タレントとファンの距離感を保つのは難しい。

2018年12月、NGT48の山口真帆さんがファンの男性2名に自宅で暴行された。追っかけがタレントの自宅までついていくのは、今にはじまったことではない。ただ、AKB48グループが"タレントとファンの距離の近さ"で成功を収めた2000年代後半ごろから、両者の関係性が時にあやういものになっていることは間違いない。

 

■タレントとファンの「特殊な関係」

距離の近さが一概に悪いとは言わない。大衆演劇界では昔から、役者とファンの密接な関係が不可欠だ。アイドル界でも、後藤真希さんがモーニング娘。在籍当時から大勢のファンとプライベートで交流していたのは有名な話だ。

 

しかし、それは長年培われた業界の伝統や並外れた人間力があってようやくなしとげられる“特殊な関係”なのかもしれない……と僕は思いはじめている。

 

■タレントを「恋愛対象」にしてしまう人たち

僕は仕事柄、いろんなタレントのファンに会う。熱心なファンはそのタレントが結婚しようが不倫しようが、極論犯罪に手を染めようが、人生をかけて応援し、見返りは要求しない。精神が安定しているだけでなく、タレントの存在自体をリスペクトしているので、見返りがなくとも自己満足できるのだ。

こういうファンばかりならタレントは幸せなのだが、悲しいかな直接の恋愛対象、性的対象としてしかタレントを見られないファンも多い。今回、山口さんを暴行したファンは、まさにその部類だろう。十代やハタチそこそこの女性が、こういったファンから身を守ることがいかに難しいか、想像に難くない。

■それでも事件は防げない

2014年、AKB48が岩手県内の展示場で握手会をおこなった際、のこぎりを持ち込んだファンにメンバー2人とスタッフ1人が襲われた。16年には、アイドル出身のシンガーソングライター・冨田真由さんがファンにナイフで刺された。

いずれも大々的に報道されたショッキングな事件で、そのたびにAKBグループはじめ芸能関係者も危機管理体制を徹底してきたと思う。

しかしまたも事件は起こってしまった。事務所の不注意、メンバー間の悪意など原因は諸説あるが、いかに予防策を講じたところで不特定多数のファンと触れ合い続ける限り、根本的には防げないだろう。テロと同じで、この手の犯罪は犯人がその気になればたやすく実行できてしまうからだ。

■“距離の近さ”を売りにする覚悟

繰り言のようになってしまうが、ファンとの距離の近さを売りにすることは芸能の正攻法ではない。タレントなんてただでさえ度を過ぎたファンやストーカーを生みやすいのに、あえてそれを煽るようなことをするわけだから、危険が増えるのはわかりきった話だ。

それでもやると言うのなら、事務所が危機管理対策を徹底するのはもちろん、タレント自身も危険やストレスを納得したうえで、ファンへの振る舞い方を身につけなければいけないと思う。デキる人は話し方ひとつにしても絶妙な間合いをキープし、ファンの気持ちを正位置におさめる。果たしてどれだけの人にそれが可能なのかはわからないが……。

ちなみに僕自身のタレント活動は、ファンの方と非常に距離が近い。サインや握手はもちろんDMのやりとりも普通にする。自分の人間力を信じてこの方針を取り続けているが、いつか被害に遭う日が来ないことを祈るばかりだ。