公職選挙法に抵触する可能性がある

 本誌報道から僅か4日後、小渕氏は大臣の職を辞することとなった。政治部デスクが当時を振り返って、

「週刊新潮の報道当初、安倍さん(晋三首相)は静観する構えだったのですが、松島さん(みどり法相=当時=)が選挙区内の有権者にうちわを配布していた事実も明らかになったばかりでした。新聞・テレビで連日連夜、さかんに小渕さんの問題が報じられ、野党も委員会などで対決姿勢を強めていきました。最終的には安倍さんが“このままでは世論が持たない”と判断し、小渕、松島にセットで辞表を提出させ、“寄付問題”の幕引きを図ったわけです」

 小渕氏だけならもう少し“抵抗”を続けたかもしれない……そんな風に付け加えるのだった。

香典袋に「茂木敏充代理秘書」

 他方、セーフだった【自称総理候補の場合】である。

▼茂木事務所は、選挙区である栃木5区の有権者に対し、毎年1部600円の衆議院手帖を年末年始に配っている

▼配布対象は各地域内の後援会関係者が主だが、後援会費を払っていない人がかなり含まれている。彼らが無償で手帖の提供を受けていると認識しているのは間違いない

▼配布のためのリストが存在する。「昨年はこれくらい配ったから今年はこれくらい必要になる」と事務所内のミーティングの際、代議士に確認を仰ぐための書類でもある

▼多い時は週に2回、通夜・葬儀に秘書が代理出席し、香典を持って行った。対象は選挙区内の後援会関係者。基本的に5千円で、幹部なら1万円。出金は事前に事務所の金庫から行われる

▼「茂木敏充代理秘書◎◎」と、香典袋や帳面に記載。5千円だと、「おい、少ないぞ」などと有権者からイジられることも。1万円を払うべきか否か判断がつかなければ代議士に秘書が相談する

▼初盆の際に、千円から1500円ほどの線香を配っていた。本人自ら出張る場合と秘書が回るパターンとがある。訪問先の氏名、亡くなられた方との続柄、死因などが記載されたリストが作成される

▼手帖や線香の配布、香典の手渡しはいずれも、公選法が禁じる違法な寄付にあたる可能性が高い

 茂木大臣は18年1月下旬、衆院予算委員会で野党議員の質問を受け、線香や手帖の配布そのものは認めている。やりとりを抜き出すと、

――名前を書いていなければモノを配っても良いと、そういうご理解ですか。

茂木 えー、公選法の規定上はそのようになっていると承知いたしております。

――茂木大臣はお線香とか手帖はご自身の名前が書いていないけれども、政党支部の活動の一環として選挙区内でお配りになられていると。ただし、お金は頂いていないということで宜しいでしょうか。

茂木 えー、それで結構です。

ポイントは“氏名の類推”

 確かに、公選法199条の3には、“氏名を表示し又はこれらの者の氏名が類推されるような方法で寄附をしてはならない”と記載されている。茂木大臣が錦の御旗としたのは、この“氏名を類推させるかどうか”というポイントだった。もっとも、これは難解な点で、裏返せば、“氏名を類推させない”ことを明示して配らなければならないということでもある。すなわち、“茂木先生とは何の関係もありません”“あくまでも党の支部としての活動です”と言って回る必要があるわけだ。茂木大臣の秘書が、“茂木先生と関係ない”と言いながら線香を配って、類推するなという方がおかしくはないか。

 政治資金問題に明るい神戸学院大の上脇博之教授は、

「199条の3の規定をもって、配布物自体に氏名が記載されていなければ、どのような形でも寄付をしていいのだと解釈するのは誤りです。選挙区内の有権者が、秘書の個人名を知らず、“茂木先生の秘書さんから頂いた”としか認識していないなら、それは茂木氏の氏名が類推されるような方法で寄付を行ったものと評価することができるわけですから」

 事実、かつて本誌が茂木大臣の地元に分け入った際、手帖をもらっている支援者とこんなやり取りがあった。

記者 この辺を担当している秘書さんの名前は?

有権者 名前は……わすれちゃったなあ。

 これは、上脇氏が指摘する“秘書の個人名を知らず〜”をそっくりなぞるものだ。

(2)へつづく

「週刊新潮」2019年11月7日号 掲載