駅や公共施設などで、本来の目的とは異なる理由で多機能トイレの混雑が増えていることから、行政が利用マナーについて呼び掛けています。ただ、「一般トイレを使える健常者は利用を控えて」と言うだけでは、問題は解決しなさそうです。

「障がい者に見えない人」の多機能トイレ利用、誤解も

 バリアフリーの進展とともに、駅や公共施設などで多機能トイレが整備されてきましたが、国や自治体がここ数年、その利用マナーを訴えています。多機能トイレが混雑し、その機能を真に必要とする人が、必要なときに利用できない実態があるというのです。

 2019年11月6日(水)には、国土交通省が「トイレの利用マナー啓発キャンペーン」を行うと発表。11月10日(日)から、駅や空港などで多機能トイレのマナーに関するポスターなどを掲出します。同省の安心生活政策課によると、今回のキャンペーンは2017年の初回から数えて3回目で、多機能トイレを必要としない人に、利用を控えてもらう目的があるといいます。


多機能トイレの例(画像:写真AC)。

 国土交通省のインターネット調査では、多機能トイレで待たされることが「よくある」「たまにある」と答えた人が7割を占め、そうした人から「『障がい者に見えない人』が多機能トイレから出てきた」という声も多く寄せられているそうです。

 しかし、「障がい者に見えない人」が、必ずしも「多機能トイレを必要としない人」とは限りません。多機能トイレはもともと、車いす利用者などを想定した障がい者向けのトイレとして整備されましたが、いまでは乳児からお年寄りまで使用できる多目的シートや、ベビーチェア、おむつ換え台、オストメイト(人工肛門などの保有者)のための汚物流しなど、文字通り様々な機能が備わっています。

 そうしたなか、たとえばオストメイトは外見では健常者と変わらないため、多機能トイレの利用を障がい者から非難されることがあるとの指摘が、内閣府の資料に見られます。また、国土交通省 安心生活政策課によると、介助が必要な人が異性同伴で利用するケースなど、多機能トイレに様々な誤解も生じているそうです。

ハード対策だけじゃ足りない 「心のバリアフリー」必要

 このように、多機能トイレを必要とする人は様々ですが、広いスペースを取るため数も少なく、混雑するのはある意味仕方ないと言えるかもしれません。国土交通省 安心生活政策課は、今回のキャンペーンの主旨を次のように話します。

「目指すところとしては、多機能トイレを必要としない方の利用を控えていただくことですが、そもそも多機能トイレにどのような機能があるのか、知らない方も多いと思います。それを伝え、できるだけ譲り合ってご利用いただく目的があります」(国土交通省 安心生活政策課)

 ポスターでは、多機能トイレの諸機能と使用方法、また「おむつ換えシートがたたまれていないと、車いす使用者が出入りできないことがある」といった困りごとを紹介するとともに、「心のバリアフリー」を訴えています。

 これは、様々な身心の特性を持ち感じ方が異なる人々がいること、それぞれ多機能トイレの利用には時間がかかること、利用したいスペースや設備も異なる点などを理解し、互いを尊重し、理解し合おうということです。


多機能トイレを必要とする人の例(画像:国土交通省)。

 国土交通省 安心生活政策課によると現在、一般トイレにも車いす使用者や子ども連れ、オストメイトに対応する機能を設け、多機能トイレの利用分散を図るための整備も進めているそうです。しかし、それだけでは足りないため、こうしたソフト対策が重要になると話します。

 なお、国土交通省の「トイレの利用マナー啓発キャンペーン」は、2020年「東京オリンピック・パラリンピック」に向けた内閣府の行動計画に基づく取り組みです。内閣府はバリアフリーの街づくりとともに、「心のバリアフリー」の推進を重要課題に位置付けています。